リハラボ

知っておくと役に立つリハビリの知識を紹介

『いつでもできる!食べにくさを感じたらチェックすること』

食べにくさ、飲み込みにくさ等の摂食・嚥下(えんげ)障害とは、加齢や病気に伴って起こる症状です。

食事は毎日のこと。食べにくさは、いつ何時誰にでも起こりうること、なのです。

 

摂食・嚥下障害ってなに?

摂食嚥下とは、食べ物を認識してから、口を通って胃の中へ送り込む、この一連の動作のことです。

このどこかに問題が起き、食べにくさ・飲み込みにくさを感じている状態を、摂食・嚥下障害といいます。

 

摂食・嚥下障害を疑う症状

食べにくさ・飲み込みにくさを感じた場合、以下の項目をチェックしてみましょう。

 

● むせの有無:

頻度やタイミングに注意が必要です。

 

● 咳(食事中や寝るとき):

いつ・どんな咳をしていますか?

 

● 痰の増減:

最近増えましたか?色が変わっていますか?

 

● 口やのどに食べ物が残る:

どこに残っていますか?どこに残っている感じがありますか?

 

● 食前後で声の変化がある:

ガラガラ声になるなど、いつもとちがう声になっていませんか?

 

● 食欲が落ちている:

嚥下障害が原因のこともあります。1週間ほどを通して、食事の量が少なくありませんか?

 

● 食べやすいものだけを選んでいる:

無意識に、飲み込みやすいものだけ選んで食べていませんか?

 

● 食事時間が延びすぎている:

口の中にいつまでも食べ物を溜め込んでいたり、なかなか飲み込まないことが増えていませんか?

 

● 食べ方が変わった:

口からこぼれたり、上を向いて食べていたりしませんか?

 

● 食事中・後に疲れている:

食べ物を飲み込むときは自然と息を止め、飲み込む動作を繰り返しています。飲み込みにくさを感じている状態では、飲み込むこと自体で疲れてくることがあります。

 

● 口の中の汚れがひどい:

ひどい歯垢や口臭、食べ物の残りカスなど、嚥下障害が原因のこともあります。

 

● 体重の減りが激しい:

食事がすすまないと低栄養になることがあります。

 

● 発熱が続いている:

嚥下障害が原因の肺炎を起こしていることもあります。

 

これらの症状はセルフチェックのほかに、まわりの人の“気付き”によって見つけることもできます。本人に自覚のない場合でも、周囲の人によって、食事の困りごとが発見され、専門家への相談、早めの対応につなげていくことができます。

 

摂食・嚥下障害によって起こるかもしれないこと

● 誤嚥性肺炎:

誤嚥とは、食べ物が気道(胃につながっている食道とはちがう通り道)に入ってしまうこと。それが原因で肺炎を起こしてしまうことを言います。最近では、有名人の死因のひとつとして、ニュースなどで耳にすることも増えたかもしれません。

 

● 脱水:

進行すると、意識が遠のいたり、体に力が入らなかったり、脈拍が増えたり、血圧が下がったり・・・命に関わる問題です!

 

● 栄養不良:

低栄養のため、他の病気や症状が出てくることがあります。

 

● 体重減少:
1週間で2%以上、1か月で5%以上、3か月で7.5%以上の減少が、極端な体重減少です。

 

摂食・嚥下障害はどうして起こるの?

冒頭にも記したように、いつ誰にでも起こるものです。原因とされているもので、代表的なものを紹介します。

● 加齢

● 脳卒中

● パーキンソン病などの神経難病

● 活動性の低下

● 薬の副作用

● 認知症

● 心理的要因によるもの(うつ病や拒食症など)

 

摂食・嚥下障害の対応

すぐできる対応として、

① 飲み込みに意識を集中する

(テレビを見ながら、新聞を読みながら、等の“ながら”食事をやめる)

 

② やや顎を引き気味に飲み込んでみる

(案外、顎が上がり気味の姿勢で食事をしていることが多い)

 

③ 水分にはとろみをつけてみる

(最近ではとろみ剤も、近隣のスーパーやドラッグストアで容易に購入できる)

 

④ 食事の形に気配りしてみる

(やわらかさ・形状・なめらかさなど。パサパサしたものやくっつくものなどは避けることも考える)

 

④ リクライニングできるような背もたれにもたれて食べてみる

(頭まで支えてくれるようなものが、リラックスできて良い)

 

等、様々なものがあります。自分に合う方法なのかどうかの判断、他の対応等は、専門機関への相談によって指導してもらうこともできます。

 

まとめ

食べにくさ・飲み込みにくさを感じたとき、セルフチェックや観察をしてみましょう。

摂食・嚥下障害の可能性があっても、すぐできる対応で解決できることもあります。また、身近な医療・福祉スタッフに相談してみるのもよいでしょう。

誰にも起こり得る食べにくさ・飲み込みにくさですが、症状や対応、相談相手を知っていることが大きな支えになります。食事が、いつまでもおいしい・楽しいものとして有るように、知っておきましょう。

 

【参考文献】

高齢者の摂食嚥下サポート 若林秀隆著 2017 新興医学出版社

これって大丈夫?膝の内側の痛みの種類と対処法

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はじめに

変形性膝関節症や靭帯損傷など膝の痛みを伴う原因は様々です。

運動中に明らかな原因があって膝が痛くなり始める方もおられれば、年齢を重ねるとともに特にきっかけなく膝の痛みを覚えて不安になる方もおられるかと思います。

そこで、今回は膝の痛みの中でも多い内側の痛みを伴う場合の原因や対処法についてご紹介いたします。

 

膝関節とは?

まずは、正常な膝関節を構成する組織について説明します。

 

■骨

膝関節は、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)と膝蓋骨(お皿の骨)から成ります。

大腿骨と脛骨で形成される関節を『大腿脛骨関節』と言い、大腿骨の下端内外側にある大きく隆起した部分が脛骨の上を滑りながら蝶番のように動くことで膝の屈伸となります。

また、膝の屈伸に伴い大腿骨の前側で膝蓋骨が上下に滑るように動いており、ここで形成される関節を『大腿膝蓋関節』と言います。

脛骨の外側には腓骨という細い棒状の骨が脛骨と平行に並んでいますが、一般に言われる膝関節には関与していません。

 

■靭帯

靭帯とは骨と骨をつなぐ筋肉よりも硬く伸張性のない組織で、関節が脱臼しないように関節を保護しています。

膝関節には4つの大きな靭帯があり、大腿脛骨関節の内側にある「内側側副靭帯」、外側にある「外側側副靭帯」、大腿脛骨関節の中に「前十字靭帯」と「後十字靭帯」があります。

 

■半月板

大腿脛骨関節の間には「半月板」という水分を多く含む組織があります。

膝関節は体重を支え、走ったり跳んだりする度に関節にかかる大きな衝撃を吸収しています。

そこで、関節の間にある「半月板」がクッションの役割をして衝撃吸収を助けることで関節を守っています。

大腿脛骨関節の形状に沿って、内側には「内側半月板」、外側には「外側半月板」があります。

 

膝の内側の痛みの原因

それでは、膝関節の内側の痛みの原因について代表的なものをご紹介します。

 

■変形性膝関節症

膝関節の軟骨がすり減ったり、大腿骨や脛骨自体の形状が変形することを「変形性膝関節症」と言います。

変形性膝関節症になる原因の一つは、加齢に伴う股関節や膝関節周囲の筋力低下です。

筋力が不足している状態で歩行を続けると股関節や膝関節がまっすぐに支えられなくなり、O脚になってしまいます。O脚になると膝関節の中でも内側ばかりに圧が強くかかってしまい、内側の軟骨ばかりすり減ってしまいます。

そのようなアンバランスな荷重を続けた結果、膝の内側に痛みがでてくる方が多くおられます。

歩行時痛はもちろん、朝起きたての痛みや歩き始めの痛み、夜寝ているときの夜間時痛なども変形性関節症の特徴です。

 

■内側半月板損傷

膝関節は大腿骨と脛骨が蝶番のように動き、屈伸運動をするようになっています。

ですから膝関節は捻られる動きに弱く、体重がかかった状態で捻るような動きをすると大腿骨と脛骨の間にありクッションの役割をしている半月板をすりつぶすような動きになってしまいます。

運動中に膝を捻挫して半月板を傷めてしまうこともありますが、筋力の弱い女性特有の動作で膝が内側に入るような動きを繰り返してしまうと内側半月板を徐々に傷めてしまうこともあります。

荷重痛や膝の屈伸時にある角度で急に膝が動かなくなってしまうロッキング現象などが特徴です。

 

■内側側副靭帯損傷

膝関節の捻挫で傷めたり、歩いたり走ったりしている中で徐々に傷めることが多い靭帯です。

歩行やジャンプの着地などで膝が内側に入ってしまい、膝の内側が引きのばされるような状態になった際に大腿骨と脛骨の内側を繋いでいる内側側副靭帯が引き伸ばされて損傷したり、断裂したりしてしまいます。

断裂の程度が強いと、膝が内側に入ったときにガクンと抜けるような感覚があるのも特徴です。

 

■鵞足炎

脛骨の内側、内側側副靭帯が付着している部位に近いところに「鵞足」と呼ばれる部位があります。

鵞足は、縫工筋、薄筋、半腱様筋という3つの筋肉が集まって付着している部分です。

鵞足炎はランニングなどの運動を行う方に多いケガで、練習のやりすぎで筋肉を使いすぎているとき、下半身の十分な柔軟性がないまま運動を行っているときに上記の3つの筋肉の伸び縮みがうまくいかず付着部に負担がかかって起こります。

また、ジャンプの着地で膝の内側が引きのばされるようになったときに内側側副靭帯とともに損傷することもあります。

 

■膝蓋骨周囲炎

膝蓋骨(お皿)の周りには膝蓋骨の動きを制動するための靭帯や、クッション材としての脂肪組織があります。

膝が内側に入るなど、膝蓋骨の内側が引き伸ばされたり圧がかかるなどの負荷がかかると膝蓋骨の内側の靭帯や脂肪組織が炎症を起こしてしまいます。

 

膝の内側の痛みに対する対処法

膝の内側に痛みを感じてもすぐ治るかもしれないからと様子をみる方は多いかと思います。

そんなとき、ご自身でうまく痛みに対する対処ができるかどうかで経過が変わってきます。

ここでは、膝の内側に痛みがある場合にご自身でできる対処法や気を付けることをご紹介します。

 

■アイシング、湿布

膝の内側に痛みがあるとき、まずはどの程度の炎症があるのかをご自分で確認してみてください。

炎症の所見としては、痛みのほかに「腫れ」、「熱感」、「発赤」があります。

膝全体、もしくは痛みのある部位に上記のような所見があるときは炎症がある証拠なので、炎症を落ち着かせることで痛みが改善する可能性があります。

氷嚢で患部を冷やしたり、湿布を貼るなどの処置を行ってみてください。

 

■膝を捻らないように気を付ける

膝関節は蝶番のような動きをする関節ですので、捻りの動きが苦手です。

内側側副靭帯、内側半月板をはじめ膝関節が捻られることで損傷する組織が多々あります。

具体的に捻る動作とは、足を地面につけたまま振り返ったり向きを変える動作をしていないか、階段を昇るときにつま先の向きに対して膝が内側に入るような踏み込みをしていないかといったことなどです。

気が付かないうちに膝を捻っていることはたくさんありますので、膝の痛みがあるときは特に気を付けるようにしましょう。

 

■痛みのある動作を避ける

痛みを感じてからしばらくすると、だんだんどのような動きをすると痛いのかということが分かってくるかと思います。

体重をかけた時、捻った時、しゃがんだとき、伸ばしたときなどです。

痛みのある動作は痛めた組織に負荷をかけている証拠ですので、なるべく行わないようにして経過をみてみましょう。

 

おわりに

今回は膝の内側の痛みについて考えられる原因と対処法をご説明しました。

一時的になにかしらの負荷がかかって出現した痛みであれば、今回ご紹介したような対応で落ち着いてくるかと思いますが、不可逆的または強い組織の損傷がある場合にはご自身の対処では間に合わない場合もあります。

強い炎症所見が数日以上続く場合や、ここでご紹介した対処法を行ってみても改善しない痛みがある場合には整形外科を受診し、適切な診断や処置を行ってもらうようにしてください。

『女性必見!簡単「腕立て伏せ」で二の腕を引き締める方法』

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はじめに

多くの女性はすっきりと引き締まった健康的な二の腕に憧れるのではないでしょうか。

「二の腕を引き締める」ためのエクササイズと言えば「腕立て伏せ」が有名ですが、運動習慣のない女性にとっていきなり腕立て伏せを始めるのはかなり負荷が強く、腕立て伏せが1回もできないという女性はたくさんいます。

そこで今回は、筋力の弱い女性でも始めやすい様々なバリエーションの腕立て伏せを含め、腕立て伏せの正しいやり方をご紹介していきます。

 

二の腕に関与する筋肉とは?

二の腕を構成する筋肉は大きく分けて2つ

「二の腕」というのは、世間一般に使用されている言葉ですが、専門用語では「上腕」と言い、肩から肘までの部分を指します。

「上腕」には、主に肘を曲げる筋肉である「上腕二頭筋」と伸ばす筋肉である「上腕三頭筋」が付いています。

「上腕二頭筋」は上腕の前面についており、力こぶを作ったときにもっこりと隆起する筋肉のことです。

「上腕三頭筋」は上腕の後面についており、女性が手を振った時に「振袖」と言って嫌われる脂肪の深部にあります。

この「上腕三頭筋」がしっかりと鍛えられていれば、「振袖」という名の脂肪も付きにくく、引き締まった健康的な二の腕が手に入るのです。

 

女性は上半身の筋肉がつきにくい!

一般的にあまり知られていないことですが、女性は男性に比べて上半身の筋肉がつきにくいとされています。

それは男女のホルモンが関与しており、筋肉を発達させるための男性ホルモンを受け取るたんぱく質の量が男性の上半身に多いからなのです。

一方の女性はというと乳房を中心に脂肪を蓄え、丸みをおびた女性らしい身体になるように作られているのです。

ですから、下半身に比べて上半身の方が男女の筋力差が大きく、女性は男性以上に積極的に上半身のトレーニングをしなければ上半身の筋肉が発達しにくいのです。

 

使われにくい「上腕三頭筋」

二の腕に関与する筋肉として「上腕二頭筋」と「上腕三頭筋」をご紹介しましたが、同じように二の腕の前と後ろについている筋肉でも、使われる頻度が圧倒的に違います。

「上腕二頭筋」は肘を曲げるときに力を発揮しますので、物を持ち上げたり、自分のほうに引き付けたり、腕や手に荷物をかけているときなど使われる機会は数知れません。

一方「上腕三頭筋」は肘を伸ばすときに力を発揮するので、物を押したり、倒れないように身体を支えたり…となかなかそのシチュエーションを思い出すのも一苦労なのです。

ですから、筋肉の上の脂肪である「振袖」が上腕二頭筋の側についている方はあまりおられないと思いますが、上腕三頭筋の側には油断するとすぐに立派な「振袖」ができあがってしまうのです。

 

女性にも優しい腕立て伏せのやり方

それでは、二の腕を引き締めるために有効な腕立て伏せの正しいやり方を説明していきます。

 

基本的な腕立て伏せのやり方

まずは、基本的な腕立て伏せの方法をご説明します。

1. 肩のラインの真下で、肩幅よりも拳二つ分ほど広げた幅で両手を床につきます。

2. 足は腰幅とし、つま先だけが床につくような形で膝を伸ばして足をつきます。

3. 腰が反ったり曲がったりせず、横から見たシルエットが肩から足先までが一直線になるようにします。

4. 3までのポジションがとれたら、ゆっくりと肘を曲げ、身体を下ろしていきます。

5. 身体が床につく手前まできたら、ゆっくりと肘を伸ばし、身体を上げて元のポジションに戻ります。

 


腕立て伏せのやりかた workout exercises at home to lose weight

 

腕立て伏せができないときはここから!

上で説明した基本的な腕立て伏せをやろうとしても、筋力が足らずきれいなフォームでできなかったり、身体を下したところから上がれなかったりすることがあると思います。

そんなときは、次の順番に試していき、自分にちょうどいいところから始めてください。

日々そのトレーニングを続けていき、次のステップができそうだと感じたらステップアップし、最終的に基本の腕立て伏せができればとても達成感があると思います。

 

1. 斜め腕立て伏せ

床での腕立て伏せがきつい方は、まずキッチンの調理台や安定した机などを使った「斜め腕立て伏せ」から始めるのがおすすめです。

肘を伸ばして台の端に両手をつき、足を後ろに下げて斜めによりかかった状態にします。

あとの要領は基本の腕立て伏せと同じですが、足を大きく下げるほど角度が基本の腕立て伏せに近づくので、負荷は大きくなります。できる角度から始めてみてください。

また、「斜め腕立て伏せ」でも曲げ伸ばしが難しい場合は、肘を伸ばした状態で体重を支える練習をするだけでも筋肉を使うことができるので、あきらめずにそこからチャレンジしてください。


囚人筋トレ式 「プッシュアップ」 STEP 2 斜め腕立て伏せのやり方

 

2. プランク

肘を90°に曲げ、左右の腕が平行になるように肩幅に開き、肘から先を床につけます。
足は腕立て伏せと同じようにつま先だけが床につくようにして後ろに下げます。

肘で床を押すように力を入れ、その状態を10~60秒保持します。

このとき、肘を押す力が入っていないと首がすくんで肩甲骨が背中から浮き出てしまうのでしっかりと押しましょう。

また、このときも肩から足が一直線になるようにします。

このトレーニングは上腕の筋肉も使いますが、主に上腕の筋肉の土台となる肩甲骨を安定させるトレーニングになり、肩こりの改善にも効果的です。


1回でも効果のある正しいプランクのやり方 ワークアウト エクササイズ workout exercises 美コア 山口絵里加

 

 

3. 膝立て腕立て伏せ

ここまできたら、腕立て伏せまであと一歩です。

基本の腕立て伏せはつま先だけ床につきますが、膝でつくようにし、膝から下が床につかないように90°くらいに曲げて浮かしておきます。

あとの動きは腕立て伏せと同じですが、肩から足先でなく、肩から膝が一直線になるようにします。

 


ダイエット女子の腕立て初心者編~10回を目指す~

 

腕立て伏せを行う際の注意点

腕立て伏せを行うにあたって押さえていただきたい注意点をお伝えします。

 

1. 正しいフォームで行う

目的とする筋肉をつけ、引き締まった二の腕を手に入れるためには正しいフォームの腕立て伏せもしくはご紹介した前段階のトレーニングを行うことが重要です。

例えば、肘の屈伸を行っているようでそれと同時に脇が開き、首をすくめるような動作が大きく入ってしまうと二の腕の筋肉よりも僧帽筋という肩こりの原因にもなる首から肩にかけての筋肉などをメインで使ってしまうことになります。

腕立て伏せを行う際には、あまり脇が開かないように注意し、肘を曲げるとともに肩甲骨を内側に寄せ、肘を伸ばすとともに肩甲骨を外側に押し出すような動きを意識しましょう。

また、肩から足先までが一直線というフォームが保持できず、腰が反ったり曲がったりしてしまうと二の腕の筋肉を使わないだけでなく、腰を痛めてしまう恐れがありますので、注意しましょう。

正しいフォームを維持できないときには、前でご紹介した前段階のトレーニングに戻り、しっかりとできるようになってから次のステップに進んでみてください。

 

2. 1セット10~20回を目安にする

腕立て伏せを行うにあたり、1日何回やるのがよいのかということについてですが、目標は1セット10~20回として1日2~3セットかと思います。

ぎりぎり1回行うのがやっとのトレーニングではなかなか効果がみられないので、例えば腕立て伏せはできるけど3回しかできないというときは、斜め腕立て伏せや膝立て腕立て伏せに変えて10~20回続けてできるほうが効果的です。

それでも、難しい方はそれぞれの開始肢位を10~60秒維持する練習から始めて、それに肘の屈伸の練習を1回から加えていくとよいかもしれません。

 

3. 毎日でなくても続けることが大事

トレーニングは毎日やろうと思って始めても3日坊主になってしまったり、1日できなかった日があるともうやめたと諦めてしまう方も多いのではないでしょうか。

しかし、実際本格的な筋トレはいじめた筋肉を修復させるのに数日かかるという点から、筋トレは2~3日に1回行うのがよいとされています。

慣れてくると腕立て伏せ自体は毎日行っても問題ありませんが、無理に毎日やろうと意気込んで続かなくなってしまうよりは、2~3日に1回でよいと少し余裕を持たせ、その上で長く続けることがとても大事です。

 

まとめ

今回は、引き締まった二の腕になるための腕立て伏せについて正しいやり方や注意点、またトレーニングに慣れていない女性でも始めやすい方法についてご紹介しました。

腕立て伏せは自宅でいつでもどこでもできるトレーニングですが、女性にとっては負荷の厳しいトレーニングであり、慣れるまではフォームも不安になるかもしれません。

そんなときは是非一度、トレーニング指導のできる方にみてもらい、自信を持ってトレーニングできるようにしましょう。

短期間ですぐに効果は見られないかもしれませんが、行った努力は決して嘘をつきません!

負荷設定の仕方

はじめに

最近カラダ作りの為に筋トレを始めた、またははじめようと思っている方は多いと思います。

そんななかで迷うのが特にウェイトトレーニングの負荷設定ではないでしょうか。

ジムなどに行ける人はインストラクターに聞いたりすることもあるかと思いますが自宅でトレーニングする人によっては自分で考えて負荷を決める必要がありますよね。

今回はそんな筋力トレーニングの負荷設定について詳しくわかりやすく解説していきます。

 

負荷設定の重要性

筋力トレーニングにおいて『最適な負荷量を決める』ということは非常に重要でこれができていないと毎日のように取り組んでいても思うような効果は得られません。

まずはなぜ負荷設定が重要なのかを解説していきます。

 

トレーニング効果アップの為

負荷設定にこだわる最も大きな理由は『トレーニング効果がアップする』からです。

筋肉はトレーニングを経て傷つき、回復過程でさらに強くなるという『超回復』と言われる仕組みで成長していきます。

その為、まずは『筋繊維を傷つける』という過程が必要になってくるのです。トレーニングの原則には過負荷の原則というものがあります。

それは『普段より少し辛い負荷』をかけることで筋力がつくという法則です。

筋肥大(太くする)ことを目標にするのであれば低すぎる負荷で行っても理論上効果は生まれません。しっかりと筋肉を追い込める負荷に設定しましょう。

 

トレーニングの停滞予防

「一度負荷を決めてしまえばそれでよいのか?」

答えはNoです。

これは筋力トレーニングの原則の1つ、漸進性の原則というものに当てはまります。

漸進性の原則とは簡単に言うと「負荷を徐々に上げましょう」ということです。筋肉は負荷に応じて適応してくるため、一定の重さに到達するとそれ以上の筋肥大を狙うためには負荷を上げていく必要があります。

また可逆性の原則というものもあり、トレーニングを一旦行わなくなってしまうと毎日の活動量に応じて元の状態に戻っていく性質があります。

これらの性質から負荷設定はさらなる筋力アップを狙うためにはこまめに負荷の設定を行っていく必要があるんですね。

 

パフォーマンスアップ

ひとえに『負荷』というのは重りの重さだけを指しません。トレーニングの頻度、回数を増減することやさらに難易度の上がった動きに挑戦することも『負荷』という言葉の意味に含まれます。特にパフォーマンスアップを狙うのであれば同じような目的の運動でもより実践に近いような難しい動きにも挑戦していきましょう。

 

怪我の予防

『負荷設定』と聞くとどうしても負荷を上げる方のイメージがありますが、負荷が高すぎる場合もあります。

負荷が高すぎると思わぬ怪我や痛みなどにつながる可能性があります。

マシンなど運動の方向が決まっているようなトレーニングでは可能性は低くなりますが、ダンベル・バーベル等を使ったフリーウェイトトレーニングではダンベルを落とすなど危険があります。

またマシンなどでも重すぎる負荷を無理やりすると、目的としている筋肉が過剰に働き代表的な部分でいえば腰痛や首痛などの原因になります。

フォームなどを修正してもこれらの部分に痛みが出る等問題があれば負荷が重すぎる可能性があります。

 

負荷の設定方法

それでは実際に負荷設定をすすめていく際にはどのようなポイントに注意して設定していったらいいのかについて解説していきます。

今回はダンベルを使ったトレーニングなど重りを上げたり押したりするいわゆるレジスタンストレーニングと言われるものの基礎的な負荷設定についてご説明していきます。

中級者~上級者になってくると様々な理論から負荷の設定の考え方が異なる場合もあります。

ただ少なくともこれからトレーニングを始める、あるいは始めたばかりの初心者の方であれば下記の方法を理解しておけば十分かと思います。

 

まずはフォームの確認!

正しい負荷を選ぶ前提条件、それは正しい方法で実施できていることです。

怪我の予防の項目で説明した腰痛や首痛は正しいフォームでできていない場合でも発生します。本当はフォームが原因で出ている痛みにも関わらず負荷をいたずらに下げてしまうと非常にもったいないですよね。

筋トレの注意点や正しい動きについては、トレーニング別に細かくされたものが世の中にたくさんあります。そのような情報を参考にしながら、特に初めてのトレーニングの場合は極端に軽い負荷から始めてまずはフォームを正しくできるように意識しましょう。

 

回数、重さの目安

・理想の重さ、回数とは?

一般的な筋肥大(筋肉を大きくする)の為の負荷については諸説ありますが最大筋力の70~80%程度の負荷で2~3セットトレーニングを行うことができれば効果的であるといわれています。

通常トレーニングの際に人間はすべての筋力を発揮することはありません。そのため全体的に筋肉をまんべんなく使いトレーニングを行うためには複数セットを行う必要があるんですね。

皆さんもしんどい運動をした後、休憩をはさむとまた同じ運動ができるようになった。

という経験があるかと思います。これは人間が1回の運動ですべての筋力を使わないからこそできる芸当なんです。休憩時間は1分~2分程度にしてあまり長くなりすぎないように注意しましょう。

・具体的な負荷設定の方法

ここまで、基準とされている負荷や回数について触れてきました。しかし『最大筋力の70%~80%』と言われてもいまいちピンと来ないと思います。そこで筋トレでは回数と疲労度の関係で適切な負荷をはかる指標があります。

簡単にその方法をまとめると、『8~12回程度の回数で限界が来る重さ』と考えてください。

8~12回の運動→インターバル(1~3分)→8~12回の運動→インターバル→8~12回までの運動→もう限界

というサイクルで行えれば初心者の方の負荷設定としては理想的と言えます。

 

難しければ低負荷でもOK

とはいえ初めからぴったりとこの回数に当てはまるようにはなりません。

「このぐらいかな?」と思った負荷でも20回ぐらいできてしまったり、逆に言えば2セット目や3セット目に重すぎてまったく運動ができなくなったりなどの問題も出てくるでしょう。

しかし、低負荷であろうが限界まで運動することでがあるといわれています。

低負荷高頻度の運動になってしまっても限界まで運動をして次回から重量を少し上げてみるようにしましょう。

また高負荷すぎる場合も2セット目、3セット目と負荷を落として実施して、限界まで行うことで効果があります。(実際そういった負荷設定の理論もあります。)重要なのは「限界まで行うこと」というのを意識して初心者のうちは行っていきましょう。

この作業を繰り返していけばおのずと理想の負荷が分かりますし、負荷設定の更新も細かい頻度で行うことができます。

まずは『始める』『継続する』ということが重要です!

 

動きで負荷を変える

前述にもありましたが運動負荷を調節する為には何も重さを変えるだけではありません。(重さは数値的な指標なので一番わかりやすいですが・・・)

代表的なところでいうと『運動のスピード』です。

例えば腕立て伏せを例にすると、普通のスピードで腕立てをするのと肘を曲げて降ろしていく際にゆっくりとおろすことを意識したものとでは明らかに負担が変わります。(試してみてください)

少し難しい表現ですがこの時の筋肉の状態は遠心性収縮という状態になっています。この遠心性収縮、腕立て伏せでいえば重力に負けないように運動を行っている状態は筋肉への負荷が高い状態です。

筋力トレーニングではこのように戻す時にゆっくりとする。というのが重要です。いつまでたっても負荷設定がしっくりこない場合は自分なりに運動のペースも統一して行えば負荷設定も行いやすくなっていきますよ。

 

さいごに

いかがだったでしょうか。筋力トレーニングで最も重要で難しいことは『継続する』ことだと思います。

苦しいトレーニングを経るからこそ、トレーニングは効果的に行いたいですよね。

負荷設定はその効率の部分を占める最も重要な要素です。せっかくの努力を無駄にしないように負荷設定にはしっかりとこだわってトレーニングを行っていきましょうね!

肩関節脱臼のリハビリテーション

はじめに

肩関節脱臼は、整形を担当しているセラピストであれば、しばしば経験する事があると思います。

再発率も高く、リハビリを進めていく上で、指導やケアは重要で難しい部分が多いかと思います。

今回は、肩関節脱臼の基礎と基本的なリハビリテーションについてお話していきたいと思います。

  

概要

肩関節は、人体の関節の中で、最も関節可動域が広く、その構造上不安定にあります。

そのため、靱帯や筋肉などによって補強されています。

 

肩関節脱臼とは

肩関節は、上腕骨頭が肩甲骨にある関節窩の上に乗っているような構造をしています。

脱臼は、関節窩の上から上腕骨頭が外れてしまった事を指します。

また、脱臼には亜脱臼と脱臼があり関節面の一部に接触がある場合を亜脱臼。

完全に接触がないものを脱臼としています。

 

受傷機転と症状

主な受傷機転は、ラグビーやアメリカンフットボール、柔道やハンドボールなどのコンタクトスポーツやスキーやスノボーなどの転倒で多く発生します。

また、肩を挙上した状態で、後方に力が加わったときや、後ろから手を引っ張られたり、後方に手をついて転倒した場合にも脱臼する可能性があります。

症状としては、疼痛・腫脹、肩関節の挙上困難や変形があります。

合併症として、血行障害や神経麻痺(腕や指のしびれ)がみられることもあります。

 

診断

・視診:肩関節の丸みが消失して扁平化し、肩峰の突出が目立つ。

・触診:脱臼した骨頭を肩関節前下方に触れる事ができる。

・X線画像:X線画像にて確定診断を行います。AP画像よりも、Scapula Y viewの方が望ましいです。多くの場合、上腕骨頭後外側の骨軟骨欠損を伴います。

 

肩関節脱臼の型と重症度・予後

外傷性肩関節脱臼は、前方脱臼と後方脱臼に大きく分けられ、前方脱臼が90%を占めます。

また、10-20歳代の初回肩関節脱臼の50%以上が再脱臼を生じて、反復性脱臼へと移行します。

脱臼を放置すると、骨損傷・軟部組織損傷の拡大、神経麻痺などを起こす可能性があります。

また、経過するほど徒手整復が難しくなるため、早期に脱臼を整復する必要があります。

●重症度

・Ⅰ型(捻挫):肩関節の部分的な痛みだけで、烏口鎖骨靱帯・三角筋、僧帽筋は正常で、X線では異常ありません。

 

・Ⅱ型(亜脱臼):肩鎖靱帯が断裂し、烏口鎖骨靱帯は部分的に痛んでいますが、三角筋、僧帽筋は正常です。X線では、関節の裂間が拡大し鎖骨の端がやや上にずれています。

 

・Ⅲ型(脱臼):肩鎖靱帯・烏口鎖骨靱帯共に断裂しており、三角筋・僧帽筋は鎖骨の端から外れていることが多いです。X線では、鎖骨が完全に上にずれています。

 

・Ⅳ型(後方脱臼):肩鎖靱帯・烏口鎖骨靱帯共に断裂しており、三角筋・僧帽筋は鎖骨の端から外れています。鎖骨の端が後方へずれている脱臼です。

 

・Ⅴ型(高度脱臼):肩鎖靱帯・烏口靱帯共に断裂しており、三角筋・僧帽筋は鎖骨の外側1/3より完全に外れています。

 

治療

治療方法は、保存療法と手術療法があります。

脱臼の型や重症度、血行障害や神経症状などによって保存か手術かに分かれます。

 

Ⅰ型は、三角巾で手を吊り、始めの2-3日は患部を冷やし、その後は患部を暖め運動練習を行っていきます。

 

Ⅱ型は三角巾やテーピングなどで、2-3週間の固定を行います。

 

Ⅲ型では、中高齢者はⅠ型Ⅱ型同様保存療法が多く、若者やスポーツ、仕事で肩をよく使う人は、手術療法が多いです。

 

Ⅳ型・Ⅴ型は手術による整復を行います。

 

リハビリテーション

保存療法・手術療法共にリハビリの介入は行います。

 

保存療法

初回脱臼の場合は保存療法が選択される場合が多いです。

必ず、装具などを使用し、固定を行います。

固定期間は3週間程度行っている場合が多いですが、1週間以下と3週間以上では再脱臼率に差はありません。

そのため、主治医の指示に従いましょう。

また、内旋固定よりも外旋固定の方が再脱臼率を軽減させるために有効です。

受傷後からのリハビリテーションの流れとしては以下にまとめます。

 

・受傷-3週目

リハビリの目的としては炎症・疼痛コントロールにあります。

積極的にアイシングを実施していきましょう。

訓練内容としては、肩関節の直接的な運動は困難であるため、肩甲骨や肘関節といった肩関節周囲のストレッチ等実施し、拘縮予防に努めます。

 

・4-6週目

リハビリの目的としては、肩関節の可動域拡大と疼痛・炎症コントロールにあります。

この時期から肩関節の自動介助運動を行っていきます。

そのため、炎症や疼痛増悪を引き起こす可能性があるため、訓練後はアイシングを実施するなどして、ケアを十分に行っていきましょう。

訓練内容としては、肩関節の自動運動や肩関節周囲のストレッチや可動域訓練などを行い拘縮予防と可動域拡大を行います。

 

・7-8週目

リハビリの目的としては、肩関節の可動域拡大と筋力強化にあります。

この時期から肩関節運動に関わる筋肉のトレーニングを行っていきます。

また、自動運動での肩関節運動を行い、積極的に可動域拡大を図っていきます。

訓練内容としては、肩関節・肩甲骨の可動域訓練、等尺性での肩関節周囲筋の筋力増強訓練を行います。

 

・9-12週目

リハビリの目的としては、肩関節周りの筋力強化と可動域拡大にあります。

この時期から、回旋筋の積極的な筋力強化を実施していきます。

訓練内容としては、回旋筋腱板レジスタンスエクササイズ、肩甲骨のスタビリティエクササイズ、重錘を使用し、重力下での筋力強化を行います。

 

・12-17週目

リハビリの目的としては、全身の筋力強化とスポーツ復帰に向けての指導です。

この時期では、スポーツ・仕事などの特性にあった訓練を行っていきます。

 

・17週目以降

リハビリの目的としては、スポーツ復帰やオーバーヘッドスポーツへの復帰など最終的なゴール期間にあります。

 

手術療法

手術療法では、手術後次の日から介入を行います。

保存とは異なり、固定期間はありますがわずかながら自動運動が開始できます。

固定期間に関しては、保存療法と同様です。

手術療法時のリハビリテーションの流れとしては以下にまとめます。

 

・術後-3週目

リハビリの目的としては、炎症・疼痛コントロールと拘縮予防にあります。

術後終日で、下垂位での外旋20°までの運動が許可されるため、疼痛に留意しつつ行っていきます。

リハビリの内容としては、アイシング・他動、自動運動での可動域訓練・等尺性収縮での三角筋・回旋腱板筋の筋力増強訓練を行います。

訓練後は、炎症や疼痛増悪の可能性があるため、積極的にアイシングを行いましょう。

 

・4-6週目

リハビリの目的としては、可動域拡大と筋力強化にあります。

この時期から固定期間が終わり、装具を外してリハビリを行っていきます。

筋の硬結やそれに伴う拘縮が出現してくるため、積極的に可動域訓練やストレッチを実施していきます。

内容としては、自動運動での可動域訓練・回旋筋腱板の筋力増強訓練が主です。

 

・7-8週目

リハビリの目的としては、可動域拡大とADL指導にあります。

この時期から、下垂位外旋45°までの運動や90°以上の挙上が許可される場合が多く、積極的な可動域訓練を行っていきます。

また、ADLでは、外旋が強制されないよう指導を行う必要があります。

 

・9-12週目

リハビリの目的としては、積極的な筋力強化にあります。

この時期より、重錘を使用しての筋力強化を行っていきます。

訓練内容としては、最終可動域でのストレッチや回旋筋腱板レジスタンスエクササイズ、積極的な肩甲骨のスタビリティエクササイズを行います。

 

・12-25週目

リハビリの目的としては、スポーツ復帰に向けての指導にあります。

この時期より、非コンタクト系のスポーツの許可される事が多く、全身的な持久力訓練等を行っていきます。

 

・25週目以降

この時期では、スポーツ復帰に向け、そのスポーツの特性にあったトレーニングを行っていきます。

 

・10-12ヶ月

オーバーヘッドスポーツでは、基本的に10-12ヶ月を目標にスポーツ復帰を行っていきます。

 

手術療法では、重症度が高い場合が多く、その分リハビリ期間やスポーツ復帰までの期間が長く掛かります。

 

最後に

若い方ですと再脱臼率が高く、スポーツ選手である場合、選手生命の危機にもなります。

指導は難しいですが、少しでも支援できるよう、日々の勉学に励んでいきましょう。

 

・参考文献

 分担 解剖学

 日本骨折治癒学会

 ビジュアル実践リハ 整形外科リハビリテーション

 リハビリテーションビジュアルブック

肩腱板損傷

肩腱板損傷は肩の疾患でよくみられる疾患の1つです。

スポーツをしている若年者だけでなく、運動していない高齢者など幅広い年代でみられます。

肩に力が入らない」「腕が挙がらない」「動かすと痛い」という症状がある人は腱板損傷を疑った方がいいかもしれません。

今回は肩腱板損傷について解説していきます。

 

腱板とは

そもそも腱板とは何でしょうか?

腱板とは肩甲骨と上腕骨という腕の骨をつなげている筋肉です。

上腕骨は球状(上腕骨頭)、肩甲骨はお皿のような形(関節窩)になっています。

腱板は上腕骨頭を丸く包むように付着し、それぞれが共同して働き、この2つの骨を引き寄せ肩甲骨に安定させる機能があります。

この腱板は棘上筋棘下筋小円筋肩甲下筋と呼ばれる4つの筋肉で構成されています。

みなさんがよく「インナーマッスル」と言っている筋肉もこの腱板になります。

また肩甲下筋と棘上筋の間は烏口突起と呼ばれる骨の突起があり、この突起にさえぎられるように腱板がない部分があります。

この部分を腱板疎部といいます。

つまり腱板損傷とは、肩関節を安定させる腱板が損傷し、関節が不安定になったり、インナーマッスルとアウターマッスルのバランスが崩れた結果、痛みや筋力低下などの症状を呈している状態のことを言います。

 

腱板損傷の特徴

腱板損傷は肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋の腱板付着部での損傷と腱板疎部での損傷を含む疾患になります。
腱板損傷は不全断裂完全断裂に分類されます。

 

不全断裂は完全に断裂せずに腱の表層や関節面側の部分だけで断裂している状態です。

不全断裂の中では圧倒的に表層での断裂が多くなっています。

 

完全断裂はその断裂範囲で小範囲(1cm未満)、中等度(3cm未満)、広範囲断裂(5cm以上)に分類されています。

広範囲断裂は棘上筋を含む2つの腱の断裂のことを指し、修復にも難渋することがあります。

また自然経過として、断裂した腱板は自然治癒しないとされています。

むしろ自然経過で断裂部分が拡大する傾向があります。

ただ、腱板が断裂したからといって症状がでるかというとそういうわけではなく、無症候性の腱板損傷が存在することが分かってきています。

 

腱板損傷の発生要因は外傷によるものが大半を占めますが、加齢による変性やオーバーユースなどでも発症し、中年以降ではごくわずかな外力や外傷の既往がなくても発生することがあります。

 

非外傷性の原因は、加齢による腱板の退行変性に伴う脆弱化が原因とされています。

 

40~50歳になると棘上筋腱への血流が減少し特に棘上筋腱が骨頭に付着する部分は、骨や靭帯との間で摩擦が生じやすく、損傷しやすい部分と言われています。

そのため、棘上筋は他の3腱より圧倒的に損傷を生じやすいと言われています。

その逆に棘下筋や肩甲下筋は単独で断裂することは少なく、広範囲断裂の際に損傷します。

腱板疎部の損傷はオーバーヘッドアクション、つまり手を頭より高く上げた位置での動作を繰り返し行うことによるオーバーユースが原因です。

頭より高い位置で繰り返し回旋運動を行うことにより、腱板疎部に炎症が起こります。

症状が進むにつれ、二次的にゆるんでしまうため肩の不安定性を招くおそれがあります。

 

腱板断裂の症状

腱板断裂の症状は、

運動時や夜間に痛みがでる

自力で腕を持ち上げられない、固まって動かせない

腕に力が入らない

腕を動かすときに引っかかったり痛かったりする

などが挙げられます。

常に痛いわけではないので、五十肩などと思って診察が遅くなってしまう可能性もあります

不全断裂ではこのような症状を呈することは少なく、むしろ2次的に生じた腱板での炎症やや滑液包と呼ばれる腱板の滑りを良くする袋の炎症などによる痛みが主な症状になってきます。

夜間痛があると、夜寝ている時に疼いて寝れない、もしくは痛みが出て目が覚めてしまうなどが起こってきます。

原因は肩関節やその周囲の炎症などによる関節内の内圧の上昇と言われています。動かしたときの痛みは、特に腕を挙げるときや回旋するときに生じます。

また有痛弧(ゆうつうこ)と呼ばれるものがあり、腕を横から挙げていくときの最初と最後は痛みが出ず、中間域で痛みを訴えるのも特徴の1つです。

腕の自力での挙上障害は、患者さんによってその程度は様々であり、広範囲断裂でも著明な可動域制限を呈さないことがあります。

他力での可動域は最初は障害されることは少ないですが、治療をせずにそのまま放置した場合は関節が固まってしまっていることがあります

 

治療

腱板損傷の治療は断裂の大きさや症状によって違いますが、保存療法と手術療法があります。

 

①保存療法

よほどの大断裂でない限り、保存療法が第1選択となってきます。

安静、投薬、リハビリが主な内容になります。

 

●安静

腱板損傷受傷直後は痛み、炎症が強い場合もあります。

不全断裂の場合でも、使いすぎている場合が多いのでまずは使う量を減らしたりして、過度な負担を避けるようにしていく必要があります。

 

●投薬

腱板損傷は夜間痛や運動時痛など、痛みで悩んでいる方も多いです。

痛み止めの薬を上手に使用することによって少しでも痛みをコントロールすることが重要になってきます。

痛みがあまりにも強い場合は、麻酔ヒアルロン酸などの注射を行う場合もあります。

 

●リハビリ

リハビリで行っていくことは肩周囲の筋肉の柔軟性の維持肩周囲筋の筋力トレーニング、可動域制限がある場合の可動域練習、痛みのコントロールをするための姿勢の指導が主になってきます。

肩周りの筋肉は、特に肩甲骨周りの筋肉や首周りの筋肉マッサージやストレッチを行います。

筋力トレーニングは上記に挙げた腱板の4つの筋肉をトレーニングしていきます。ストレッチや筋力トレーニングは専門家に聞いて行うようにしましょう。

夜間痛を少しでも軽減させる方法として、クッションを腕の下に敷いて寝ることをお勧めします。

腕が下に落ち込むような姿勢になると痛みを誘発しやすいです。

外出時などもスリングなどを使用して、腕が体より後ろに行かないようにすると痛みも比較的楽になります。

②手術療法

保存療法で効果が無かったり、断裂が大きい場合は手術療法が行われます。

近年では関節鏡という小型の内視鏡を使用した手術が増えています。

以前のように大きな傷を切らずに、1cm程の小さな傷から関節鏡を入れ、モニターを見ながら断裂している腱板を縫合していきます。

術後はリハビリを行っていきますが、最初の数週間は装具で固定します。

その後、徐々に肩を動かす練習と筋力トレーニングを進めていくことになります。

固定期間やリハビリの進み方は各施設によって異なりますので、受診した医療機関に尋ねることをお勧めします。

 

まとめ

今回は肩腱板損傷について解説していきました。

腱板は、肩関節を安定させる機能を持っていますが、それが破綻した状態が腱板損傷です。

腱板損傷は身近な疾患ですが、無症候で気づかない人もいます。

腱板断裂になってしまっても必ず手術というわけではなく、保存的に治療して症状が軽快していく方もいらっしゃいます。

五十肩などと間違えやすいので、自分で判断せずに整形外科に受診して適切な指示を受けることが大事です。

鎖骨骨折のリハビリテーション

はじめに

鎖骨骨折は、全骨折中の約10-15%を占めるほど、頻度の多い骨折です。

ほとんどの場合、予後は良好で、リハビリも治療に関わってくる骨折です。

今回は、鎖骨骨折の基礎とリハビリテーションについてお話していきます。

 

概要

解剖

鎖骨は胸部の上部、肩の前部にある骨で、緩いS状の長骨です。

内側は、胸骨と胸鎖関節を、外側では肩甲骨と肩鎖関節を形成します。

最も早く骨化し始め、最も遅く骨化が完成(25-30歳)し、内部は海綿質で満たされ骨髄は存在しますが、長骨であるが髄腔は存在しません。

 

○鎖骨に付く筋と付着部

・胸鎖乳突筋:前内側1/3   

・大胸筋:前内側1/3

・鎖骨下筋:下面中央1/3   

・三角筋:前外側1/3

・僧帽筋:後外側1/3

 

鎖骨の役割

・上肢と体幹の連結

鎖骨は肩甲骨と胸骨を介し、上肢を体幹へつなぎ止める働きをしています。

 

・血管と神経の保護

鎖骨後方には、大きな血管や神経が走行しており、それを保護する役割もしています。

 

・肩の動作の支点

鎖骨が胸鎖関節にて肩甲骨の動きの支点となり、肩関節の自由度が増します。

鎖骨は、肩挙上の際、鎖骨では30-40°の挙上と45°程度の回旋が生じます。

 

鎖骨骨折について

鎖骨骨折の原因は、スポーツや交通事故、転倒などによって肩や腕に強い衝撃を受けて折れる場合が多く、骨折の瞬間には、骨が折れる音が聞こえる方もいます。

症状は、骨折部の腫脹や疼痛、熱感の他に、肩挙上の困難や挙上時の疼痛が現われます。

また、ズレが大きい場合は、外観からも分かる場合もあります。

診断方法は主にレントゲン画像の検査によって、行われます。

ズレが小さい場合は、見逃される場合もあるため、上記の症状が持続した場合は、専門の医師に相談する事をオススメします。

治療方法は、主に保存療法と手術療法があり、ほとんどの場合保存療法が適応となります。

しかし、ズレが大きい場合や開放骨折や神経・血管を傷つけている場合は、手術療法が適応となります。

鎖骨骨折の場合、骨の癒合は手術をした場合でも、4-12週間かかります。個人差がありますが、年齢が若い方が治癒は早いです。

 

鎖骨骨折のリハビリテーション

保存療法、手術療法どちらにもリハビリは必要です。

 

保存療法

保存療法の場合、クラビクルバンドを使用し固定します。

理由としては、鎖骨骨折は折れた鎖骨が重なるように転位していきます。

そのため、クラビクルバンドを使用し、転位しないよう固定します。

鎖骨骨折の場合、関節を構成している肩の可動域に大きな影響を及ぼします。

 

また、骨癒合がある程度完了していなければ、1-4週間は肩関節90°以上の挙上が禁止となるので、肩の拘縮予防が主なリハビリ内容となります。

1-4週のリハビリ内容としては、肩関節周囲の筋のストレッチやリラクゼーション、体幹のストレッチが主となります。

また、骨の癒合状態から、鎖骨を他動的に愛護的に動かしていき、鎖骨の可動域拡大を図ります。

 

鎖骨骨折では、訓練だけでなく生活指導も必要です。

まずは、上記でも話した通り、90°以上の挙上が禁止であるため、洗髪や家事等の動作指導が必要です。

また、就寝の際、寝る向きにも注意が必要で、受傷部位を下にして寝る事が無いよう指導が必要です。

 

手術療法

手術療法では、プレートやスクリューを使用し、鎖骨を固定します。

手術療法の利点としては、保存療法よりも転位が少ない事にあります。

しかし、創部感染等のリスクもあるため、注意が必要です。

 

保存療法の場合は、前日より入院し、翌日手術を受けます。

リハビリは、術後翌日からの介入が多いですが、術前からの介入をしばしばあります。

 

・術前

術前のリハビリでは、下肢のストレッチ等を実施し、循環の維持を行ったり、肩周囲のストレッチやリラクゼーションを実施します。

 

・術後-2週

術後では、肩の挙上が90°以上可能となりますが、ほとんどの場合、回旋によるズレや負荷が掛かってしまうため、2週間程度は90°以下での訓練を行う事になります。

この時期では、炎症と疼痛管理に注意が必要です。

内容としては、術創部周囲の皮膚のマッサージや他動的・自動的な肩の可動域訓練、肩関節周囲筋の筋力増強訓練が主です。

術後は疼痛が強いため、肩周囲筋のストレッチやリラクゼーションを図り、拘縮をつくらないようにしましょう。

また、訓練後は、術創部周囲の熱感が増大している場合があるため、アイシング等で、ケアを行っていきましょう。

 

・2-4週

この時期では、肩の挙上制限が解除され、積極的に動かしていく時期にあたります。

疼痛等に留意しつつ、愛護的にまずは他動的に可動域訓練を行っていきましょう。

ある程度、可動域が拡大してきたら、洗髪や結滞動作等を取り入れ、日常生活動作訓練も行っていきましょう。

 

・4週以降

ほとんどの場合、この時期には退院し、自宅で生活している時期になります。スポーツ復帰は医師と相談し、10-12週を目安にしていきましょう。

また、拘縮が残ってしまった場合には、外来にてフォローしていく事になります。

この場合の原因のほとんどは、術後の炎症や疼痛が強く、リハビリの進捗状況が悪かったり、筋の硬結などにより拘縮が強かった事にあります。

特に年齢層が高齢になるほど多く、時間がかかる場合もあるため、自主練や生活指導を交えながら、訓練を行っていきましょう。

 

最後に

鎖骨骨折は頻度も多く、臨床で経験する機会が多い症例です。

予後良好ではありますが、肩の拘縮を伴うケースは多く、長期のリハビリを強いられる方も中には居ます。

肩のみならず、鎖骨へのアプローチも忘れず行っていきましょう。

 

参考文献

分担 解剖学

標準整形外科学

日本骨折治癒学会

腰部脊柱管狭窄症(LCS)の基礎と理学療法

はじめに

腰部脊柱管狭窄症(以下:LCS)は代表的な腰部の疾患であり、今や社会現象となりつつある疾患の一つと言えます。

症状は腰痛から、神経症状まで多岐にわたり理学療法士として出会う機会も多いのではないでしょうか。

今回はそんな腰部脊柱管狭窄症について基本的な事項をおさらいするとともに一般的な理学療法での取組みについてご紹介していきたいと思います。

 

腰部脊柱管狭窄症の基礎知識

概要

脊柱管狭窄症は読んで字のごとく、加齢などの原因で骨や靭帯が変性することにより脊髄の通り道である脊柱管が狭窄されることにより、主に神経症状をきたすものを指します。

好発部位はL4-5、L3-4、L5-S1です。

 

腰部脊柱管狭窄症は一般に50歳ごろより発症し調査では50歳以上の一般住民で12.5%、70歳以上の高齢者においては2人に一人が罹患する可能性のある有名な疾患です。

 

症状

LCSの症状は神経の障害されかたによって馬尾型、神経根型、混合型の3つに分けられます。

脊柱管が狭窄すると硬膜が圧迫され結果脊髄に圧迫をきたします。

馬尾型では下肢、臀部、会陰などに感覚障害を呈し、神経根型では下肢、臀部の疼痛が主な特徴です。

 

以下に特徴的な症状をご紹介していきます。

①間欠性跛行

LCS特有の症状で一定時間連続歩行すると下肢の痛みやしびれなどを感じ歩行することが困難となる症状です。

しばらく休む、体を前屈することで再度歩けるようになりますが。間欠性跛行のような症状は閉塞性動脈硬化症などの循環障害などでも発生するので鑑別が必要です。

循環障害の場合は前屈や座って休憩することで症状が軽快することはなく、またLSCの間欠性跛行の場合、自転車での移動などの場合は症状が出現しないことも特徴です。

 

②感覚障害や疼痛

上記でも説明したように馬尾型では下肢、臀部などの感覚障害、神経根型では疼痛が起こりやすいとされています。

多くの場合は下位腰椎が好発部位であることから大腿、下腿、足部に症状が生じます。

L5神経根では臀部~代替後面、下腿の外側、足背に、S1神経根では臀部~大腿後面、下腿後面、足底に症状が出ます。

足底の感覚障害では「靴下をはいているような感覚」という表現など広範囲に部位を特定しにくい痛みや感覚障害を訴える為、しっかりとした聴取が重要になります。

 

④運動障害

感覚障害と同じように、障害されている神経の支配筋の筋力低下をきたすことがあります。

神経障害が高度の場合に脱力などが起こることも多く、ひどい場合は外科的な手術適応の対象となります。

 

⑤膀胱直腸障害

LCSの3~4%程度に膀胱直腸障害があるといわれています。

会陰部の感覚障害や尿失禁等の問題点があります。

膀胱直腸障害が出現している場合、手術適応となります。

 

⑥腰痛

間欠性跛行とともに来院される理由で多いのが腰痛です。

多くの患者が腰痛の訴えを持っていますが、LCSの場合腰痛自体はあまり強くない場合が多いといわれています。

 

診断基準

①理学検査

姿勢によって症状が変化する、ヘルニアは屈曲で悪化(後方に飛び出す)、LCSは伸展で悪化することが特徴とされています。

 

よって腰椎を伸展して症状が出るか確認するKempテストで約半数の場合が陽性になるといわれています。

また、SLRテストでは陰性になる為ヘルニアとの鑑別テストとしても使えます。

神経症状の有無については知覚検査や徒手筋力検査、深部腱反射をテストします。

LCSの馬尾障害ではアキレス腱反射の減弱や消失があるが運動知覚障害は認めないこともあるのが特徴です。

 

②画像検査

X線画像から椎間板の変性、脊柱のアライメントやすべり症などの有無を調べ、狭窄症の有無と程度を調べます。

MRIも脊髄造影では造影剤の及ばない脊髄神経溝内の狭窄の有無などの判断に有効です。

 

保存療法と手術治療

LCSは一般的に初期は日常生活には支障がないものの、活動時に軽い症状があるといった程度から始まります。

LCS患者の内、症状が軽度、あるいは中等度の方においては1/3~1/2で自然経過でも良好な予後が期待できます。

それ以外に関しては慢性的な経過をたどりますので原則初期は保存療法が適応となります。

 

保存療法では薬物療法やブロック治療、装具療法などが行われ、理学療法士などが介入する運動療法もその一つになります。

 

筋力の低下や明らかな知覚障害および膀胱・直腸障害を呈すると手術適応となります。手術療法では椎弓切除術を代表とした除圧手術が行われます。

 

またすべり症と合併している場合や腰椎の不安定性が強い場合、年齢や全身状態を加味したうえで腰椎固定術が適応となる場合もあります。

 

腰部脊柱管狭窄症の理学療法

理学療法および運動療法がLCSに有効あるという十分なエビデンスは得られていませんが症状である用電部痛や下肢痛においては理学療法と運動療法の組み合わせは有効と言われています。

介入の目的と代表的なアプローチは以下の通りです。

 

①ストレッチ

脊柱を伸展位に持っていくと症状が出やすいですが、LCSの患者さんは屈曲の方向に持っていくと症状が緩和します。

膝を抱きかかえるようにして体を丸めるストレッチを行うことで一時的にではありますが症状は緩和される場合があります。

一番の理想は患者自身がセルフでこのストレッチを行えることです。

下記の筋トレと併せて実施していきましょう。

 

②腹部、大臀筋のトレーニング

LCSは脊柱の伸展時に症状が出ることの多い疾患です。

特に腰椎は骨盤との関係性で前弯するため過度な前弯を抑える為に姿勢にアプローチしていく必要が有ります。

原因の一つとして腹部の筋肉の低緊張が考えられます。

腹直筋、腹横筋、腹斜筋など腹部の代表的な筋肉をトレーニングしていきましょう。

LCSの患者さんは症状のでる姿勢を避けるため放置しておくと脊柱が前弯しより腹部の低緊張を助長します。

自宅などでもできるエクササイズを取り入れていきましょう。

また同様に大臀筋も骨盤を後傾方向に持っていく重要な筋肉ですので合わせてアプローチを行っていきましょう。

 

③2次的な障害の予防や日常生活指導

LCSの患者さんは腰痛や下肢の症状の為、日常生活での活動性が低下してしまう方も多いです。

その結果廃用性の筋力低下を代表とする2次的な障害を引き起こしやすいといえます。

また筋肉の部分でもご説明したように、姿勢の変化を防ぐために歩行器を提案する、日常生活上の痛みが出る動作について聴取し、腰椎が伸展方向に入らないように指導するなど病院以外での心得についても目を向けていく必要があります。

 

最後に

いかがだったでしょうか。

腰部脊柱管狭窄症はポピュラーな疾患の一つですがいまだにわかっていない部分も多くエビデンスが徐々に出てきている状況です。

理学療法士として基本的な部分を理解し、その他さまざまな腰痛を引き起こす疾患との違いを見逃さず、二次的な障害の予防や生活、姿勢指導に対してもしっかりと目を向けていく必要性があります。

 

【参考文献】

腰部脊柱管狭窄症ガイドライン 2011

宮本雅史、元文芳和他、腰部脊柱管狭窄症の診断治療、J Nippon Med Sch 2002:69(6):583

北出一平、佐々木伸一他、脊柱管狭窄症、理学療法23巻1号:317 2006年1月

脊柱側弯症

側弯症とは、正面から見て背骨が横に曲がっている状態のことを言います。

背骨は横から見るとS字状に弯曲していますが、正面から見ると真っすぐなのが正常です。

成長期の子供に多く保護者の方も心配している人が多いと思います。

重度になると手術も必要になる側弯症。

今回は側弯症について解説していきます。

 

側弯症の分類

脊柱側弯症は一般的に機能性側弯症と構築性側弯症の2つに分けることができます。

①機能性側弯症

機能性側弯症は一般に背骨や胸郭の変形がないものです。

痛みがあったり足の長さが違ったりすることでかばうように生活した結果、背骨が曲がっている状態です。

痛みなどの原因を取り除く事ができれば側弯も消失します。

 

②構築性側弯症

構築性側弯症背骨そのものが変形し、肋骨の変形も伴います。

肋骨の変形が起こることで美容的な問題や、胸郭を狭く変形させ重症例では呼吸器疾患も併発してしまいます。

特別な原因もなく発症する特発性と他の病気によって発症する症候性の2つに分けられます。

側弯症の約70%は特発性側弯症であり、発症する時期により乳幼児、学童期、思春期に分類されます。

また思春期の発症が大部分を占めることになります。

特発性側弯症の原因は不明ですが遺伝や成長、代謝異常などいくつかの因子が重なり合って進行していくと考えられています。

 

評価法

側弯症と診断する際には姿勢を見ます。

①前屈検査による肋骨あるいは腰部の膨隆

②ウエストのくびれの左右非対称

③両肩の高さの左右非対称

④両肩甲骨の左右非対称

また、側弯の程度(重症度)を把握するためにCobb角というものが一般的に使用されています。

Cobb角は専門医がレントゲンで計測します。

一般的にはCobb角が20~50°までは保存的に治療を行い、50°以上になると手術療法が適応になってきます。

 

治療

Cobb角が10~20°の軽度の側弯症では生活指導運動療法が主になります。

運動療法の目的は体幹の可動域の改善と体幹筋力の維持と強化、弯曲の進行の予防が主になってきます。

しかし、残念ながら側弯自体を矯正することは難しいといわれています。

側弯症患者の筋力は全方向で低下していることが多く、特に腹筋の筋力低下が著明です。

自宅でできる腹筋強化を中心としたホームエクササイズの指導、進行性かどうかを判断するための定期的なレントゲンチェックが重要になってきます。

 

Cobb角が20~40°の中等度側弯症でまだ成長が見込まれる場合は、装具療法保存療法が適応となります。

変形した背骨は脊柱に柔軟性のあるうちに矯正しそれを保持する必要があるため、装具療法は側弯症に対してもっとも重要になってきます。

装具療法はお尻から腋の下まであるコルセットを使用して、側弯の進行を防ぎ、弯曲の矯正を行います。

装着時間は原則的に、入浴の時間を除いて1日中になりますが、かなり大きなコルセットになるため心理的な配慮も行い、短時間の使用から開始する場合もあります。

成長が止まるまで継続して装具を使用します。

治療効果は高いですが、完全に矯正することは難しいとされています。

スポーツなどは装具を外して行ってもいいです。

野球などの左右非対称に捻るスポーツも行い、できるだけ周りの友達と同じ生活をするように心がけましょう。

 

Cobb角50°以上の重症例では成長が止まってもさらに進行するとされており原則的に手術適応となります。

重症例になると神経が圧迫されることで足に症状が出たり、内臓が圧迫されたり、胸郭が変形することにより呼吸器障害が出現することがあります。

側弯症に対する手術療法は弯曲した背骨できるだけ矯正することと、その位置で固定することにより安定した背骨にすることが目的になります。

しかし、無理に角度を戻そうと矯正してしまうと逆に神経を傷つけてしまう可能性があり、真っすぐに戻すことは難しいです。

 

まとめ

今回は側弯症について解説していきました。

側弯症は思春期に起こる特発性側弯症が大部分を占めます。

軽度から中等度の側弯症では装具療法や運動療法が適応となります。

重度の症例では手術療法が適応になりますが側弯自体を完全に矯正することは難しいです。

側弯をできるだけ抑えるには早期発見が重要になってきます。

特に装具療法は背骨に柔軟性が残っている年齢が低い時期から行うことが望まれます。

日本では、学校の健康診断で側弯の検査を行い早期発見に努めています。

家庭でも上述した姿勢を確認するようにしましょう。

見つけたら早めに専門医に相談し、適切な治療を受けましょう。

『リハビリテーションとは?』

「リハビリテーション」という言葉はよく耳にすると思います。

たとえば骨折の後に「リハビリをしましょう」というように、一般的にはトレーニングやマッサージ、動作訓練をするという意味で使われることが多いですが、この「リハビリテーション」という言葉にはもっと広く、深い内容が含まれています。

 

リハビリテーションという言葉の由来

リハビリテーションrehabilitationは“re(再び)+habilitare(適合させる)”というように2つの言葉からできています。

もともとは中世ヨーロッパなどで失われた名誉・地位・特権などを回復するという意味で使われていましたが、第一次世界大戦の頃より医療の現場で、身体機能の回復や社会・職業への復帰のために使われるようになりました。

現在では、障害を治すだけでなく障害を持った人がより良い人生を送ることができるよう支援を行っていくこと全般を指して使われています。

 

リハビリテーションを行う意義

リハビリテーションというと病気にかかる、ケガをする前の状態に戻すことをイメージされる方も多いと思いますが、以前の状態に戻らないケガや病気になることもあります。

医療・介護の現場でリハビリテーションを行う意義は、ただ単に身体の回復を目指すだけではなく、一人の人間として自立した生活を送っていくために必要なことを獲得できるようにすることにあります。

生活や職業の自立まで到達できない重症な方に対しては、単に身体機能の改善による自立を求めるのではなく、仕事や旅行、買い物等の余暇活動などを通じて社会の場へ再び参加すること、つまり“生活の質(QOL:quality of life)の向上“を目指すものとなります。

リハビリテーションを行うことにより、一人ひとりの人生にあった生活能力を獲得し、豊かな人生を送れるようになることが大切です。

 

リハビリテーションに関わる3つの専門職種

リハビリテーションに関わる職種はいろいろとありますが、医療・介護の現場で主にリハビリテーションを担っているのは、以下の3つの専門職種になります。

 

理学療法士(PT:physical therapist)

主には運動機能の回復を目指していきます。筋力訓練や関節可動域訓練などの運動療法と温熱、電気刺激などの物理療法を使って、寝返る、立ち上がる、歩くなどの基本的な動作ができる状態を目指します。

 

作業療法士(OT:occupational therapist)

日常的な作業活動などを通して心身機能の回復を図っていきます。身体機能の中でも手の機能や認知・行為機能の障害を扱うことが多く、食事や着替えなどの日常生活動作や買い物、乗り物の利用など生活関連動作の拡大を目指します。精神疾患に対しても作業活動を通じて機能回復を目指していくところが理学療法士との大きな違いになります。

 

言語聴覚士(ST:speech therapist)
「聞く」「話す」などといった言語に関する機能が困難になった人に対し、聞こえや発声のサポートなどコミュニケーション能力の回復を目指します。喉の機能回復も対象とし、食事をするときに「飲み込む」能力についてもサポートを行います。

 

リハビリテーションは医師の指示のもとに、これらの専門職とともに看護師や栄養士、医療ソーシャルワーカーなど複数の専門職種が連携をとりながら進められます。

 

参考資料

三上真弘,出江紳一 編:リハビリテーション医学テキスト改訂第3版,南江堂,2012