『いつでもできる!食べにくさを感じたらチェックすること』
食べにくさ、飲み込みにくさ等の摂食・嚥下(えんげ)障害とは、加齢や病気に伴って起こる症状です。
食事は毎日のこと。食べにくさは、いつ何時誰にでも起こりうること、なのです。
摂食・嚥下障害ってなに?
摂食嚥下とは、食べ物を認識してから、口を通って胃の中へ送り込む、この一連の動作のことです。
このどこかに問題が起き、食べにくさ・飲み込みにくさを感じている状態を、摂食・嚥下障害といいます。
摂食・嚥下障害を疑う症状
食べにくさ・飲み込みにくさを感じた場合、以下の項目をチェックしてみましょう。
● むせの有無:
頻度やタイミングに注意が必要です。
● 咳(食事中や寝るとき):
いつ・どんな咳をしていますか?
● 痰の増減:
最近増えましたか?色が変わっていますか?
● 口やのどに食べ物が残る:
どこに残っていますか?どこに残っている感じがありますか?
● 食前後で声の変化がある:
ガラガラ声になるなど、いつもとちがう声になっていませんか?
● 食欲が落ちている:
嚥下障害が原因のこともあります。1週間ほどを通して、食事の量が少なくありませんか?
● 食べやすいものだけを選んでいる:
無意識に、飲み込みやすいものだけ選んで食べていませんか?
● 食事時間が延びすぎている:
口の中にいつまでも食べ物を溜め込んでいたり、なかなか飲み込まないことが増えていませんか?
● 食べ方が変わった:
口からこぼれたり、上を向いて食べていたりしませんか?
● 食事中・後に疲れている:
食べ物を飲み込むときは自然と息を止め、飲み込む動作を繰り返しています。飲み込みにくさを感じている状態では、飲み込むこと自体で疲れてくることがあります。
● 口の中の汚れがひどい:
ひどい歯垢や口臭、食べ物の残りカスなど、嚥下障害が原因のこともあります。
● 体重の減りが激しい:
食事がすすまないと低栄養になることがあります。
● 発熱が続いている:
嚥下障害が原因の肺炎を起こしていることもあります。
これらの症状はセルフチェックのほかに、まわりの人の“気付き”によって見つけることもできます。本人に自覚のない場合でも、周囲の人によって、食事の困りごとが発見され、専門家への相談、早めの対応につなげていくことができます。
摂食・嚥下障害によって起こるかもしれないこと
● 誤嚥性肺炎:
誤嚥とは、食べ物が気道(胃につながっている食道とはちがう通り道)に入ってしまうこと。それが原因で肺炎を起こしてしまうことを言います。最近では、有名人の死因のひとつとして、ニュースなどで耳にすることも増えたかもしれません。
● 脱水:
進行すると、意識が遠のいたり、体に力が入らなかったり、脈拍が増えたり、血圧が下がったり・・・命に関わる問題です!
● 栄養不良:
低栄養のため、他の病気や症状が出てくることがあります。
● 体重減少:
1週間で2%以上、1か月で5%以上、3か月で7.5%以上の減少が、極端な体重減少です。
摂食・嚥下障害はどうして起こるの?
冒頭にも記したように、いつ誰にでも起こるものです。原因とされているもので、代表的なものを紹介します。
● 加齢
● 脳卒中
● パーキンソン病などの神経難病
● 活動性の低下
● 薬の副作用
● 認知症
● 心理的要因によるもの(うつ病や拒食症など)
摂食・嚥下障害の対応
すぐできる対応として、
① 飲み込みに意識を集中する
(テレビを見ながら、新聞を読みながら、等の“ながら”食事をやめる)
② やや顎を引き気味に飲み込んでみる
(案外、顎が上がり気味の姿勢で食事をしていることが多い)
③ 水分にはとろみをつけてみる
(最近ではとろみ剤も、近隣のスーパーやドラッグストアで容易に購入できる)
④ 食事の形に気配りしてみる
(やわらかさ・形状・なめらかさなど。パサパサしたものやくっつくものなどは避けることも考える)
④ リクライニングできるような背もたれにもたれて食べてみる
(頭まで支えてくれるようなものが、リラックスできて良い)
等、様々なものがあります。自分に合う方法なのかどうかの判断、他の対応等は、専門機関への相談によって指導してもらうこともできます。
まとめ
食べにくさ・飲み込みにくさを感じたとき、セルフチェックや観察をしてみましょう。
摂食・嚥下障害の可能性があっても、すぐできる対応で解決できることもあります。また、身近な医療・福祉スタッフに相談してみるのもよいでしょう。
誰にも起こり得る食べにくさ・飲み込みにくさですが、症状や対応、相談相手を知っていることが大きな支えになります。食事が、いつまでもおいしい・楽しいものとして有るように、知っておきましょう。
【参考文献】
高齢者の摂食嚥下サポート 若林秀隆著 2017 新興医学出版社