これって大丈夫?膝の内側の痛みの種類と対処法
はじめに
変形性膝関節症や靭帯損傷など膝の痛みを伴う原因は様々です。
運動中に明らかな原因があって膝が痛くなり始める方もおられれば、年齢を重ねるとともに特にきっかけなく膝の痛みを覚えて不安になる方もおられるかと思います。
そこで、今回は膝の痛みの中でも多い内側の痛みを伴う場合の原因や対処法についてご紹介いたします。
膝関節とは?
まずは、正常な膝関節を構成する組織について説明します。
■骨
膝関節は、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)と膝蓋骨(お皿の骨)から成ります。
大腿骨と脛骨で形成される関節を『大腿脛骨関節』と言い、大腿骨の下端内外側にある大きく隆起した部分が脛骨の上を滑りながら蝶番のように動くことで膝の屈伸となります。
また、膝の屈伸に伴い大腿骨の前側で膝蓋骨が上下に滑るように動いており、ここで形成される関節を『大腿膝蓋関節』と言います。
脛骨の外側には腓骨という細い棒状の骨が脛骨と平行に並んでいますが、一般に言われる膝関節には関与していません。
■靭帯
靭帯とは骨と骨をつなぐ筋肉よりも硬く伸張性のない組織で、関節が脱臼しないように関節を保護しています。
膝関節には4つの大きな靭帯があり、大腿脛骨関節の内側にある「内側側副靭帯」、外側にある「外側側副靭帯」、大腿脛骨関節の中に「前十字靭帯」と「後十字靭帯」があります。
■半月板
大腿脛骨関節の間には「半月板」という水分を多く含む組織があります。
膝関節は体重を支え、走ったり跳んだりする度に関節にかかる大きな衝撃を吸収しています。
そこで、関節の間にある「半月板」がクッションの役割をして衝撃吸収を助けることで関節を守っています。
大腿脛骨関節の形状に沿って、内側には「内側半月板」、外側には「外側半月板」があります。
膝の内側の痛みの原因
それでは、膝関節の内側の痛みの原因について代表的なものをご紹介します。
■変形性膝関節症
膝関節の軟骨がすり減ったり、大腿骨や脛骨自体の形状が変形することを「変形性膝関節症」と言います。
変形性膝関節症になる原因の一つは、加齢に伴う股関節や膝関節周囲の筋力低下です。
筋力が不足している状態で歩行を続けると股関節や膝関節がまっすぐに支えられなくなり、O脚になってしまいます。O脚になると膝関節の中でも内側ばかりに圧が強くかかってしまい、内側の軟骨ばかりすり減ってしまいます。
そのようなアンバランスな荷重を続けた結果、膝の内側に痛みがでてくる方が多くおられます。
歩行時痛はもちろん、朝起きたての痛みや歩き始めの痛み、夜寝ているときの夜間時痛なども変形性関節症の特徴です。
■内側半月板損傷
膝関節は大腿骨と脛骨が蝶番のように動き、屈伸運動をするようになっています。
ですから膝関節は捻られる動きに弱く、体重がかかった状態で捻るような動きをすると大腿骨と脛骨の間にありクッションの役割をしている半月板をすりつぶすような動きになってしまいます。
運動中に膝を捻挫して半月板を傷めてしまうこともありますが、筋力の弱い女性特有の動作で膝が内側に入るような動きを繰り返してしまうと内側半月板を徐々に傷めてしまうこともあります。
荷重痛や膝の屈伸時にある角度で急に膝が動かなくなってしまうロッキング現象などが特徴です。
■内側側副靭帯損傷
膝関節の捻挫で傷めたり、歩いたり走ったりしている中で徐々に傷めることが多い靭帯です。
歩行やジャンプの着地などで膝が内側に入ってしまい、膝の内側が引きのばされるような状態になった際に大腿骨と脛骨の内側を繋いでいる内側側副靭帯が引き伸ばされて損傷したり、断裂したりしてしまいます。
断裂の程度が強いと、膝が内側に入ったときにガクンと抜けるような感覚があるのも特徴です。
■鵞足炎
脛骨の内側、内側側副靭帯が付着している部位に近いところに「鵞足」と呼ばれる部位があります。
鵞足は、縫工筋、薄筋、半腱様筋という3つの筋肉が集まって付着している部分です。
鵞足炎はランニングなどの運動を行う方に多いケガで、練習のやりすぎで筋肉を使いすぎているとき、下半身の十分な柔軟性がないまま運動を行っているときに上記の3つの筋肉の伸び縮みがうまくいかず付着部に負担がかかって起こります。
また、ジャンプの着地で膝の内側が引きのばされるようになったときに内側側副靭帯とともに損傷することもあります。
■膝蓋骨周囲炎
膝蓋骨(お皿)の周りには膝蓋骨の動きを制動するための靭帯や、クッション材としての脂肪組織があります。
膝が内側に入るなど、膝蓋骨の内側が引き伸ばされたり圧がかかるなどの負荷がかかると膝蓋骨の内側の靭帯や脂肪組織が炎症を起こしてしまいます。
膝の内側の痛みに対する対処法
膝の内側に痛みを感じてもすぐ治るかもしれないからと様子をみる方は多いかと思います。
そんなとき、ご自身でうまく痛みに対する対処ができるかどうかで経過が変わってきます。
ここでは、膝の内側に痛みがある場合にご自身でできる対処法や気を付けることをご紹介します。
■アイシング、湿布
膝の内側に痛みがあるとき、まずはどの程度の炎症があるのかをご自分で確認してみてください。
炎症の所見としては、痛みのほかに「腫れ」、「熱感」、「発赤」があります。
膝全体、もしくは痛みのある部位に上記のような所見があるときは炎症がある証拠なので、炎症を落ち着かせることで痛みが改善する可能性があります。
氷嚢で患部を冷やしたり、湿布を貼るなどの処置を行ってみてください。
■膝を捻らないように気を付ける
膝関節は蝶番のような動きをする関節ですので、捻りの動きが苦手です。
内側側副靭帯、内側半月板をはじめ膝関節が捻られることで損傷する組織が多々あります。
具体的に捻る動作とは、足を地面につけたまま振り返ったり向きを変える動作をしていないか、階段を昇るときにつま先の向きに対して膝が内側に入るような踏み込みをしていないかといったことなどです。
気が付かないうちに膝を捻っていることはたくさんありますので、膝の痛みがあるときは特に気を付けるようにしましょう。
■痛みのある動作を避ける
痛みを感じてからしばらくすると、だんだんどのような動きをすると痛いのかということが分かってくるかと思います。
体重をかけた時、捻った時、しゃがんだとき、伸ばしたときなどです。
痛みのある動作は痛めた組織に負荷をかけている証拠ですので、なるべく行わないようにして経過をみてみましょう。
おわりに
今回は膝の内側の痛みについて考えられる原因と対処法をご説明しました。
一時的になにかしらの負荷がかかって出現した痛みであれば、今回ご紹介したような対応で落ち着いてくるかと思いますが、不可逆的または強い組織の損傷がある場合にはご自身の対処では間に合わない場合もあります。
強い炎症所見が数日以上続く場合や、ここでご紹介した対処法を行ってみても改善しない痛みがある場合には整形外科を受診し、適切な診断や処置を行ってもらうようにしてください。