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リハビリテーション時の離床基準について!こういう場合は起こすべき?起こさないべき?

はじめに

リハビリテーションを行うにあたり、最も大切なことはリスク管理です。特に急性期の患者や、症状の安定しない患者、内部障害疾患を併存している患者に対しては、十分な注意が必要です。今回は、リスク管理の基本であるリハビリテーション時の離床基準について、復習したいと思います。

 

離床の必要性

臥床期間が長くなるほど、褥瘡や拘縮、起立性低血圧といった二次障害が起こりやすくなります。臥床期間は可能な限り短くし、早めに離床を促すことが大切です。離床することにより、意識レベルや覚醒レベルが改善し、食欲が増し、嚥下がスムーズになることもあります。また、他者とコミュニケーションがとりやすくなり、生活範囲が広がり、活動や参加につなげることができます。

 

離床の手順

離床を開始する際は、主治医の承諾を得て多職種で対象者の情報を共有した上で、行いましょう。また、検査データで貧血の有無や腎機能などを確認しておくことも必要です。急激に起こすのではなく、ベッドのギャッジアップ30度から60度→90度までと段階的に行います。血圧低下、気分不快などバイタルの変化がなく、問題がなければ、ベッドから足を下ろして端座位の姿勢をとります。ベッドから足を下ろした途端、起立性低血圧を起こすケースもあるので慎重に進めます。次に車いす座位、立位と進めていきます。また、離床時間や離床頻度も徐々に上げていきます。傾斜起立台(Tilt table)を用いることもあります。

 

離床の開始基準と中止基準

<離床の開始基準(離床を行わない方が良い場合)> 

・ 強い倦怠感を伴う38.0度以上の発熱
・ 安静時の心拍数が50回/分以下または120回/分以上
・ 安静時の収縮期血圧が80mmHg以下(心原性ショックの状態)
・ 安静時の収縮期血圧が200mmHg以上または拡張期血圧120mmHg以上
・ 安静時より危険な不整脈が出現している(Lown分類4B以上の心室性期外収縮、ショートラン、RonTモービッツⅡ型ブロック、完全房室ブロック)
・ 安静時より異常呼吸が見られる(異常呼吸パターンを伴う10回/分以下の除呼吸CO2ナルコーシスを伴う40回/分以上の頻呼吸)
・ P/F比(PaO2/FiO2)が200以下の重症呼吸不全
・ 安静時の疼痛がVAS7以上
・ 麻痺等神経症状の進行が見られる
・ 意識障害の進行が見られる
・  
<離床の中止基準(離床を中断し、再評価したほうが良い場合)>

・ 脈拍が140回/分を超えたとき(瞬間的に超えた場合は除く)
・ 収縮期血圧に30±10mmHg以上の変動がみられたとき
・ 危険な不整脈が出現したとき(Lown分類4B以上の心室性期外収縮、ショートラン、RonTモービッツⅡ型ブロック、完全房室ブロック)
・ SpO2が90%以下となったとき(瞬間的に低下した場合は除く)
・ 息切れ・倦怠感が修正ボルグスケールで7以上になったとき
・ 体動で疼痛がVAS7以上に増強したとき
 

心疾患を合併している場合は循環器理学療法の基準を参照してください。また、これはあくまで基準なので、ケースによっては該当しない場合もあります。総合的に評価し医師や看護師と相談しながら離床を進めましょう。

 

おわりに

離床は、リハビリテーション専門職だけでは進められません。医師や看護師だけでなく、介護士、家族などと協働して取り組むことが必要になります。食事は離床し、座位姿勢をとって行うなど、生活の中に離床をとり入れて進めると効果的です。座位をとる際には、座位姿勢が崩れないよう注意しましょう。姿勢が崩れると一部分に集中的に圧がかかり褥瘡の原因となり、痛みを発生させることもあります。離床することにより、生活の質の向上につながります。今一度、中止基準を確認して、安全で効果的な離床を行いましょう。

 

(参考文献)

活動と参加につなげる離床ガイドブック.日本作業療法士協会.

www.jaot.or.jp/wp-content/uploads/2011/04/guide-jissen.pdf