肩腱板損傷
肩腱板損傷は肩の疾患でよくみられる疾患の1つです。
スポーツをしている若年者だけでなく、運動していない高齢者など幅広い年代でみられます。
「肩に力が入らない」「腕が挙がらない」「動かすと痛い」という症状がある人は腱板損傷を疑った方がいいかもしれません。
今回は肩腱板損傷について解説していきます。
腱板とは
そもそも腱板とは何でしょうか?
腱板とは肩甲骨と上腕骨という腕の骨をつなげている筋肉です。
上腕骨は球状(上腕骨頭)、肩甲骨はお皿のような形(関節窩)になっています。
腱板は上腕骨頭を丸く包むように付着し、それぞれが共同して働き、この2つの骨を引き寄せ肩甲骨に安定させる機能があります。
この腱板は棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋と呼ばれる4つの筋肉で構成されています。
みなさんがよく「インナーマッスル」と言っている筋肉もこの腱板になります。
また肩甲下筋と棘上筋の間は烏口突起と呼ばれる骨の突起があり、この突起にさえぎられるように腱板がない部分があります。
この部分を腱板疎部といいます。
つまり腱板損傷とは、肩関節を安定させる腱板が損傷し、関節が不安定になったり、インナーマッスルとアウターマッスルのバランスが崩れた結果、痛みや筋力低下などの症状を呈している状態のことを言います。
腱板損傷の特徴
腱板損傷は肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋の腱板付着部での損傷と腱板疎部での損傷を含む疾患になります。
腱板損傷は不全断裂と完全断裂に分類されます。
不全断裂は完全に断裂せずに腱の表層や関節面側の部分だけで断裂している状態です。
不全断裂の中では圧倒的に表層での断裂が多くなっています。
完全断裂はその断裂範囲で小範囲(1cm未満)、中等度(3cm未満)、広範囲断裂(5cm以上)に分類されています。
広範囲断裂は棘上筋を含む2つの腱の断裂のことを指し、修復にも難渋することがあります。
また自然経過として、断裂した腱板は自然治癒しないとされています。
むしろ自然経過で断裂部分が拡大する傾向があります。
ただ、腱板が断裂したからといって症状がでるかというとそういうわけではなく、無症候性の腱板損傷が存在することが分かってきています。
腱板損傷の発生要因は外傷によるものが大半を占めますが、加齢による変性やオーバーユースなどでも発症し、中年以降ではごくわずかな外力や外傷の既往がなくても発生することがあります。
非外傷性の原因は、加齢による腱板の退行変性に伴う脆弱化が原因とされています。
40~50歳になると棘上筋腱への血流が減少し特に棘上筋腱が骨頭に付着する部分は、骨や靭帯との間で摩擦が生じやすく、損傷しやすい部分と言われています。
そのため、棘上筋は他の3腱より圧倒的に損傷を生じやすいと言われています。
その逆に棘下筋や肩甲下筋は単独で断裂することは少なく、広範囲断裂の際に損傷します。
腱板疎部の損傷はオーバーヘッドアクション、つまり手を頭より高く上げた位置での動作を繰り返し行うことによるオーバーユースが原因です。
頭より高い位置で繰り返し回旋運動を行うことにより、腱板疎部に炎症が起こります。
症状が進むにつれ、二次的にゆるんでしまうため肩の不安定性を招くおそれがあります。
腱板断裂の症状
腱板断裂の症状は、
①運動時や夜間に痛みがでる
②自力で腕を持ち上げられない、固まって動かせない
③腕に力が入らない
④腕を動かすときに引っかかったり痛かったりする
などが挙げられます。
常に痛いわけではないので、五十肩などと思って診察が遅くなってしまう可能性もあります。
不全断裂ではこのような症状を呈することは少なく、むしろ2次的に生じた腱板での炎症やや滑液包と呼ばれる腱板の滑りを良くする袋の炎症などによる痛みが主な症状になってきます。
夜間痛があると、夜寝ている時に疼いて寝れない、もしくは痛みが出て目が覚めてしまうなどが起こってきます。
原因は肩関節やその周囲の炎症などによる関節内の内圧の上昇と言われています。動かしたときの痛みは、特に腕を挙げるときや回旋するときに生じます。
また有痛弧(ゆうつうこ)と呼ばれるものがあり、腕を横から挙げていくときの最初と最後は痛みが出ず、中間域で痛みを訴えるのも特徴の1つです。
腕の自力での挙上障害は、患者さんによってその程度は様々であり、広範囲断裂でも著明な可動域制限を呈さないことがあります。
他力での可動域は最初は障害されることは少ないですが、治療をせずにそのまま放置した場合は関節が固まってしまっていることがあります。
治療
腱板損傷の治療は断裂の大きさや症状によって違いますが、保存療法と手術療法があります。
①保存療法
よほどの大断裂でない限り、保存療法が第1選択となってきます。
安静、投薬、リハビリが主な内容になります。
●安静
腱板損傷受傷直後は痛み、炎症が強い場合もあります。
不全断裂の場合でも、使いすぎている場合が多いのでまずは使う量を減らしたりして、過度な負担を避けるようにしていく必要があります。
●投薬
腱板損傷は夜間痛や運動時痛など、痛みで悩んでいる方も多いです。
痛み止めの薬を上手に使用することによって少しでも痛みをコントロールすることが重要になってきます。
痛みがあまりにも強い場合は、麻酔やヒアルロン酸などの注射を行う場合もあります。
●リハビリ
リハビリで行っていくことは肩周囲の筋肉の柔軟性の維持、肩周囲筋の筋力トレーニング、可動域制限がある場合の可動域練習、痛みのコントロールをするための姿勢の指導が主になってきます。
肩周りの筋肉は、特に肩甲骨周りの筋肉や首周りの筋肉マッサージやストレッチを行います。
筋力トレーニングは上記に挙げた腱板の4つの筋肉をトレーニングしていきます。ストレッチや筋力トレーニングは専門家に聞いて行うようにしましょう。
夜間痛を少しでも軽減させる方法として、クッションを腕の下に敷いて寝ることをお勧めします。
腕が下に落ち込むような姿勢になると痛みを誘発しやすいです。
外出時などもスリングなどを使用して、腕が体より後ろに行かないようにすると痛みも比較的楽になります。
②手術療法
保存療法で効果が無かったり、断裂が大きい場合は手術療法が行われます。
近年では関節鏡という小型の内視鏡を使用した手術が増えています。
以前のように大きな傷を切らずに、1cm程の小さな傷から関節鏡を入れ、モニターを見ながら断裂している腱板を縫合していきます。
術後はリハビリを行っていきますが、最初の数週間は装具で固定します。
その後、徐々に肩を動かす練習と筋力トレーニングを進めていくことになります。
固定期間やリハビリの進み方は各施設によって異なりますので、受診した医療機関に尋ねることをお勧めします。
まとめ
今回は肩腱板損傷について解説していきました。
腱板は、肩関節を安定させる機能を持っていますが、それが破綻した状態が腱板損傷です。
腱板損傷は身近な疾患ですが、無症候で気づかない人もいます。
腱板断裂になってしまっても必ず手術というわけではなく、保存的に治療して症状が軽快していく方もいらっしゃいます。
五十肩などと間違えやすいので、自分で判断せずに整形外科に受診して適切な指示を受けることが大事です。
鎖骨骨折のリハビリテーション
はじめに
鎖骨骨折は、全骨折中の約10-15%を占めるほど、頻度の多い骨折です。
ほとんどの場合、予後は良好で、リハビリも治療に関わってくる骨折です。
今回は、鎖骨骨折の基礎とリハビリテーションについてお話していきます。
概要
解剖
鎖骨は胸部の上部、肩の前部にある骨で、緩いS状の長骨です。
内側は、胸骨と胸鎖関節を、外側では肩甲骨と肩鎖関節を形成します。
最も早く骨化し始め、最も遅く骨化が完成(25-30歳)し、内部は海綿質で満たされ骨髄は存在しますが、長骨であるが髄腔は存在しません。
○鎖骨に付く筋と付着部
・胸鎖乳突筋:前内側1/3
・大胸筋:前内側1/3
・鎖骨下筋:下面中央1/3
・三角筋:前外側1/3
・僧帽筋:後外側1/3
鎖骨の役割
・上肢と体幹の連結
鎖骨は肩甲骨と胸骨を介し、上肢を体幹へつなぎ止める働きをしています。
・血管と神経の保護
鎖骨後方には、大きな血管や神経が走行しており、それを保護する役割もしています。
・肩の動作の支点
鎖骨が胸鎖関節にて肩甲骨の動きの支点となり、肩関節の自由度が増します。
鎖骨は、肩挙上の際、鎖骨では30-40°の挙上と45°程度の回旋が生じます。
鎖骨骨折について
鎖骨骨折の原因は、スポーツや交通事故、転倒などによって肩や腕に強い衝撃を受けて折れる場合が多く、骨折の瞬間には、骨が折れる音が聞こえる方もいます。
症状は、骨折部の腫脹や疼痛、熱感の他に、肩挙上の困難や挙上時の疼痛が現われます。
また、ズレが大きい場合は、外観からも分かる場合もあります。
診断方法は主にレントゲン画像の検査によって、行われます。
ズレが小さい場合は、見逃される場合もあるため、上記の症状が持続した場合は、専門の医師に相談する事をオススメします。
治療方法は、主に保存療法と手術療法があり、ほとんどの場合保存療法が適応となります。
しかし、ズレが大きい場合や開放骨折や神経・血管を傷つけている場合は、手術療法が適応となります。
鎖骨骨折の場合、骨の癒合は手術をした場合でも、4-12週間かかります。個人差がありますが、年齢が若い方が治癒は早いです。
鎖骨骨折のリハビリテーション
保存療法、手術療法どちらにもリハビリは必要です。
保存療法
保存療法の場合、クラビクルバンドを使用し固定します。
理由としては、鎖骨骨折は折れた鎖骨が重なるように転位していきます。
そのため、クラビクルバンドを使用し、転位しないよう固定します。
鎖骨骨折の場合、関節を構成している肩の可動域に大きな影響を及ぼします。
また、骨癒合がある程度完了していなければ、1-4週間は肩関節90°以上の挙上が禁止となるので、肩の拘縮予防が主なリハビリ内容となります。
1-4週のリハビリ内容としては、肩関節周囲の筋のストレッチやリラクゼーション、体幹のストレッチが主となります。
また、骨の癒合状態から、鎖骨を他動的に愛護的に動かしていき、鎖骨の可動域拡大を図ります。
鎖骨骨折では、訓練だけでなく生活指導も必要です。
まずは、上記でも話した通り、90°以上の挙上が禁止であるため、洗髪や家事等の動作指導が必要です。
また、就寝の際、寝る向きにも注意が必要で、受傷部位を下にして寝る事が無いよう指導が必要です。
手術療法
手術療法では、プレートやスクリューを使用し、鎖骨を固定します。
手術療法の利点としては、保存療法よりも転位が少ない事にあります。
しかし、創部感染等のリスクもあるため、注意が必要です。
保存療法の場合は、前日より入院し、翌日手術を受けます。
リハビリは、術後翌日からの介入が多いですが、術前からの介入をしばしばあります。
・術前
術前のリハビリでは、下肢のストレッチ等を実施し、循環の維持を行ったり、肩周囲のストレッチやリラクゼーションを実施します。
・術後-2週
術後では、肩の挙上が90°以上可能となりますが、ほとんどの場合、回旋によるズレや負荷が掛かってしまうため、2週間程度は90°以下での訓練を行う事になります。
この時期では、炎症と疼痛管理に注意が必要です。
内容としては、術創部周囲の皮膚のマッサージや他動的・自動的な肩の可動域訓練、肩関節周囲筋の筋力増強訓練が主です。
術後は疼痛が強いため、肩周囲筋のストレッチやリラクゼーションを図り、拘縮をつくらないようにしましょう。
また、訓練後は、術創部周囲の熱感が増大している場合があるため、アイシング等で、ケアを行っていきましょう。
・2-4週
この時期では、肩の挙上制限が解除され、積極的に動かしていく時期にあたります。
疼痛等に留意しつつ、愛護的にまずは他動的に可動域訓練を行っていきましょう。
ある程度、可動域が拡大してきたら、洗髪や結滞動作等を取り入れ、日常生活動作訓練も行っていきましょう。
・4週以降
ほとんどの場合、この時期には退院し、自宅で生活している時期になります。スポーツ復帰は医師と相談し、10-12週を目安にしていきましょう。
また、拘縮が残ってしまった場合には、外来にてフォローしていく事になります。
この場合の原因のほとんどは、術後の炎症や疼痛が強く、リハビリの進捗状況が悪かったり、筋の硬結などにより拘縮が強かった事にあります。
特に年齢層が高齢になるほど多く、時間がかかる場合もあるため、自主練や生活指導を交えながら、訓練を行っていきましょう。
最後に
鎖骨骨折は頻度も多く、臨床で経験する機会が多い症例です。
予後良好ではありますが、肩の拘縮を伴うケースは多く、長期のリハビリを強いられる方も中には居ます。
肩のみならず、鎖骨へのアプローチも忘れず行っていきましょう。
参考文献
分担 解剖学
標準整形外科学
日本骨折治癒学会
腰部脊柱管狭窄症(LCS)の基礎と理学療法
はじめに
腰部脊柱管狭窄症(以下:LCS)は代表的な腰部の疾患であり、今や社会現象となりつつある疾患の一つと言えます。
症状は腰痛から、神経症状まで多岐にわたり理学療法士として出会う機会も多いのではないでしょうか。
今回はそんな腰部脊柱管狭窄症について基本的な事項をおさらいするとともに一般的な理学療法での取組みについてご紹介していきたいと思います。
腰部脊柱管狭窄症の基礎知識
概要
脊柱管狭窄症は読んで字のごとく、加齢などの原因で骨や靭帯が変性することにより脊髄の通り道である脊柱管が狭窄されることにより、主に神経症状をきたすものを指します。
好発部位はL4-5、L3-4、L5-S1です。
腰部脊柱管狭窄症は一般に50歳ごろより発症し調査では50歳以上の一般住民で12.5%、70歳以上の高齢者においては2人に一人が罹患する可能性のある有名な疾患です。
症状
LCSの症状は神経の障害されかたによって馬尾型、神経根型、混合型の3つに分けられます。
脊柱管が狭窄すると硬膜が圧迫され結果脊髄に圧迫をきたします。
馬尾型では下肢、臀部、会陰などに感覚障害を呈し、神経根型では下肢、臀部の疼痛が主な特徴です。
以下に特徴的な症状をご紹介していきます。
①間欠性跛行
LCS特有の症状で一定時間連続歩行すると下肢の痛みやしびれなどを感じ歩行することが困難となる症状です。
しばらく休む、体を前屈することで再度歩けるようになりますが。間欠性跛行のような症状は閉塞性動脈硬化症などの循環障害などでも発生するので鑑別が必要です。
循環障害の場合は前屈や座って休憩することで症状が軽快することはなく、またLSCの間欠性跛行の場合、自転車での移動などの場合は症状が出現しないことも特徴です。
②感覚障害や疼痛
上記でも説明したように馬尾型では下肢、臀部などの感覚障害、神経根型では疼痛が起こりやすいとされています。
多くの場合は下位腰椎が好発部位であることから大腿、下腿、足部に症状が生じます。
L5神経根では臀部~代替後面、下腿の外側、足背に、S1神経根では臀部~大腿後面、下腿後面、足底に症状が出ます。
足底の感覚障害では「靴下をはいているような感覚」という表現など広範囲に部位を特定しにくい痛みや感覚障害を訴える為、しっかりとした聴取が重要になります。
④運動障害
感覚障害と同じように、障害されている神経の支配筋の筋力低下をきたすことがあります。
神経障害が高度の場合に脱力などが起こることも多く、ひどい場合は外科的な手術適応の対象となります。
⑤膀胱直腸障害
LCSの3~4%程度に膀胱直腸障害があるといわれています。
会陰部の感覚障害や尿失禁等の問題点があります。
膀胱直腸障害が出現している場合、手術適応となります。
⑥腰痛
間欠性跛行とともに来院される理由で多いのが腰痛です。
多くの患者が腰痛の訴えを持っていますが、LCSの場合腰痛自体はあまり強くない場合が多いといわれています。
診断基準
①理学検査
姿勢によって症状が変化する、ヘルニアは屈曲で悪化(後方に飛び出す)、LCSは伸展で悪化することが特徴とされています。
よって腰椎を伸展して症状が出るか確認するKempテストで約半数の場合が陽性になるといわれています。
また、SLRテストでは陰性になる為ヘルニアとの鑑別テストとしても使えます。
神経症状の有無については知覚検査や徒手筋力検査、深部腱反射をテストします。
LCSの馬尾障害ではアキレス腱反射の減弱や消失があるが運動知覚障害は認めないこともあるのが特徴です。
②画像検査
X線画像から椎間板の変性、脊柱のアライメントやすべり症などの有無を調べ、狭窄症の有無と程度を調べます。
MRIも脊髄造影では造影剤の及ばない脊髄神経溝内の狭窄の有無などの判断に有効です。
保存療法と手術治療
LCSは一般的に初期は日常生活には支障がないものの、活動時に軽い症状があるといった程度から始まります。
LCS患者の内、症状が軽度、あるいは中等度の方においては1/3~1/2で自然経過でも良好な予後が期待できます。
それ以外に関しては慢性的な経過をたどりますので原則初期は保存療法が適応となります。
保存療法では薬物療法やブロック治療、装具療法などが行われ、理学療法士などが介入する運動療法もその一つになります。
筋力の低下や明らかな知覚障害および膀胱・直腸障害を呈すると手術適応となります。手術療法では椎弓切除術を代表とした除圧手術が行われます。
またすべり症と合併している場合や腰椎の不安定性が強い場合、年齢や全身状態を加味したうえで腰椎固定術が適応となる場合もあります。
腰部脊柱管狭窄症の理学療法
理学療法および運動療法がLCSに有効あるという十分なエビデンスは得られていませんが症状である用電部痛や下肢痛においては理学療法と運動療法の組み合わせは有効と言われています。
介入の目的と代表的なアプローチは以下の通りです。
①ストレッチ
脊柱を伸展位に持っていくと症状が出やすいですが、LCSの患者さんは屈曲の方向に持っていくと症状が緩和します。
膝を抱きかかえるようにして体を丸めるストレッチを行うことで一時的にではありますが症状は緩和される場合があります。
一番の理想は患者自身がセルフでこのストレッチを行えることです。
下記の筋トレと併せて実施していきましょう。
②腹部、大臀筋のトレーニング
LCSは脊柱の伸展時に症状が出ることの多い疾患です。
特に腰椎は骨盤との関係性で前弯するため過度な前弯を抑える為に姿勢にアプローチしていく必要が有ります。
原因の一つとして腹部の筋肉の低緊張が考えられます。
腹直筋、腹横筋、腹斜筋など腹部の代表的な筋肉をトレーニングしていきましょう。
LCSの患者さんは症状のでる姿勢を避けるため放置しておくと脊柱が前弯しより腹部の低緊張を助長します。
自宅などでもできるエクササイズを取り入れていきましょう。
また同様に大臀筋も骨盤を後傾方向に持っていく重要な筋肉ですので合わせてアプローチを行っていきましょう。
③2次的な障害の予防や日常生活指導
LCSの患者さんは腰痛や下肢の症状の為、日常生活での活動性が低下してしまう方も多いです。
その結果廃用性の筋力低下を代表とする2次的な障害を引き起こしやすいといえます。
また筋肉の部分でもご説明したように、姿勢の変化を防ぐために歩行器を提案する、日常生活上の痛みが出る動作について聴取し、腰椎が伸展方向に入らないように指導するなど病院以外での心得についても目を向けていく必要があります。
最後に
いかがだったでしょうか。
腰部脊柱管狭窄症はポピュラーな疾患の一つですがいまだにわかっていない部分も多くエビデンスが徐々に出てきている状況です。
理学療法士として基本的な部分を理解し、その他さまざまな腰痛を引き起こす疾患との違いを見逃さず、二次的な障害の予防や生活、姿勢指導に対してもしっかりと目を向けていく必要性があります。
【参考文献】
腰部脊柱管狭窄症ガイドライン 2011
宮本雅史、元文芳和他、腰部脊柱管狭窄症の診断治療、J Nippon Med Sch 2002:69(6):583
北出一平、佐々木伸一他、脊柱管狭窄症、理学療法23巻1号:317 2006年1月
脊柱側弯症
側弯症とは、正面から見て背骨が横に曲がっている状態のことを言います。
背骨は横から見るとS字状に弯曲していますが、正面から見ると真っすぐなのが正常です。
成長期の子供に多く保護者の方も心配している人が多いと思います。
重度になると手術も必要になる側弯症。
今回は側弯症について解説していきます。
側弯症の分類
脊柱側弯症は一般的に機能性側弯症と構築性側弯症の2つに分けることができます。
①機能性側弯症
機能性側弯症は一般に背骨や胸郭の変形がないものです。
痛みがあったり足の長さが違ったりすることでかばうように生活した結果、背骨が曲がっている状態です。
痛みなどの原因を取り除く事ができれば側弯も消失します。
②構築性側弯症
構築性側弯症は背骨そのものが変形し、肋骨の変形も伴います。
肋骨の変形が起こることで美容的な問題や、胸郭を狭く変形させ重症例では呼吸器疾患も併発してしまいます。
特別な原因もなく発症する特発性と他の病気によって発症する症候性の2つに分けられます。
側弯症の約70%は特発性側弯症であり、発症する時期により乳幼児、学童期、思春期に分類されます。
また思春期の発症が大部分を占めることになります。
特発性側弯症の原因は不明ですが遺伝や成長、代謝異常などいくつかの因子が重なり合って進行していくと考えられています。
評価法
側弯症と診断する際には姿勢を見ます。
①前屈検査による肋骨あるいは腰部の膨隆
②ウエストのくびれの左右非対称
③両肩の高さの左右非対称
④両肩甲骨の左右非対称
また、側弯の程度(重症度)を把握するためにCobb角というものが一般的に使用されています。
Cobb角は専門医がレントゲンで計測します。
一般的にはCobb角が20~50°までは保存的に治療を行い、50°以上になると手術療法が適応になってきます。
治療
Cobb角が10~20°の軽度の側弯症では生活指導と運動療法が主になります。
運動療法の目的は体幹の可動域の改善と体幹筋力の維持と強化、弯曲の進行の予防が主になってきます。
しかし、残念ながら側弯自体を矯正することは難しいといわれています。
側弯症患者の筋力は全方向で低下していることが多く、特に腹筋の筋力低下が著明です。
自宅でできる腹筋強化を中心としたホームエクササイズの指導、進行性かどうかを判断するための定期的なレントゲンチェックが重要になってきます。
Cobb角が20~40°の中等度側弯症でまだ成長が見込まれる場合は、装具療法と保存療法が適応となります。
変形した背骨は脊柱に柔軟性のあるうちに矯正しそれを保持する必要があるため、装具療法は側弯症に対してもっとも重要になってきます。
装具療法はお尻から腋の下まであるコルセットを使用して、側弯の進行を防ぎ、弯曲の矯正を行います。
装着時間は原則的に、入浴の時間を除いて1日中になりますが、かなり大きなコルセットになるため心理的な配慮も行い、短時間の使用から開始する場合もあります。
成長が止まるまで継続して装具を使用します。
治療効果は高いですが、完全に矯正することは難しいとされています。
スポーツなどは装具を外して行ってもいいです。
野球などの左右非対称に捻るスポーツも行い、できるだけ周りの友達と同じ生活をするように心がけましょう。
Cobb角50°以上の重症例では成長が止まってもさらに進行するとされており原則的に手術適応となります。
重症例になると神経が圧迫されることで足に症状が出たり、内臓が圧迫されたり、胸郭が変形することにより呼吸器障害が出現することがあります。
側弯症に対する手術療法は弯曲した背骨できるだけ矯正することと、その位置で固定することにより安定した背骨にすることが目的になります。
しかし、無理に角度を戻そうと矯正してしまうと逆に神経を傷つけてしまう可能性があり、真っすぐに戻すことは難しいです。
まとめ
今回は側弯症について解説していきました。
側弯症は思春期に起こる特発性側弯症が大部分を占めます。
軽度から中等度の側弯症では装具療法や運動療法が適応となります。
重度の症例では手術療法が適応になりますが側弯自体を完全に矯正することは難しいです。
側弯をできるだけ抑えるには早期発見が重要になってきます。
特に装具療法は背骨に柔軟性が残っている年齢が低い時期から行うことが望まれます。
日本では、学校の健康診断で側弯の検査を行い早期発見に努めています。
家庭でも上述した姿勢を確認するようにしましょう。
見つけたら早めに専門医に相談し、適切な治療を受けましょう。
『リハビリテーションとは?』
「リハビリテーション」という言葉はよく耳にすると思います。
たとえば骨折の後に「リハビリをしましょう」というように、一般的にはトレーニングやマッサージ、動作訓練をするという意味で使われることが多いですが、この「リハビリテーション」という言葉にはもっと広く、深い内容が含まれています。
リハビリテーションという言葉の由来
リハビリテーションrehabilitationは“re(再び)+habilitare(適合させる)”というように2つの言葉からできています。
もともとは中世ヨーロッパなどで失われた名誉・地位・特権などを回復するという意味で使われていましたが、第一次世界大戦の頃より医療の現場で、身体機能の回復や社会・職業への復帰のために使われるようになりました。
現在では、障害を治すだけでなく障害を持った人がより良い人生を送ることができるよう支援を行っていくこと全般を指して使われています。
リハビリテーションを行う意義
リハビリテーションというと病気にかかる、ケガをする前の状態に戻すことをイメージされる方も多いと思いますが、以前の状態に戻らないケガや病気になることもあります。
医療・介護の現場でリハビリテーションを行う意義は、ただ単に身体の回復を目指すだけではなく、一人の人間として自立した生活を送っていくために必要なことを獲得できるようにすることにあります。
生活や職業の自立まで到達できない重症な方に対しては、単に身体機能の改善による自立を求めるのではなく、仕事や旅行、買い物等の余暇活動などを通じて社会の場へ再び参加すること、つまり“生活の質(QOL:quality of life)の向上“を目指すものとなります。
リハビリテーションを行うことにより、一人ひとりの人生にあった生活能力を獲得し、豊かな人生を送れるようになることが大切です。
リハビリテーションに関わる3つの専門職種
リハビリテーションに関わる職種はいろいろとありますが、医療・介護の現場で主にリハビリテーションを担っているのは、以下の3つの専門職種になります。
理学療法士(PT:physical therapist)
主には運動機能の回復を目指していきます。筋力訓練や関節可動域訓練などの運動療法と温熱、電気刺激などの物理療法を使って、寝返る、立ち上がる、歩くなどの基本的な動作ができる状態を目指します。
作業療法士(OT:occupational therapist)
日常的な作業活動などを通して心身機能の回復を図っていきます。身体機能の中でも手の機能や認知・行為機能の障害を扱うことが多く、食事や着替えなどの日常生活動作や買い物、乗り物の利用など生活関連動作の拡大を目指します。精神疾患に対しても作業活動を通じて機能回復を目指していくところが理学療法士との大きな違いになります。
言語聴覚士(ST:speech therapist)
「聞く」「話す」などといった言語に関する機能が困難になった人に対し、聞こえや発声のサポートなどコミュニケーション能力の回復を目指します。喉の機能回復も対象とし、食事をするときに「飲み込む」能力についてもサポートを行います。
リハビリテーションは医師の指示のもとに、これらの専門職とともに看護師や栄養士、医療ソーシャルワーカーなど複数の専門職種が連携をとりながら進められます。
参考資料
三上真弘,出江紳一 編:リハビリテーション医学テキスト改訂第3版,南江堂,2012
筋膜リリースとストレッチの違い。そして、筋膜リリースの禁忌事項とは?
最近はテレビなどでも「筋膜リリース」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
リハビリ業界でも徐々に浸透し始めてきた言葉ですが、最近特にメディアが扱うようになってきたと感じています。
ストレッチみたいなもの・・?
聞いたことはあるけど詳しくは分からない・・という方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は筋膜リリースについてできる限り分かりやすく解説していきたいと思います。
そもそも筋膜ってなにもの?
筋膜とは
筋膜とは名前の通り、筋肉を覆っている薄い膜のことを言います。
筋膜は「第2の骨格」とも呼ばれています。
筋膜は全身に連なる結合組織で、3次元的に身体全体を覆っています。
イメージとしては並列に正しく並んでいるのではなく、縦横無尽に走っている網の目のようなものだと言えます。
また、筋膜はコラーゲン(膠原)線維とエラスチン(弾性)線維から構成されており、浅筋膜・深筋膜・筋外膜・筋周膜・筋内膜の5つに分類されています。
筋膜は繋がっているもの
筋膜は一定の法則に従ってお互いに連結しあうことで3次元的なバランスを保っています。
そのため、筋膜のある一か所に機能障害が起きると離れた部位に影響を及ぼすこともあるという特徴があります。
筋肉そのものはお互いに繋がっているわけではありませんが、筋膜は連結して繋がっているのです。
痛みの原因は筋膜の癒着?
筋膜の癒着と痛みの関係
筋膜は上記のようにコラーゲン線維エラスチン線維で構成されており、そのほとんどが水分です。
その水分が減少していくことによりコラーゲン線維・エラスチン線維の間を埋めている部分の流れが悪くなりドロドロとした状態になります。
そしてゼラチンのように固まり、コラーゲン線維とエラスチン線維の新陳代謝を妨げ次第に筋膜が癒着していきます。
この筋膜の癒着が人体の痛みの原因となってくる場合があるのです。
なぜ筋膜が癒着してしまうのか
筋膜が癒着してしまう原因はいくつかありますが、その一つにストレスが挙げられます。
ストレスそのもので筋膜が癒着するわけではありませんが、人間はストレスを感じると自然と肩をすくめたり、歯を食いしばるような動作をすることが多いです。
普段からストレスを感じている人は無意識のうちに全身に力が入っていることが考えられます。
このようにストレスによって持続的に力が入る状態が続いたり、普段使わない筋肉を使うことで筋膜の癒着の原因になることもあります。
筋膜リリースとストレッチの違いについて
それぞれの目的と対象
筋膜リリースとストレッチは見た目が似ているようなものも存在しますが、狙っている対象の箇所(組織)や目的、実施時間などに違いがあるので注意が必要です。
それぞれの違いを下記にまとめてみました。
〇筋膜リリース
対象箇所:筋膜の癒着またはねじれがある箇所
目 的 :癒着またはねじれた筋膜の修正・改善
実施時間:おおむね90秒以上必要とされている
〇ストレッチ
対象箇所:自分が伸ばしたい筋肉の箇所
目 的 :筋肉の柔軟性・伸張性の向上
実施時間:おおむね10~30秒程度
筋膜リリースの禁忌事項
筋膜リリースをやってはいけない場合(禁忌)を以下に紹介します。
発熱中の方・転移のある癌(過去5年以内に再発している場合)の方・感染症の方・妊娠中の方・骨粗鬆症の方・合併症を伴う糖尿病を患っている方・体に怪我腫れのある方・骨膜炎、皮膚硬化症などの結合組織の炎症のある方・手術直後の方・医師のもとでコントロールされていない循環系疾患を患っている方・医師から徒手療法やマッサージを許可されない疾患のある方
などの方が禁忌の対象となりますのでご注意ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
最近よく聞く言葉となってきた「筋膜リリース」ですが今後はもっと聞く機会が増えていくのではないでしょうか。
それほど医学界やリハビリ業界では定着してきています。
日ごろのストレッチではなかなか改善しない痛みがあるような方はもしかすると筋膜が原因にあるかもしれません。
そのような場合にはぜひ筋膜リリースを試してみてその効果を比べてみるのが良いと思われます。
適切なやり方を知りたい場合は専門書が徐々に出版され始めているためそちらを参考に行ってみるのが良いと思います。
高次脳機能障害の基礎
はじめに
臨床場面において、高次脳機能障害の患者さんに出会う機会は多くあると思います。
しかし、症状は多岐にわたる上、質や程度の幅が大きいため、スクリーニング検査だけでは症状がとらえられないことも多く、頭を悩ませた経験もあるのではないでしょうか。
ここでは、高次脳機能障害の基本的な症状について解説していきます。
定義
主として大脳、大脳辺縁葉、視床、視床下部、中脳など、中脳神経系のうち比較的高位に位置する領域の損傷によって生じる行動および認知能力の障害とされます。
行動とは、眼球運動、発話、肘を曲げる、指をさす、歩く、走るといった一関節の運動から全身的な動きまで、人が引き起こす全ての動きを含みます。
認知とは、いわゆる精神的な行動を指し、意識、感情、記憶、思考、知覚、問題解決等を含みます。
症状を評価する上で、外見としてとらえることができるのは行動の障害であって、認知の障害は全てが外から観察できるとは限りません。
注意障害
注意機能は、以下のように分類され、これらの機能が密接に関係し症状が現れます。
・覚醒度
目を覚まして外界に対する刺激に適切に対応できる状態を指し、低下するとぼんやりと頭が冴えない、集中が続かないといったことが生じます。
・持続的注意
思考や行為を有効に成立させるために、選択した刺激に注意を向け続けることです。
これが障害されることで、同じ動作を継続して行うことができず、他の事に注意が逸れたり、ミスが増えるといった症状に現れます。
・選択的注意
多くの刺激の中からある特定の刺激を選び、そこに注意を集中することをいいます。
これが低下することで、沢山の物の中から自分が探している物を見つけられなかったり、騒音の中から話し相手の声を選択的に聞き取ることができないといったことが生じます。
・注意の転換性(転動性)
一定の刺激に注意を向けつつ、必要ならより重要な刺激に向けて注意を切り替えることであり、亢進するとひとつの事に集中できず、周囲の関係のない刺激に注意が逸れてしまいます。
一方、低下すると他のことにうまく注意を転換できず、ひとつのことに固執してしまいます。
・配分的注意
複数の刺激に同時に注意を配る機能です。
障害されることで、話を聞きながらメモを取ることや、複数の作業を同時進行する料理などが困難になります。
記憶障害
短期記憶障害では少量の情報を銘記、短い時間保持し再生することが困難になり、数桁の炊事の復唱や数分前に記憶した単語を忘れるといった障害が現れます。
意味記憶の障害は、語彙や概念等の知識に関する記憶が障害され、言葉の意味が理解できない、説明することができないといったことが生じます。
エピソード記憶は個人的な体験・出来事、いわゆる思い出に関する記憶であり、障害された時点から見て、後の(新しい)情報の記憶が障害されることを前向性健忘、前の(古い)情報の記憶が障害されることを逆向性健忘といいます。
半側空間無視
右半球脳損傷後の高次脳機能障害として最も多くみられます。
右半球の脳血管障害の急性期において軽度のものも含めれば、半側空間無視は約4割の患者に認められています。
半側空間無視は、大脳半球の病巣と反対側の刺激に対して、発見して報告したり、反応したり、その方向を向いたりすることが障害される病態とされています。
多くは右大脳半球が空間性注意において優位であるため、左の半側空間無視が多く認められます。
例として、食事を食器の左側だけを残す、左上肢や下肢が車いすから落ちていても気づかない、左側に置いてある物が見つけられない等が挙げられます。
失認
・視覚失認
物体を認知するための視力や視野が保たれているのに、そのものが何であるかわからない状態です。
これにより、物品の呼称や使用法の説明、図の模写等が困難になります。
・相貌失認
知っている相手の顔を見ても誰なのかわからないという症状が現れます。
人の顔であることや、目や鼻等の構成の認知は保たれていますが、馴染みのある人の顔でも名前やどういった人物かが言えなくなります。
一方で、顔を対象とする認知障害であるため、相手の声を聞くと誰であるか認知することができるのが特徴です。
・地誌的障害
熟知した建物や風景、道順等の認知が障害され、よく知っている場所を想起できなかったり、道に迷ってしまう状態です。
よく知っている街並みの同定が困難となる「街並み失認」、今いる場所や建物がわかるが、目的地までの道順の想起が困難になる「道順障害」、知っている場所の地図や部屋の間取りを想起することができない状態の「地誌的記憶障害」に分類されます。
・聴覚失認
聴力は保たれているが、聞こえた音が何であるかわからない状態をいいます。
側頭葉を中心とした損傷によって多く認められます。
よく知った動物や車、電話などの音に対する認知が障害されます。
失語
失語は発話の流暢さによって「流暢性失語」と「非流暢性失語」に分類され、程度は異なりますが、大きく分けて発話、理解、呼称、復唱が障害されます。
①流暢性失語・・・発話が比較的滑らかで自発話の量が正常に近い状態です。
・ウェルニッケ失語
中~重度の理解障害、復唱障害があり、発話は流暢で多弁ですが錯語が多いのが特徴です。理解と換語が困難なため、会話がかみ合わないことや内容に乏しいことが多いです。
主に左頭頂葉後上部に起こり、後方への範囲が広いとより読み書きの障害が強く生じます。
・超皮質性感覚失語
理解障害、換語の困難さが生じます。
復唱が良好であることが、ウェルニッケ失語とは異なる特徴です。
・健忘失語
流暢な発話、理解と復唱も良好な一方で、換語の困難さや迂言、指示代名詞が目立ちます。
錯語も生じますが、多くは言い間違えたことを自身で気付くことができます。
・伝導失語
音韻性錯語の目立つ発話および復唱と呼称を特徴とします。
書字においても錯書がみられます。
しかし、言い間違いに自身で気付き、修正することができます。
理解はほぼ正常に保たれています。
②非流暢性失語・・・発話がないか、少ししか話さない状態です。
・ブローカ失語
理解障害は軽度~中等度であり聴覚的理解は比較的保たれています。
発話量は少なく、一語~数語の努力的な発話となります。
復唱や書字においても同程度の障害がみられます。
・超皮質性運動失語
高音は良好であるものの、著しく発話量が低下し、話をしても時間がかかり短文しか話せない状態になります。
聴覚的理解はブローカ失語と同程度に比較的良好ですが、呼称や書字は困難になります。
・全失語
発話、理解、復唱、呼称、読み書きが重度に障害されます。
発話はほぼなく無言の状態であることが多く、あっても意味のない発声となることがほとんどです。
・混合型超皮質性失語
復唱のみ良好で、それ以外は全失語と同程度で重度に障害されます。
発話もほとんどない状態となります。
失読、失書
読み書きする能力の障害であり、読み及び理解の障害、書字の障害、読み書きの両方とも障害される場合があります。
・純粋失読
書字能力は保たれますが、音読することと理解の障害がおこります。
単語よりも文章でより障害が明らかな場合が多く、なぞりながら読むことで音読が可能になることが多いです。
・純粋失書
自発書字、書き取りが困難になる状態で、通常両手に現れます。
書くことができても、その過程で想起や書字に時間がかかったり、書き方に迷うといった所見があれば失書と判断されます。
読みの能力は保たれています。
・失読失書
失読と失書が同時に生じたものであり、読みと理解、書字が困難になります。
行為の障害
運動麻痺がないにも関わらず、動作を遂行することが障害されたり、意思とは反する行為や行動がおこる状態です。
①失行
運動麻痺がないにも関わらず、行為の遂行が困難になります。
・観念運動失行
動作の模倣及び道具を使う真似が困難になります。
例えば、バイバイと手を振る動作の模倣や、くしで髪をとかす真似(実際に道具は使わないパントマイム)ができなくなります。
・観念失行
道具を使用方法や持ち方を間違えたり、動作の使用方法を説明することが困難になります。
・肢節運動失行
普段から行っている慣れた動作でも動作がぎこちなくなったり、拙劣さが生じます。
・拮抗失行
左右で反対の行為を行ってしまう状態です。
例えば、右手では本のページをめくろうとしているのに、左手はそれを邪魔しようとするといった行為がみられます。
・脳梁失行
右上肢の行為は保たれますが、左上肢において錯行為や保続といったことが生じます。
口頭命令での動作や道具使用の模倣などでみられることが多いです。
②運動維持困難
開眼、開口、挺舌などの動作を一つあるいは二つ以上同時に維持することができなくなります。
例えば、指示した秒数の閉眼維持ができなかったり、上肢の挙上を保つよう教示してもすぐに中断してしまうといった所見があります。
遂行機能障害
遂行機能は人が目的的活動を営んだり、問題を計画的・合理的に解決する上で必要な機能であり、「目標の設定」「行為の計画」「計画の実行」「効果的な行動」の4つの要素からなっています。
遂行機能障害はこれらの要素を機能させるための判断や思考が障害された状態をいいます。
言語、記憶、行為などの機能は保たれていますが、それらを制御し統合することができない状態です。
例えば、仕事において優先順位を決めたり効率良く作業を進めることができなかったり、料理の献立や分量など計画を立てて作ることができないといったことがおこります。
高次脳機能の各検査や入院中の自由度の低い生活においては、症状が明らかに現れないことも多く、後に気づく場合もあるため遂行機能障害の可能性についても念頭において評価する必要があります。
おわりに
ここまで様々な症状について説明してきましたが、実際に患者さんを診るといくつかの要素が混ざり合っていることも多くあると思います。
まずは基本に返り、各症状の概要と特徴を把握することで、患者さんに起こっている症状を理解しましょう。
そして、今後の高次脳機能に対する評価やその先の治療に役立てて頂けたら幸いです。
1)山鳥重,高次脳機能障害マエストロシリーズ①基礎知識のエッセンス,医歯薬出版株式会社:12-13
2)鈴木孝治,高次脳機能障害マエストロシリーズ③リハビリテーション評価,医歯薬出版株式会社:48-49,101
3)石合純夫,高次脳機能障害学,医歯薬出版株式会社:25-78,121
呼吸の乱れはカラダとココロの乱れ!?-全部、ピラティスで整えましょう!
ひとの呼吸は1日30000回!
わたしたちは皆、意識していてもいなくても、吸うことと吐くことを、24時間365日繰り返して生きています。
その呼吸運動の回数は、実に1日30000回にもなります!
呼吸はだれでも簡単にできているように思えますが、呼吸の仕方は人それぞれ特徴があります。
また、体調の変化やストレスの感じ方で、呼吸のリズムや深さは変わります。
緊張しているときなどには、意識的にゆっくりと深呼吸することで、からだや気持ちの緊張を少しほぐすこともできます。
このように、呼吸とカラダ、呼吸とココロは、それぞれに影響し合う、切っても切れない関係なのです。
呼吸の調子が悪くなると、姿勢も悪くなってくる
呼吸器疾患や循環器疾患があって体調が思わしくなかったり、どこか痛いところがあるとき、また自律神経失調症やうつ病などの症状の中に、息苦しさや、呼吸困難感といわれるものがあります。
そしてそのような症状のある方々は、かなりの割合で姿勢が乱れている様子が見受けられます。
痛みをガマンしていたり、息苦しくて息が切れたような状態の時って、肩や首がりきんで余分な力が入ってしまっていたり、浅くて速い呼吸しかできなかったりしますよね。
そんな時には肩が凝りがひどかったり、首が突っ張ったりして、なかなか背すじをしっかり伸ばした美しい姿勢で過ごすのは到底無理なことです。
そして少しほっとしたくても、リラックスとはほど遠い、息をするのもつらい状態となってしまいます。
呼吸の状態とその時の姿勢は、深い関わりがあって良い方へも悪い方へも強く影響しあっているのです。
呼吸をラクに、姿勢を良くするために…肩甲骨に注目!
呼吸は一種の運動で、無意識のうちに、たくさんの筋肉を使い、胸郭を広げて肺に空気を取り込み、そして筋肉が緩むことで胸郭がしぼむことで吐き出しています。ラクに呼吸ができているときには、おもに肋骨についている筋肉や横隔膜が働いて、胸郭のスムーズな運動が行われます。
これを「安静時呼吸」といいます。
深呼吸するときや、息苦しくて、早くたくさんの空気を取り込み、吐き出したい時には、さらに首まわり、肩まわり、胸や腹部の筋肉も協力して、胸郭と肺を大きく動かすように働きます。
このたくさんの筋肉に助けてもらいながら、大きく呼吸することを「努力性呼吸」といいます。
努力性呼吸では、意識的・無意識的を問わず、深く大きな呼吸が行えます。
しかしそのぶん、安静時呼吸に比べるとたくさんの筋肉を使わなければならず、息をすること自体でエネルギーを消耗してしまったり、首や肩を動かす筋肉に疲労がたまって凝ってしまうという、体にとって負担となる一面もあります。
なんらかの原因で、安静時呼吸では十分な呼吸が行えなくなっているとき、脳をはじめとしたカラダ全体に酸素を供給するため、私たちは無意識のうちに努力性呼吸をしています。このとき、肩や首の筋肉を過剰に使ってしまうので、肩甲骨の配置が、正常範囲を超えて背中の上の方まで上がってきたり、手を動かすようなことを何もしていないのに天使の羽根のように浮き上がってしまったりします。
甲骨の位置がずれてしまうと、息を吸うときに背中の方までしっかり吸い込むことができなくなってしまいます。
また自然な呼吸で起こっている、吸ったら伸びて、吐くときかがむという背骨の動きも制限されます。
というのは、吸ったときに背骨が伸びるためには、肩甲骨が周りの筋肉の活動で、少し下方内側に移動しなければならないのですが、筋肉が働きにくくなり、肩甲骨が良い位置まで動かせないのです。
そうなると、肩甲骨が肩の上にのしかかるおもりのようになってしまい、猫背の悪化や、大きく呼吸ができない状況へ陥ってしまいます。
しかもさらに困るのは、普通に生活していたら、自分の肩甲骨がいったいどこにあってどっちを向いているのか、しっかり背中に貼り付いてくれているのかどうかなんて、自分では分からないし、意識することもないということです。
こんな姿勢が長く続けば続くほど、呼吸は浅く速くなり、肩や首の筋肉もこり固まり、頭痛やめまいなどの身体の症状がでてきたり、いつもイライラしたような精神状態と向き合わなければならなくなってしまうかもしれません。
ピラティスのエクササイズで、肩甲骨の位置を整えられる
ピラティスでは、エクササイズの中で、呼吸そのものへの意識を高め、エクササイズへの集中と、ストレスなどをつかさどる自律神経の活性化を図っていきます。
さらに、腕や肩を動かすエクササイズの中では、スタートポジションから動きの最中、終わりまでずっと、肩甲骨が良い姿勢を保つのに理想的な位置で置いておけるような工夫がされています。
例えばエクササイズのはじめに、さまざまな方向へ腕を動かすウォーミングアップを行うことがあるのですが、その中には肩甲骨の6方向への運動(挙上、下制、内転、外転、上方回旋、下方回旋)を自然と行ない、しかも自分で意識できるようなものが含まれています。
ふだん意識していない場所を動かすのは、はじめはとても難しいですが、ストレッチポールや幅広いゴムでできたバンドなど、さまざまな小道具を活用することで、肩甲骨の動きや位置がわかりやすくなるよう工夫することができます。
そして一度分かると、姿勢が変わったり、違う運動をしている最中でも、肩甲骨が自分の背中でどこにあるのかが感じられるようになってきますし、適切な位置に保つこともできるようになります。
ピラティスは、エクササイズをしている最中だけでなく、ふだんの生活のをする中でも、自分のカラダへの意識を高めたり、良い姿勢がどのようなものかというイメージをわかりやすくしてくれる効果もあります。
自分がどんなふうに立っているか、正しく認識できている人は少数派です!
ふだんのご自分の姿勢について、どう捉えられているかは個人差が大きいですし、どのような姿勢がいわゆる良い姿勢なのか、というイメージも人それぞれです。
そして日本人は特に、姿勢や歩き方などについて習うような機会がほとんどありませんし、中には良い姿勢というのは背骨がまっすぐに伸びきった状態であると思っている人もいます。
しかし実は、脊椎というのは、頚椎は前方、胸椎は後方、腰椎は前方へ少し弯曲しているのが本来のかたちなのです。
小さい頃から猫背を直すようしつけられてきた人の中には、必要な脊椎の弯曲までなくしてしまった、フラットバック(平背)という、良くない姿勢をとっている方もおられます。
ただ、日頃から自分の姿勢が良くないと思っている方は、自覚されているぶん、まだ良いかもしれません。
自分では姿勢が良いと思っているひとの方が、自分の姿勢のゆがみやりきみに気付かれていないので、その分だけ、姿勢の影響による痛みや自律神経の乱れ、内臓の不調が出て来たときに、対応が遅れてしまうことがあり得ます。
また最近はワークアウトブームで、健康やストレス発散のために習慣的に運動している人が増えていますが、そのような方の中には、姿勢やバランスが崩れたままで、ご自分の体にどんどん負荷をかけてしまい、関節や筋肉を傷めたり、怪我をしてしまう方もおられます。
リラックスして過ごす時間も、しっかり運動する時間も快適に、効果的に過ごすことができるようにするためには、基本の姿勢がとても大切です。
ピラティスのエクササイズを行うことで、自分の姿勢や動くときのクセにも気づくことができますので、経験したことのない方はぜひ一度、自分の姿勢が改善して呼吸がラクになったり、歩きやすくなったり、バランスが良くなるといった効果を感じてみられることをおすすめします!
肩こりに悩んでいる人必見。肩こりと肩甲骨に関するメカニズムと改善方法を紹介。
肩こりはもはや国民病とも言われているほど。
日々仕事がデスクワーク中心の人や日々家事に勤しんでいる主婦のみなさん、一度は肩こりに悩まされた、または今も悩んでいるという人は多いのではないでしょうか。
一見すると、肩の筋肉の問題だけかと思われがちですが、実は肩甲骨が肩こりに大きく影響しているということはご存知でしょうか?
今回は肩こりと肩甲骨の関係、そして肩甲骨を動かして肩こりを改善する方法を解説していきたいと思います。
肩甲骨はどんな骨?
肩甲骨はどこの骨?
なんとなく知っている方は多いと思いますが、肩甲骨は人間の肩の背中側にある二対の骨です。
大きくて不思議な形をしているのは肩甲骨に多くの筋肉が付着しているからです。
筋肉が多く付着しているということは、それだけ重要な骨であり、また肩の運動にとって大切な役目を担っているということが分かります。
肩甲骨はどんな動きをする?
肩甲骨は主に6つの動きに関係してきます。解説していくと・・
内転→肩甲骨同士が近づいていく運動。主に肩を後方へ下げた時の動き。
外転→肩甲骨同士が離れていく運動。主に肩を前方へ出した時の動き。
下制→肩甲骨が下方へ下がる運動。主に肩を下へ下げた時の動き。
挙上→肩甲骨が上方へ上がる運動。主に肩を上へ挙げた(すくめた)時の動き。
下方回旋→肩甲骨が内側へ回転する運動。主にばんざいから肩をおろした時の動き。
上方回旋→肩甲骨が外側へ回転する運動。主に肩をばんざいした時の動き。
細かく記載しましたが、特に覚える必要はなく、肩甲骨が肩の運動にこれだけ関与しているんだということを理解していただければ十分だと思います。
どうして肩こりが起きてしまう?
肩こりのメカニズム
肩こりができる原因を簡単に説明すると・・
1 長時間同じ姿勢や同じ動きをすることで持続的に肩の筋肉が緊張していく
↓
2 緊張した筋肉が固くなっていき、周囲の血管などを圧迫し血行不良になる
↓
3 血行不良のため十分に酸素や栄養が供給されない
↓
4 筋肉が疲労しやすくなり、より筋肉が硬くなっていく
↓
5 疲労し硬くなった筋肉を動かさなくなり、より肩こりが酷くなる
このように肩こりは日々の生活の中で悪循環を繰り返していくことで徐々に悪化していくのです。
人は痛い所はなるべく動かさず安静にしてしまいがちですが、それが肩こり悪化を招いていると言えます。
どんな筋肉が肩こりの原因となる?
主に肩こりに関係してくるのは僧帽筋、肩甲挙筋と言われる筋肉です。
どちらの筋肉も肩甲骨に付着しているため、肩甲骨を意識的に動かさないと、これらの筋肉も動かないのです。
ここまでの解説で、なんとなく肩こりと肩甲骨の関係が分かってきたでしょうか?
ここからは実際に肩甲骨を動かしていく方法を紹介していきます。
肩甲骨を動かして肩こり改善するには
ポイントは「肩甲骨はがし」
肩こり改善にはこの「肩甲骨はがし」が重要になってきます。
「はがし」といっても実際にはがすわけではなく、それだけ肩甲骨をダイナミックに動かすということなのでご安心を。
それでは今からでも行える簡単な3つ「肩甲骨はがし」の方法を以下に紹介します。
1
両手を体の後ろで組みます
↓
そのまま背筋を伸ばすように胸をしっかりと張ります
↓
その状態で体を左右に2~3回ひねります
※これを1セットとして、休息しながら3セットほど行いましょう。
2
背筋を伸ばしてまっすぐ立ちます
↓
肘を肩の高さまで挙げて、小さくバンザイをするように手を挙げます
↓
そのまま背中にしわをつくるように両手を後ろに引いていきます
※これを1セットとして、休息しながら3セットほど行いましょう。
3
両手の手のひらと肘がくっつくように体の前で合わせます
↓
ゆっくりと上下に5往復します
↓
次に大きく円を描くように右回り、左回りとそれぞれ5回行います
※これを1セットとして、休息しながら3セットほど行いましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
肩こりと肩甲骨は大きく関係していることが理解していただければ幸いです。
肩甲骨はがしの方法は他にも多数やり方があるため、気になった方はぜひ自分にあったやり方を探してみてください。
日々の肩こりの悩みが少しでも解決できるよう、毎日コツコツと実践していきましょう!
最近息切れや呼吸にやや不安を感じ始めた方は必見。自宅でできる簡単呼吸体操を紹介。
みなさんの中には最近息が切れやすくなった・・長年の喫煙歴があり呼吸が心配・・という方がいらっしゃるのではないでしょうか。
息が切れるのは体力の低下だけが原因ではなく、呼吸方法や体の柔軟性が関係しているのです。
今回は呼吸機能低下の予防にもなる、自宅でできる簡単な呼吸体操を紹介していきます。
呼吸機能が落ちる原因
病気により肺機能が落ちてしまうケース
肺の機能が落ちてしまう病気はいくつかあります。
その代表的なものを紹介していきます。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
もともとは慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。
タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患であり、喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病といえます。
最大の原因は喫煙であり、喫煙者の約20%がCOPDを発症します。
タバコの煙を吸入することによって肺の中の気管支に炎症がおきて、せきやたんが出たり、気管支が細くなることによって空気の流れが低下してしまいます。
また、気管支が枝分かれした奥にあるぶどうの房状の小さな袋である肺胞(はいほう)が破壊されて、肺気腫という状態になると、酸素の取り込みや二酸化炭素を排出する機能が低下します。
肺炎
中でも「特発性間質性肺炎」は大きく肺機能低下に関係します。
間質性肺炎は、肺胞の壁に炎症や損傷が起こり、壁が厚く硬くなるため酸素を取り込みにくくなる病気です。
間質性肺炎の原因は様々ですが、原因不明のものを特発性間質性肺炎と総称します。
症状としては、初期には無症状のことが多く、病状がある程度進行してくると動いた時の息切れや痰を伴わないせきを自覚するのが特徴です。
胸郭周囲の柔軟性が落ちてしまうケース
胸郭とは自分の胸の部分、肋骨がある箇所を想像していただければ大丈夫です。
胸郭と呼吸は大きく関係しており、呼吸を行う際には胸郭が連動して動いています。
呼吸を行う際に胸に手を当てていただければ一緒に動いているのが良く分かると思います。
この胸郭が硬くなっている人は肺に空気を溜めにくく、呼吸しづらくなっているのです。
胸郭が硬くなる原因は様々ですが、上記に挙げた病気の他、加齢や胸郭を動かさないことでも自然と硬くなっていきます。
呼吸機能低下による悪影響
呼吸機能の低下や息切れはそのまま放置していくと以下のような悪循環に陥ってしまいます。
肺機能の低下
↓
息切れが強くなってくる
↓
あまり運動を行わなくなっていく
↓
筋力低下など身体機能が低下していく
↓
息切れの増加
しかし、逆に意識的に呼吸機能の改善を行うことで以下のような好循環へと移行することも可能です。
呼吸体操を行い呼吸が楽になる
↓
日々の体操や散歩が比較的楽に行える
↓
息切れ症状の改善
↓
筋力向上など身体機能がアップする
↓
さらなる息切れ症状の改善
このように好循環へと移行できるよう次の項目から自宅でできる簡単な呼吸方法を紹介していきます。
呼吸体操方法の紹介
肩の上げ下げ
1 両足を肩幅くらいに広げ、まずは背筋をピンとしてリラックスします。
2 鼻から息をゆっくりと吸い、両方の肩を呼吸と一緒にゆっくりあげていきます。
3 さらに息を吸いながら肩を回すように後ろの方へ下げていきます。
4 息を吸いきったらゆっくりと息を吐いていきます。そのとき肩の力を抜きながら最初の姿勢へと戻していきます。
背伸び体操
1 両手を頭の後ろで組み、ゆっくりと息を吸います。
2 ゆっくりと息を吐きながら組んだ腕を上に伸ばし、背伸びをしていきます。
3 首を前に倒して腕を後ろに引きながら息を吐き切ります。
側部のストレッチ
1 片方の手を頭の後ろへ、もう片方の手を腰に当て、息をゆっくり吸います。
2 吸いきったら、ゆっくりと息を吐きながら手を腰に当てた方へ体を倒していきます。
3 息を吐ききったら最初の姿勢へと戻ります。これを同様に反対側でも行います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
普段あまり行うことのない胸郭の運動ですが、これを続けて行うことで柔軟性がアップしていき、呼吸機能の向上にも繋がっていきます。
当たり前に行っている呼吸ですが、意識することで身体機能や呼吸機能の低下予防にもなります。
道具も必要なく、簡単に自宅で行えるのでぜひ実践してみてください。