リハラボ

知っておくと役に立つリハビリの知識を紹介

『すぐ役立つ、失語症の方と話す、コツ!』

脳卒中や事故などの脳の損傷のよる後遺症のために、言葉をつかさどる脳の部分がうまく働かなくなったために、言葉を操る能力に障害が残った状態を失語症といいます。コミュニケーションの道具である言葉を思うように使えなくなるために、日常の何気ない会話も不自由になることもあります。
しかし!失語症であっても失われない能力やよくなる面もあるのです。会話する相手が、①失語症のことを知っておく ②やりとりのコツを知りマスターしておく ことで、失語症の方の力を引き出し、うまくやりとりすることも十分にできるのです。

注意)言葉の不自由な人すべてが失語症というわけではありません。何によって言葉が使いにくくなっているのか、原因を知ることが重要です。<例>失語症、構音障害、失声、認知症、意識障害など・・・

 

失語症の基本知識

以下の問いに○か×をつけてみましょう。
* 失語症は時間をかけて訓練すれば完治する。
 ×:長期間かけての改善は見込めますが、完治は難しいといわれています。

* 失語症の人は声は聞こえていても話の内容が理解できないことがある。
 ○:聴力の問題ではなく、意味の理解が出来ていないことがあります。

* 失語症で話すことが難しい場合には「はい・いいえ」で答えられる質問をするとよい。
○:具体的な答えを言うことが難しくても、yes-noが確実にできることが
多いです。

* 不自然でも一音ずつはっきり区切って「お・げ・ん・き・で・す・か」のように話しかけるほうがよい。
 ×:意味がわかりにくくなるために、かえって伝わりにくくなります。

* 身振りよりもできるだけ言葉を使うよう促す。
 ×:コミュニケーション方法で、使える手段は何でも使うべきです。並行して使うことで伝わりやすさがグンと上がります。

* 失語症の人も手話は理解できている。
 ×:もともと手話を使っていた方でなければ、手話はまったく有効ではありません。

* 言葉が出ないときは50音表の文字盤を指してもらう。
 ×:ほとんどの場合、まったく役にたちません。逆にストレスを与えることになりかねません。

* 言い間違ったときはその場で訂正してあげる。
 ×:時には聞き流し、聞く側が推測することも必要です。

* 説明は、できるだけ詳しくたくさんしてあげる。
 ×:長い話や説明は理解しづらいです。短く端的に、への配慮が必要です。

* こちらの言うことが伝わったかどうか確認することが必要である
 ○:間違って理解していることもあります。

 

失語症の特徴

会話がしにくいというと、話すことが難しくなったのだと思われがちですが、言葉の4種の側面「聞く」「読む」「話す」「書く」に問題があるために、ということがほとんどです。
●「聞く」
耳は聞こえているのに、聞いた言葉の意味がわからないというのが症状です。聴力の問題ではありません!
程度の差こそありますが、失語症のほとんどの方に聞く力の低下がみられます。特に大勢の人が集まっているところで集中して会話を聞き取ることや、よく知らない相手との会話だったりすると、難しさが目立ちます。

●「読む」
目は見えているのに、見た文字や文の意味が理解できなくなるというのが症状です。視力の問題ではありません。
こちらも「聞く」と同様、程度の差がありますが、一般的には仮名文字に比べ、漢字のほうが理解しやすい傾向にあります。漢字は表意文字といって、字を見ただけで大まかな意味をとれることができるのです。

●「話す」
多かれ少なかれ必ず話すことに障害が起こります。
* 言いたい言葉が浮かんでこない
* 思ったことと違う言葉を言う
* 回りくどい言い方をする
* 文章で話すことが難しくなる
* 同じ言葉でも言えたり言えなかったりする
* 前に言った言葉が続いて出てくる
* 口や喉には異常がないのに、発音がたどたどしくなる
* 50音表や手話は使えないことが多い

●「書く」
文字が思い出せなくなります。
「読む」と同様に、仮名よりも漢字のほうが書きやすい傾向があります。自分の名前を書くことから難しい方もいれば、文章まで書くことが出来ても濁点や拗音が抜けたり、助詞を間違えたりする方もいます。

 

失語症の方と話すコツ 

失語症についておおまかに理解できたら、次はそれをもとにコツをつかみましょう!
* 短い文でゆっくりはっきり話す
「り・ん・ご」と区切るのではなく、「りんご・食べよう」等短い文で!
* 表情や身振り、実物や文字を添えて話す
いつもよりやや大げさに!
* 使い慣れた言葉を使う
方言や言い回しなど、慣れ親しんだものがわかりやすい!
* 本人に興味のある話題を選ぶ
もともとの知識が役に立ちます!
* 理解できないときは言い回しを変えて繰り返す
難しい言い方になっていないかチェック!
* 一つの話題が理解されたことを確認してから次の話題に移る
そのほうが会話の流れがスムーズ!
* 話せないときは「はい・いいえ」で答えられる質問をする。
確実な答えを引き出せる!
* 本人の話は辛抱強く聞く
ゆったりした雰囲気のほうが落ち着いて話しやすい!
* 話すことを強いない、誤りを訂正しない
言い間違いは聞き手側が推測する!
無理やり正しく言わせようとしなくて良い!
* うまく反応できたときは一緒に喜ぶ
良い反応が心に残って強化される!
* 子ども扱いしない
大人としての丁寧な対応が大切!

 

まとめ

言葉が話せない、理解できないと、認知症や精神疾患等の他の病気と間違われることもあります。周囲の人が失語症への理解を深めて、会話しやすい環境・雰囲気づくりをすることが大切です。

【参考文献】
失語症の理解とケア  遠藤尚志著  雲母書房 2011