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侮れない!ふくらはぎのストレッチが全身を健康に

はじめに

最近、ふくらはぎの健康が全身の健康や長寿のために重要であるということが言われています。

健康なふくらはぎとは筋肉がしっかりと伸び縮みをするしなやかな状態ですが、比較的大きな筋肉でありながら身体の末端にあるふくらはぎの筋肉が、なぜ全身の健康のために重要なのでしょうか。

今回は、柔軟なふくらはぎになるために必要なストレッチのやり方と効果についてご説明します。

 

ふくらはぎの筋肉とその働き

まず、ふくらはぎについている筋肉についてご説明します。

 

■下腿三頭筋

ふくらはぎの筋肉の中で最も大きい代表的な筋肉で、腓腹筋とヒラメ筋の総称です。

腓腹筋は太ももの骨である大腿骨の下端から始まり、ふくらはぎの膨隆を形成し、アキレス腱となって踵の骨につきます。

腓腹筋の深層にあるヒラメ筋はすねの骨である脛骨と腓骨の後面から始まり、腓腹筋とともにアキレス腱に移行し、踵の骨につきます。

下腿三頭筋はその収縮によって足首を伸ばす(底屈)方向に作用し、歩行やジャンプで地面を強く蹴る際に大きな力を発揮する筋肉です。

腓腹筋とヒラメ筋の最大の違いとして、腓腹筋は膝関節と足関節をまたいでおり膝を曲げることにも作用していますが、ヒラメ筋は足関節にのみ作用する筋肉であることがあげられます。

 

■長母趾屈筋、長趾屈筋、後脛骨筋

ふくらはぎには下腿三頭筋の深層に長母趾屈筋、長趾屈筋、後脛骨筋といった筋があります。

これらの筋はその名前の通り、長母趾屈筋は母趾を屈曲させる(曲げる)、長趾屈筋は第2~5趾を屈曲させる、そして後脛骨筋は足関節を底屈、内反させる筋肉です。

いずれも脛骨の後面から始まって下降していく細長い筋肉なので、一般の方が皮膚の上から触るのは難しいかもしれません。

これらの筋肉は、発揮する筋力は下腿三頭筋と比べると小さいですが、歩行の際に足の裏のアーチ(土踏まず)を形成したり、バランス機能に関わる重要な役割があります。

 

ふくらはぎのストレッチのやり方

■ストレッチとは?

ストレッチは日本語に訳すと「伸張する」という言葉になります。

つまり、筋肉を伸張するのがストレッチということになります。

ストレッチのやり方は大きく関節を動かして筋肉の伸び縮みを繰り返すものや、筋肉を伸張した肢位で静止するものなどいろいろな種類がありますが、健康を目的として柔軟性を高めるために行うストレッチであれば、後者の静的ストレッチがおすすめです。

 

■腓腹筋のストレッチ

ふくらはぎのストレッチの基本となる腓腹筋のストレッチの方法をご紹介します。

1. 壁など体重を支えられるような場所に両手をついて立ち、どちらかの足を一歩後ろに引きます。

2. 後ろに引いた足はつま先が進行方向を向くようにまっすぐ置き、膝を伸ばした状態で踵が浮いてしまわないぎりぎりのところまで前に身体を倒します。

3. その状態で、壁についた手に体重をかけて20~30秒静止します。

4. ふくらはぎの筋肉の伸張感があれば、ストレッチされている証拠です。

 

■ヒラメ筋のストレッチ

下腿三頭筋の中で膝関節をまたいでいる腓腹筋に対し、ヒラメ筋は膝関節には関与せず足関節のみをまたぐ筋肉になります。

その違いを利用して、ヒラメ筋単独のストレッチを行うことができますのでご紹介します。

1. しゃがんだ状態から片足のみ一歩足を前に出して膝を立てた状態にします。

2. 立てた方の足先は進行方向を向くようにまっすぐ置き、そちらの足関節を曲げるようにゆっくりと体重を前に移動させ、踵が浮いてしまう直前の状態で20~30秒静止します。

3. ふくらはぎの下のほうに伸張感を感じれば、ヒラメ筋が伸張されている証拠です。

 

■ストレッチの注意点

ストレッチを行うにあたって注意していただきたい点をご紹介します。

 

1. 筋肉の伸ばしすぎに注意する

ストレッチをした際に、伸張される心地よさや痛気持ちいい感覚があれば問題ありません。しかし、強い痛みがあるのに我慢して続けてしまうと筋肉を損傷してしまうこともあります。

筋肉の柔軟性は日々のストレッチの積み重ねで徐々に獲得できるもので、一朝一夕では得られませんので、早く柔軟になろうと我慢しすぎないように注意してください。

 

2. 反動をつけないようにする

ふくらはぎのストレッチというと反動をつけながら足関節を繰り返し動かすような動きをされる方が多いです。

筋肉をしっかりと伸張させるためには伸張した肢位で一定の時間静止しておかなければいけませんので、反動をつけて動かないように気をつけましょう。

 

3. 関節のつまりに注意する

足関節の変形があったり筋肉やその他の皮下組織が硬くなっていると、ストレッチの肢位をとった際に筋肉の伸張感でなく足関節前方のつまる感じをもたれる方がおられます。

その場合は、ストレッチは適していませんので無理に継続しないようにしてください。
ふくらはぎをマッサージすることに変更したり、整形外科やリハビリ科のある病院を受診して専門家に指導してもらうようにしましょう。

 

ふくらはぎストレッチの効果

それではふくらはぎのストレッチが全身にもたらす効果をご紹介します。

 

■歩行の耐久性向上、疲労軽減

ふくらはぎの筋肉が柔らかくなると足関節の可動域が大きくなります。

そうすることで歩行時に効率よく足関節を動かすことができ、推進力を得やすくなるので疲労を感じにくくなったり連続して歩ける距離や時間が長くなります。

 

■膝、股関節痛の改善

足関節は、ジャンプ着地やランニングの際に最も地面から近いところで衝撃を吸収しています。

足関節の可動域が大きくなるとより衝撃を吸収しやすくなるため、膝関節や股関節への負担が減り、膝関節や股関節痛の予防・改善につながります。

 

■冷え、むくみの改善

ふくらはぎは「第二の心臓」とも言われており、心臓から末梢へ送り出された血液をふくらはぎの筋肉ポンプで末梢から心臓へ戻しています。

ふくらはぎの筋肉が柔軟になり動きがよくなると、ポンプの動きもよくなるので全身の循環がよくなります。

結果として、冷えやむくみの改善につながります。

 

■エコノミークラス症候群の予防

「エコノミークラス症候群」とは、長時間動かない状態が続くことで血の塊である血栓ができやすくなり、血管を詰まらせてしまう状態です。

名前を聞くと、飛行機のロングフライトのみが関係するのかと思われがちですが、長時間のデスクワークや高齢者などが日中に長時間不動でいることもこの原因となります。

定期的にふくらはぎのストレッチやマッサージを行うことで、循環を改善し、エコノミークラス症候群の予防につながります。

 

■美脚効果

多くの女性が憧れるのが、すらっと引き締まったまっすぐな脚ではないでしょうか。

筋肉が凝り固まって柔軟性の低い状態では、ふくらはぎがぽっこりと盛り上がったししゃも足になってしまいますが、しっかりと柔軟性のある状態では引き締まっていながら緩やかな曲線のまっすぐな脚になります。

健康的な美脚を目指すためにもストレッチは重要です。

 

おわりに

今回はふくらはぎのストレッチのやり方と効果についてご説明しました。

一日のうち数分だけ身体のケアに費やすことで全身に対してメリットのあるとても効果的なストレッチです。

三日坊主では効果をなかなか感じられませんので、是非とも継続して行っていただきたいと思います。