大腿骨近位部骨折
大腿骨近位部骨折は高齢者に多く見られる骨折です。
大腿骨を骨折してしまうと歩けなくなったり、寝たきりになったりするリスクが高くなります。
大腿骨近位部骨折は、大腿骨頸部骨折と大腿骨転子部骨折の2つに分類されます。
それぞれの治療を話していきます。
大腿骨頸部骨折とは
骨粗鬆症がある高齢者に多く見られ、股関節の関節内で起きる骨折です。
骨折の中でも骨が癒合しにくい場所になります。
その理由は、関節の中の骨折は新しい骨ができにくく、血行が乏しい場所であることや、力学的に余計なストレスが加わりやすいためです。
受傷機転
転倒による骨折が多いです。高齢者は小さな外力でも骨折します。
若年者も受傷しますが、交通事故や転落など大きな力が加わらないと若年者の骨折は起こりません。
症状
転倒した後から立てなくなります。自力で足を動かすことは難しく、折れた方の足は短くなっています。
合併症
頸部骨折では、合併症として大腿骨頭という股関節を形成する部分が壊死する可能性があります。
治療、手術方法
若年者・高齢者に関わらず、頸部骨折では手術療法が適応になります。
手術は大きく分けてスクリューで折れた骨を止める骨接合術と、折れた大腿骨の骨頭を人工のものに置き換える人工骨頭置換術の2つがあります。
骨接合術は比較的軽症な骨折や若年者が適応になります。
若年者の場合、強い外力を受けて受傷するので骨折もひどい場合が多いです。
そのため、骨の癒合がしにくく、骨頭壊死になる可能性も高いのですが、骨が癒合することを期待して骨接合術が選ばれます。
人工骨頭置換術は、骨折の程度がひどい場合や、70歳以上の高齢者が適応になります。
また骨接合術をした後で骨頭が壊死してしまった場合は再手術として人工骨頭置換術が行われます。
大腿骨転子部骨折
転子部骨折は股関節の外で起きる骨折なので頸部骨折に比べると骨が癒合しやすいです。
しかし、頸部骨折よりも強い外力が加わって折れることや、高齢者の割合が高くなることで全身合併症が多くなり治療が難しい骨折となっています。
受傷機転、症状
基本的には頸部骨折と同じで、転倒による骨折が多いです。
頸部骨折よりも受傷年齢が高い傾向にあり、強い外力が加わって折れるため強い痛みを伴います。
治療、手術方法
転子部骨折では頸部骨折と比べて血行が豊富なため骨の癒合も得られやすいです。
そのため手術のしない保存療法も選択することはできます。
しかし保存療法だと、寝たきりの時間が長くなってしまうため、高齢者はどんどん体力も弱っていき認知症などの合併症も進みやすくなります。
そのため、術後すぐにでも動いていけるように早期離床を図るため手術療法が選択されることがほとんどです。
手術方法はプレートやスクリューで骨をとめる骨接合術が行われます。
ちなみに転子部骨折では頸部骨折のように骨頭が壊死するということはまずありません。
リハビリ
リハビリは術後翌日から始まります。
高齢者の方は寝ている時間が少し長くなるだけでどんどん体力が落ちていき、復帰が難しくなっていきます。
早くからベッドから起きて(早期離床)立位・歩行練習を行うことが、合併症の進行を予防し全身状態の改善を図ることに有効となります。
一般的に、独歩可能な方が杖になる、杖歩行の人が押し車になると1つ低下することが多くなります。
次に、頸部骨折で人工骨頭置換術を行った際に気をつけなければいけないことがあります。
それは股関節の脱臼です。
股関節は元々骨盤の骨と太ももの骨(大腿骨)で構成されています。
この大腿骨を切り取って人工のものに取り換えるため術後は脱臼しやすくなってしまいます。
ただ、いつでも脱臼するというわけではなく脱臼しやすい姿勢があります。
それは内股のような姿勢です。
例を挙げると、お姉さん座りや和式トイレ、靴下を履く動作や床に落ちた物を拾う時などには注意が必要になります。
まとめ
大腿骨近位部骨折について頸部骨折・転子部骨折の特徴をそれぞれ述べていきました。
どちらの骨折も高齢者に多く、認知症や内科的な病気が回復に影響してくるうえ手術が必要になってきます。
そのため術後早期より離床を促し、立位・歩行練習をしていきいかに体力を落とさないようにするか、合併症の進行を予防できるか、ということが受傷前の生活に近づくためには重要になってきます。
また脱臼の予防は本人だけでは理解できない場合もあります。
一緒に暮らしている家族の理解、認識が必要不可欠になってきます。