非特異的腰痛の悪循環パターン
運動器疾患に対する運動療法は理学療法士、理学療法学生、診療報酬面など立場によって難渋する疾患がそれぞれ違うと言われています。
その中でも日本では何年もの間病院へ訪れた患者さんの数が第1位の症状が腰痛になります。
有訴者率
2013年の国民生活基礎調査によると、病気や怪我などで自覚症状がある人は人口千人あたり312.4人となっています。そしてこの割合のことを有訴者率と言います。
有訴者率(人口千人あたり)を男性と女性で分けて見ると、男性が276.8人、女性が345.3人と女性の方が高くなっています。
症状別に見ると、男性では腰痛での有訴受診率が一番多く、次に肩こりとなっています。女性では肩こりが一番多く、次に腰痛となっています。
それだけ男女ともに腰痛の症状を起こしている人が多いということになります。
通院者率においても男女ともに腰痛はベスト5に入ってきます。
腰痛を起こす主な疾患
重篤な疾患
1.脊椎疾患
椎体骨折、転移性脊椎腫瘍、椎間板ヘルニアによる馬尾障害、化膿性脊椎炎
2.循環器疾患
解離性大動脈瘤
3.消化器疾患
胃・十二指腸潰瘍穿孔、急性膵炎
4.泌尿器疾患
尿路結石
重篤でない疾患
1.脊椎疾患
ぎっくり腰、椎間関節症候群、強直性脊椎炎、椎間板ヘルニアによる神経障害
2.婦人科疾患
子宮内膜症、骨盤輪不安定症
3.泌尿器疾患
腎盂腎炎
4.精神・神経内科疾患
ヒステリー、心気症、詐病
腰痛を引き起こす主な疾患は様々ありますが、腰痛の中でも非特異的腰痛と言われる原因不明であるものが85%にも及びます。
この非特異的腰痛は手術を必要としない腰痛に分類されているため、私達セラピストがどのようにアプローチしていくのかが重要になります。
近年の考え方ではこういった人達は精神・神経内科疾患のような心理や精神面の影響を受けている可能性があるということも頭に入れておくべきです。
非特異的腰痛の悪循環
こういった重篤でない腰痛の人の多くは筋に関する障害があると言われています。
筋の障害を持った時の痛みの悪循環としてはいろんなパターンが考えられますが、少なくとも筋に損傷を起こすと、筋膜・筋小胞体が破壊され、シナプス前膜からカルシウムが持続的に放出され、終盤板のアセチルコリンの放出が高まり、シナプス後膜の持続的脱分極が起こることによって、持続的収縮による凝りや固さが起こってしまい、そこで血行障害が起こり、関連痛パターンが生じ、さらに柔軟性が低下し、動作時にまた障害を繰り返すような悪循環に陥ることが問題だと言われています。