リハラボ

知っておくと役に立つリハビリの知識を紹介

パーキンソン病の病態と理学療法について

理学療法士の世界ではメジャーな難病『パーキンソン病

現代の代表的な難病として有名な疾患の一つが『パーキンソン病』です。

進行性で症状が進むことが特徴の疾患ですが、実際にかかわる中でどのようなリハビリをすすめていこうか迷うことも多いでしょう。

今回はそんなパーキンソン病について知っておきたい基礎知識をご紹介していきたいと思います。

 パーキンソン病の原因と病態

まずはパーキンソン病とはどのような原因でおこり、どのような症状が出て、どのような経過をたどるかということについてご紹介していきます。

● 原因、疫学

・概要

中脳黒質のドパミン神経細胞の減少により、神経伝達物質であるドパミンの分泌が不足することで起こる疾患です。

ドパミンはいわば脳から体へ指令を送る際に必要な物質ですので特に運動の調整の部分に障害が出ます。


・原因

遺伝による影響など、様々な視点で研究がされていますが、神経変性の原因はいまだに解明されておらず不明です。

・疫学

10代から80代まで発症する年齢層は幅広いですが、高齢になるほど発症率・有病歴は増加します。

主な症状

パーキンソン病には『4大症状』とも呼ばれる特徴的な症状があります。

・振戦

安静時振戦と呼ばれる、手足の震えが症状として出現します。『安静時』という名のごとくじっとしている時に震えが生じ、動作を行うときには症状が止まることが特徴です。

頸部や顔の筋肉にも同症状が見られることがあります。

・固縮

身体の筋肉の調整が難しくなり、常に力が入ったような状態になり関節の運動が行いづらくなる症状です。

多動で上肢などを動かした際にカクカクと一定の抵抗を感じる歯車様固縮が特徴として見られます。

・無動(寡動)

動作が行いにくく緩慢になり、一つの動作を始めるまでに時間がかかるようになってしまうのが無動(寡動)の症状です。

一般的な日常生活に支障をきたすのももちろん、顔面の筋肉などに症状が出ると、声が小さくなる構音障害や、表情の抑揚がなくなってしまう仮面様顔貌という独特な症状を現します。

・姿勢調節障害、歩行障害

パーキンソン病は体を前かがみにして大きく猫背になるような特有の姿勢をきたしやすい疾患で、歩幅を大きく出すことができない小刻み歩行や、はじめの一歩がなかなか出ないすくみ足歩行などの様々な歩行に関する障害を引き起こします。

パーキンソン病が進行してくるとこの歩行障害により日常生活で転倒や転倒の危険性をきたす場合が多く、それがさらなるADLの低下につながります。

・その他の症状

その他の症状で特徴的なものの一つが自律神経障害です。主な症状としては起立性の低血圧や発汗異常、涙腺や唾液腺の分泌異常、便秘や頻尿などの排泄での問題が挙げられます。

・疾患の経過

またパーキンソン病と似たような症状をきたすものを『パーキンソニズム(症候群)』と言います。これらは薬物性や、脳血管障害の影響などでも発生する症状です。

これらの症状と鑑別するため、パーキンソン病は4つの診断基準に照らし合わされて診断されます。

 

理学療法の方向性と実際

パーキンソン病の主な症状と経過を把握したところで、実際にはどのようなリハビリテーションが行われているのかを確認していきましょう。

パーキンソン病のリハビリで重要なポイントは

1 2次的な障害を予防すること

2 活動量を維持すること

の2点になります。実際にはこれらのポイントに基づき以下のようなリハビリが行われます。

・関節可動域運動

パーキンソン病の代表的な症状で無動や固縮などの特徴がありますが、これらの症状を放置することによって関節の動きが悪くなってしまい症状とは別の2次的な障害を作ってしまう原因になります。

これらを予防する為に頸部、上肢、下肢の関節可動域運動を丁寧に実施し2次的な障害を予防することが重要です。

また体幹の回旋などの動きも低下しやすい為、チェックすることも重要になります「。

・歩行練習

種々の症状によって動作としては歩行に障害をきたし、それが転倒や活動性の低下からくる廃用性の障害を引き起こす原因になります。

歩行練習は積極的に取り入れるようにしましょう。特にパーキンソン独特の症状として歩行の開始時に足が出にくくなるすくみ足という症状が出やすい患者様もいると思います。

そういった方に対しては「1…2…」と自分で声を出しリズムを取ってもらったり、その場で足踏みを何回かしながら足を出したり、床に線を引きそれをまたぐようにして歩くことで踏み出しやすくなる方もいらっしゃいますので、そういった指導も行いながら実施するようにしましょう。(パーキンソン病のすくみ足に対しレーザー光線が出て床に線が出現する杖なども販売されています。)

・筋力の維持、向上

パーキンソン病だけにかかわらず、日常生活を維持する為には一定の筋力を維持する必要性があります。特にパーキンソン病は症状の影響で活動性が低下しやすい為、何らかの方法での筋力維持が重要です。

・呼吸、発声、嚥下のトレーニング

パーキンソン病の進行に伴い、表情筋や頸部の筋肉にも影響が現れ、ものが飲み込みにくなる嚥下障害や、声が小さくなってしまう構音障害がある患者様も少なくありません。
理学療法士は特に頸部や胸郭、表情筋が柔らかく使えるようにコンディショニングを行う必要が有ります。

・日々の運動の指導

理学療法士と関わっている時間だけではなく、日々の日常生活でのリハビリも重要になってきます。できるだけ自宅内や外で歩行する機会を確保すること、特に柔軟性の低下をきたしやすい疾患ですから自宅での関節可動域運動をその人のライフスタイルに合わせて提案、練習をすることも重要です。

まとめ

ここまで一般的なパーキンソン病の基礎知識やリハビリテーションの流れについてご説明してきました。

人によって生活に支障をきたす範囲までに至る時間に差はあるものの、進行性の疾患であることから、在宅の場面においては事前に住宅環境を調整することや家族との連携などを行っていくことも非常に重要な疾患になります。

基本的な治療方法は投薬によるものがほとんどですが、投薬の効き目の時間の関係性で動作の調子の良い時と悪い時に差が生じるウェアリング・オフ現象など日常生活と密接な関係を持つ要因が絡んできます。これらのことから、病院などでのリハビリで実際にかかわっている時間以外の情報も収集し、日常生活の相談をしていくことも重要です。