訪問リハビリにおける疼痛の評価
疼痛の分類
疼痛は発生様式により3つに分類することができます。1つ目は侵害受容性疼痛、2つ目は神経障害性疼痛、3つ目は心因性疼痛(非器質性疼痛)です。
侵害受容性疼痛
侵害受容性疼痛とは、外部または内部から機械刺激や温度刺激などの侵害刺激が加わることにより、侵害受容器が興奮した時に起こります。
代表的な疾患としては、変形性膝関節症、肩関節周囲炎、打撲などがあります。
治療薬としては非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)やアセトアミノフェン、オピオイドなどがあります。
神経障害性疼痛
神経障害性疼痛とは様々な原因によって、末梢神経や中枢神経の損傷または機能異常によって
、神経が異常な興奮をすることで起こります。
代表的な疾患としては、頚椎症や坐骨神経痛、三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害などがあります。
治療薬としてはプレガバリン(リリカ)、三環系抗うつ薬などがあります。
心因性疼痛
心因性疼痛とは身体の組織や神経の損傷がなく、ストレスなど心理的要因によって起こる痛みを指します。
うつ病や解離性障害が痛みの背景にある場合が多いです。
治療薬としてはSNRI、三環系抗うつ薬、NaSSA、SSRIなどがあります。
急性疼痛と慢性疼痛
疼痛は怪我や火傷などによって起こる急性疼痛と数ヶ月から数年続く慢性疼痛があります。
急性疼痛は身体所見として損傷や炎症があるのに対して慢性疼痛は身体所見がないことが多いです。また、急性疼痛の症状としては心拍数の増加、血圧の上昇などがあるのに対して慢性疼痛の症状は疲労や不眠、抑うつ状態に陥っていることもあります。治療薬として急性疼痛は消炎鎮痛薬が有効なのに対し、慢性疼痛は消炎鎮痛薬が無効なことが多いのが特徴です。
疼痛に対する評価
問診
疼痛の評価は定量化が難しいため、細かく評価していく必要があります。そこで心電図式問診術というアセスメント方法を紹介します。心電図式問診術とは心電図の波形に例えられPQRSTのアルファベットを用いたアセスメント方法です。
Provoking Factor=影響因子
どのようなことで痛みが生じるか
Quality=疼痛の性質
どのような痛みか
Region&Radiation=部位や放散の有無
どこが痛むか
Severity=疼痛の程度
痛みの強さはどれくらいか
Time=疼痛の経過
いつから痛むのか、痛みはどれくらい続いているのか
視診
みるべきポイントは表情や手の位置、皮膚の状態、アライメントを確認します。
表情は苦しそうな顔をしているか、手の位置は身体の一部に手を当てて離さないなどをみます。皮膚の状態は発赤や腫脹の有無を確認します。
呼吸数、脈拍数
呼吸数、脈拍数の上昇は疼痛による交感神経優位の状態が考えられます。
触診
熱感、関節水腫、関節の動きを確認します。また、圧痛部位や他動運動・自動運動時の痛みの評価を行います。
基本的動作や日常生活動作の確認
上記の評価で確認できた情報を考慮しながら、利用者さんがどのような動作で疼痛が生じるか確認します。
疼痛治療を行うには適切な知識や技術、また経験も必要となってきます。疼痛の評価をいくら行なっても判断が難しい症状も中には必ずあるかと思います。そのような時は勝手な判断で治療を行わないことが自分にとっても利用者さんにとってもリスク管理に繋がると思います。判断が難しい疼痛の場合にはかかりつけ医に報告し指示を仰ぐ必要があります。