リハラボ

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腰部コンパートメント症候群の病態とその特徴

腰椎背筋群の解剖

腰椎背筋群は胸腰筋膜で覆われており、1つのコンパートメント(筋区画)を形成しています。

 

このコンパートメントに含まれる筋は多裂筋と最長筋・腸肋筋からなる脊柱起立筋で構成されています。

 

下位腰椎では多裂筋がコンパートメントの大部分を占めており、80%に達します。

 

胸腰椎移行部では脊柱起立筋が大部分を占めており、80%に達します。

 

多裂筋は椎間関節の支配枝である脊髄神経後枝内側枝によって支配され、脊柱起立筋は脊髄神経後枝外側枝によって支配されています。

 

コンパートメント症候群とは?

コンパートメント症候群とは筋区画症候群とも呼ばれコンパートメントの内圧上昇により筋や神経の障害や痛みを引き起こすものを言います。

 

コンパートメント症候群と聞くと下肢の骨折後の出血により筋内圧が上昇するものを想像する人もいるかと思いますが、腰部でもコンパートメントの内圧が上昇し痛みを出すことがあります。

 

腰部のコンパートメント症候群はAcute Compartment Syndromeと呼ばれる脊椎手術後などの筋内圧上昇、Chronic Compartment Syndromeと呼ばれる変性後弯による筋内圧上昇が原因のものに分類することができます。

 

Acute Compartment Syndromeは手術や外傷により、筋肉を包んでいる筋膜にメスを入れたり損傷したりすることによって、筋膜が瘢痕化し硬くなる訳です。

 

そうすることによって、筋膜の伸張性が失われ、筋肉が収縮し外に押す力と筋膜が外から押す力が拮抗し合い筋内圧が高まります。

 

そして、筋内圧が高まることにより、筋肉の中を流れている静脈を圧迫し始めます。

 

すると静脈は流れなくなり、半透膜である静脈の膜から周りの組織に血漿が漏れ出します。

 

そうすると更に筋肉の中は水浸しになり、筋内圧が上昇するという負のスパイラルに陥ります。

 

Chronic Compartment Syndromeは想像がつくように高齢の方に多く腰椎の前弯減少によるものが原因になります。

 

正常な方とコンパートメント症候群の方の違いは、コンパートメント症候群の方は立っているだけでも筋内圧が上昇します。

 

また、コンパートメント症候群の方は前屈姿勢や前で物を持った状態でも正常の方に比べて筋内圧が上昇しやすいです。