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今はどのような状態?脳出血の麻痺と5つのステージの確認方法

はじめに

脳出血の麻痺には、「麻痺の種類」と「ステージ」があります。ステージという言葉は聞きなれないかと思いますが、麻痺の回復過程を6段階で表した経過の指標です。数字はⅠ(重度)~Ⅵ(軽度)と、数字が増えるほど今までの動きに近くなってきます。今回は、この2つについてどのような状態かをお伝えします。

 

麻痺の種類

 麻痺とは、一般的には手足などの四肢の運動機能や感覚が鈍り、もしくは完全に失われた状態を指します。脳出血の麻痺には弛緩性麻痺と痙性麻痺との2種類に分けられますが、症状の出現は様々です。発症直後は弛緩していることが多いですが、時間の経過と共に少しずつ変化のある時、変化が難しい時などは脳出血を起こした場所や大きさ、処置までの早さなどにより異なります。

 

 <弛緩性麻痺(しかんせいまひ)>

・身体の力が抜けた状態で、ダラーンとしています。筋の筋緊張や反射の反応が弱く、筋委縮が起こりやすいため疲れやすくなります。特に肩関節は脱臼しやすくなるため、腕や足の位置に注意が必要です。(肩関節は前に抜けやすく、股関節は後ろに抜けやすいと言われています。)

 

 <痙性麻痺(けいせいまひ)>

・麻痺の起こった筋肉の緊張が高まり、つっぱった状態が続くことです。そのため、弛緩性麻痺とは異なり反射が強く出過ぎる、動かそうと痛みが出やすくなります。(※個人差あり)また、筋緊張が長く続くと関節が固くなり、曲げ伸ばしの動きが難しくなることがあります。

 

麻痺のステージ

 脳出血などの脳血管障害の場合、一般的にまったく動かせない状態から「共同運動」と呼ばれる運動ができるようになって、だんだん元の動きに近づいていくという回復過程をたどります。この回復過程を“ステージ”とよびⅠ~Ⅵ段階で表します。しかし、身体全体が同じように回復する訳ではないため「手、上肢、下肢」とそれぞれの経過を確認していきます。

 
 
 Ⅰ:ブラブラしてまったく動かせない

 Ⅱ:何かのはずみで“勝手に(反射的に)”動いてしまう

 Ⅲ:共同運動ならできる(自分で動かせるが、決まったパターン)

 Ⅳ:少しは分離した(別々の)動きができる

 Ⅴ:かなり分離した(別々の)動作ができる

 Ⅵ:正常に近い動作ができる

 

 

<ステージⅠ>

弛緩期(しかんき)と呼ばれ、筋肉が全く動かない重度の麻痺です。肩関節が脱臼や亜脱臼が起こりやすく、寝る時などに手を下へひかないように注意が必要です。

・手:「グー」ができない

・上肢:全く動かない(ブラブラで軟らかい)

・下肢:全く動かない

 

<ステージⅡ>

 痙性期(けいせいき)と呼ばれ、筋肉がつっぱってくる時期のためくしゃみをした瞬間に腕があがったりします。動かそうとする動作の筋肉の収縮に触れることができます。

・手:ほとんど動かない

・上肢:ほとんど動かない(腕がカチカチでかたい)

・下肢:ほとんど動かない

 

<ステージⅢ>

 自分で動かせますが、決まったパターンでしか動かせない時期です。上肢は曲げる動きが、下肢では伸ばす動きが強く出ます。

・手:「グー」は出来るが「パー」ができない

・上肢:麻痺した腕も上がるが、十分には上がらない(脇が開き、肘が曲がる)

・下肢:麻痺した足も少し上がるが、

座った姿勢では真ん中を保つことが難しくが外へ倒れる

<ステージⅣ>

 1つ1つの関節を独立して動かす「分離動作(ぶんりどうさ)」が少しだけ行える時期です。わずかですが、思うように手や上肢・下肢が動くようになってきます。

・手:指を少し開くことができたり、わずかに物をつまめる

・上肢:腕を前に上げたり、手を腰のあたりにつくことができる

・下肢:座った姿勢で膝を90°に曲げたり、足首を上に上げることができる

 

<ステージⅤ>

 分離動作がかなりできるようになる段階です。元の動きに近い動作が可能となってきます。

・手:色々なつまみ動作や「グー」「パー」が行える

・上肢:腕を麻痺のない手と同じ高さまで上げられる

・下肢:膝の曲げ伸ばしや立って足を前後に動かすことができる

 

<ステージⅥ>

 麻痺の影響をほとんど受けず、正常に近い動作が行えるようになります。(例えば、ごはんを食べる時にお碗を持って箸で食べるなど。)

・手:全運動可能(「チョキ」も行える)

・上肢:全運動可能

・下肢:全運動可能

 

まとめ

 いかがでしたか?ひと言で「麻痺」と言っても、種類やステージがあります。人によっては「だらんとした状態」,「肘がぐっと曲がった状態」など色々想像されると思いますが、どの種類も起こりえます。そして、先ほどにも述べましたが麻痺のステージ(程度)は“手・上肢・下肢でステージが違う”ことが良くあります。また、これらの症状だけでなく目に見えない「失語」や「感覚障害」,「高次機能障害」なども合併していることが多いです。そのため、「どの動きが出来るから、おおよそこのステージ」という指標にして頂けたらと思います。