リハラボ

知っておくと役に立つリハビリの知識を紹介

これだけは知っておきたい腰痛の原因と対処法

はじめに

腰痛というのは、医療技術がかなり進んだ世の中になっても、仕事上でおこる障害の6割を占めていて、この比率は昔から全く変わっていないのです。少しぐらい改善されてもいいと思うのですが、そうではありません。急に腰痛になって、しばらくしても治らない、仕事も休みがちになってしまう、ずっと働いていられるのかな?この先の生活はどうなってしまうのだろう?と人生を不安にさせてしまいます。働く人たちを苦しめ、生産性を著しく低下させてしまう要因となっているのです。今回はそんな腰痛に対しての対処法を、リハビリの専門職である理学療法士としての立場からお伝えしていきます。

 

腰痛の基礎知識

腰痛のほとんどは原因がわからない!

まず腰痛の基礎知識から始めたいと思います。実は日本人の約8割が腰痛を経験するといわれています。そして医療機関でレントゲンやMRIなどの画像診断をしてもらう訳なのですが、しっかりと原因はコレだと分かる腰痛はわずか15%程度で、残りの85%はよく分らないけど、腰が痛いということになります。原因がわからないなんて少し怖い気もしますが、大抵は1ヶ月から2ヶ月ぐらいで治るものが多いというデータがあります。また、原因が分かる腰痛を少し専門的な言葉で言うと「特異的腰痛」といい、分らない腰痛を「非特異的腰痛」といいます。これらの腰痛が3ヶ月以上続いて長引いてしまうと、完治しにくく困ったことになりやすくなります。

 

腰痛が長引いてしまう原因とは?

では長引いてしまう原因とは何なのか?これには「体を動かすことを恐れ、腰痛とうまく付き合うのが下手」という方は腰痛が長引きやすい傾向があります。世界各国の腰痛診療のスタンダードでは、腰痛が起こった場合は3日以上の安静はNG、痛みの範囲内で動いた方が良いとされています。様々な研究結果から3日以上安静にした人の方が、普段動いていた人よりもその後の経過が悪いということがわかっています。
また脳には本来、痛みを感じたらそれを抑える物質が自動的に出るという、生まれつき誰にでも備わっている鎮痛機構があります。しかし不安・恐怖・不快などの負の感情、すなわちメンタルの問題によって本来ある鎮痛機構が正常に機能しなくなっている人も多いということも最近の研究で分かってきています。そのため、「精神的なストレス耐性が低い」方も腰痛が長引きやすいといわれています。
腰痛が発症してしまい痛みの体験をした後に、励ましや正しい情報を得ることができず、負の感情だけが溜まってしまうと、痛みの負のループに陥り、抜け出せなくなってしまう危険性があるということです。「病は気から」というのはよく言ったもので、少し楽観的にとらえるぐらいで丁度いいということです。

 

レッド・フラッグな腰痛

次はレッド・フラッグ「危険な腰痛」についてです。これはなるべく早く医療機関で対処した方が良い部類の腰痛になります。その兆候として、レッド・フラッグサインというのですが、「安静時でも痛みが引かない、動作による痛みの差がない(どんな動きをしても痛い)、痛みやしびれが強くなっている、胸の痛み・体重の減少・発熱が伴っている」などがあります。これには、悪性腫瘍・感染症・炎症性疾患・骨折などの重大な病変が隠されている可能性があります。もし腰の痛みと共にこういった症状がある場合は早めの受診をお勧めします。ちなみにこれは原因が特定できる15%の特異的腰痛に含まれるので、医療機関での診察や画像診断が有効になります。したがって裏を返すと、約85%の腰痛というのは特に病気はなく、筋力・体力を落とさないためにも、早めに動いた方がいいということなのです。

 

腰痛の原因

姿勢と生活習慣

ここからは腰痛の原因についてのお話になります。よく「姿勢を良くしましょう!」という話を巷でよく聞きますが、大抵の人は猫背だったり、腰が反ってしまっていたり、背骨が真っ直ぐになり過ぎている方がほとんどです。しかしこうした姿勢が腰痛に繋がりやすいということをまず念頭に置いておいて下さい。
ダメな姿勢になってしまう原因とは、例えば猫背で腰が反っている方がいるとします。想像して頂くと、首や頭は前に出て、背中は丸まり、お腹が前に出て腰が反りかえっているような姿勢となります。こうした姿勢は、背中を丸めて机に向かっていたり、腰を反らせて物を持ち上げていたり、うつ伏せで長時間過ごしていたりする習慣が普段からある方に多いです。つまり普段の生活習慣が悪い姿勢の原因になっているということなのです。

 

筋肉のアンバランス

そして悪い姿勢は筋肉のアンバランスというものを生じさせます。悪い姿勢をしていると筋肉が短くなる所、逆に引き伸ばされて長くなってしまう所が出てきます。これが筋肉のアンバランスになります。筋肉は正常な長さでないとうまく力を発揮できません。つまり短すぎても、長すぎてもダメということです。そして筋肉は皆さんご存知のように体の関節を動かしている動力源です。普段の生活で悪い姿勢をしている事により、こうした筋肉のアンバランスが生じていると、本来の正常な関節の動きを狂わせて、関節自体やその周囲にある部分にストレスをかけてしまいます。それが繰り返される事により痛みが出てきて、腰痛という状態に陥ります。もう少し話を広げると、悪い姿勢によって筋肉のアンバランスは体中で起こってくるので腰痛だけではなく、その他の身体のトラブルとして訴えが多い、首・肩・膝周りの痛みの原因にもなります。

 

腰痛の対処法

では腰痛の対処法に関しまして、まず「痛みを怖がらない」ということです。痛みを怖がり安静にしてしまうデメリットはかなり大きいです。また「運動・ストレッチ」もとても大切です。先ほど姿勢と腰痛の関係でもお話ししました、腰痛になりにくい体を作るためには、継続的な運動が大事です。さらに、運動には内因性オピオイド、いわゆる脳内麻薬です、この分泌を増加させて痛みを和らげてくれる効果もあります。加えて、先ほどお話しした脳に元々備わっている鎮痛機構も働きやすくなります。つまり、継続的な運動習慣は腰痛になりにくい体と同時に、痛みに強い「脳みそ」を作る事にもつながります。
次に「腰にやさしい体の使い方を身に付ける」ことも重要です。腰痛の原因は筋肉のアンバランスによって、体にかかる繰り返しのストレスでありますので、腰に負担がかかるような動作方法は極力避けた方が良いことになります。地味ですが非常に効果がある対策になります。あとはレッド・フラッグサインのような心配な兆候がある場合は、なるべく早く診察を受けるようにして下さい。そして一番重要なことは、「腰痛は自分でコントロールできる」ということです。

 

まとめ

「腰痛には運動やストレッチが大事」とても当たり前に聞こえますが、その当たり前を継続できずに腰痛を悪化させてしまう方が数多くいます。その要因としてはメンタル面の問題も大きく関わってきます。実際の運動やストレッチの方法に関しては、インターネットで検索できるもので十分効果があると思います。肝心なのは、腰痛と上手に付き合うことです。「腰痛は自分自身でコントロールできる!しなくてはいけないのだ!!」という能動的な気持ちが腰痛予防の第一歩となることを忘れないでください。