リハラボ

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糖尿病患者にフットケアが必要な理由とのその方法

はじめに

糖尿病はインスリン代謝性障害を起因とする成人病です。糖尿病患者数はその予備軍を含めると2,000万人を超えるという統計が出ており、世界的にみると11人に1人は糖尿病だと言われています。
糖尿病の一番恐ろしいのは、その合併症だとされており、糖尿病の慢性合併症として有名なのは、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性ニューロパチー、梗塞などが挙げられます。これらは糖尿病が引き起こす細小血管障害、末梢神経障害がその主体にあります。今回は合併症の中でも、下肢の末梢血管障害(血管閉塞)として起こる潰瘍や壊疽を予防する「フットケア」という考え方についてまとめていきたいと思います。

 

糖尿病患者にフットケアが必要な理由

フットケアとは足部の痛み・浮腫・違和感などを緩和する処置全般を意味します。これを重要視する理由としては、足部の潰瘍や壊疽が進行してしまうと、最悪のケースは切断という選択枝しかなくなってしまうからです。(壊疽とは足部の傷などから感染し、皮下組織・骨の腐敗をきたす症状)

 

潰瘍・壊疽の原因

糖尿病の足部潰瘍や壊疽が形成される要因として、まず糖尿病性ニューロパチーによる知覚消失があります。足をぶつけるなどしても痛みを認識できないため、足部の損傷に気付きません。知覚消失が存在している足部に様々な外的な要因が関与して潰瘍形成していってしまいます。外的な要因の例としては、靴の適合不良、胼胝形成、熱傷、外傷、爪や皮膚病変などがあげられます。そしてさらに高血糖の状態は、血液中の白血球の働きが低下し、易感染性や創部治癒の遷延を引き起こします。こうして損傷した部分の深部感染や虚血などにより壊疽に発展し切断に至るケースがあります。
糖尿病性ニューロパチーと末梢血管障害は単独でも強力な危険因子ですが、多くはこうして複合して発生し、さらに重篤な状態を引き起こしかねない要因となります。

 

フットケアの実際

セルフモニタリング

フットケアの中でまずやることは、足部の状態をよく観察することだと言われています。潰瘍や壊疽の予防は早期発見・早期治療が重要なので、神経障害が合併している場合は特に観察することが大切になってきます。また足部の清潔保持・保護(靴下を使用するなど)などのセルフケアも効果的です。足部の異常を見つけた場合は、すぐにフットケア外来などの専門外来を受診することが肝要です。
 足部の観察で清潔・傷の有無の他にチェックしておいた方が良いポイントは、足部の温度です。皮膚温の上昇は炎症の前駆症状と捉えられています。足部の皮膚温度をセルフモニタリングした場合、著明に潰瘍の再発率が減ったという研究結果があり、その重要性が示されています。

 

靴の選定・装具療法

セルフモニタリングやケアと並行して行うべきなのが、歩行時の足部にかかる圧力の軽減です。まずは自分の足に合った靴を選定することが大切です。靴の不適合による靴擦れは潰瘍発生要因の40%を占めています。靴の適合指導が足病変予防には重要だと言われています。また足部にかかる圧力を軽減する靴形装具やオーダーメイドのインソールの利用も有効です。これらは圧力を軽減するだけではなく足部の機能的アーチの保護に寄与し、足部潰瘍の発生率を下げる効果があります。

 

エクササイズについて

足部機能の維持のためにもエクササイズが重要ですが、過剰なエクササイズは潰瘍発生の要因とも成り得ます。ここではエクササイズの注意点を述べていきたいと思います。適切な運動をしていくには、足部の状態をしっかりと把握してからになります。ここでも皮膚温度が重要で通常の皮膚温より2.2℃の上昇が2日連続でみられた場合、通常の皮膚温に戻るまで歩行量を減少させた方がよいとされています。リスク管理をしながら荷重を伴う筋力トレーニングやバランス練習、歩行運動などのホームプログラムを実施した場合、1日の歩行量の減少が抑制され、廃用症候群の予防という観点での活動量への介入は有効であり、足部潰瘍形成率にも影響もないとされています。

 

まとめ

いかがだったでしょうか?糖尿病は入院患者さんにおいて非常によく目にする合併症です。日頃から運動療法による低血糖症状の発生には注意をしていますが、フットケアに関しては見落とてしまっているセラピストも多いかと思います。入院中では医療スタッフの観察の目がありますが、重要なのは退院してから患者さん自ら足部の状態をチェックしていけるように入院中から指導していくことです。そのためにはフットケアに関する知識を身に付けて、その重要性を伝えられるようにしておくことも糖尿病のリハビリにおいては大切なことだと思います。

参考資料 糖尿病 理学療法診療ガイドライン