リハラボ

知っておくと役に立つリハビリの知識を紹介

膝の痛みの原因を徹底解説!

はじめに

膝の痛みを引き起こす疾患として、国民の5人に1人は症状の兆候があり、言わば国民病とも呼ばれている「変形性膝関節症」(以下、膝OA)。膝OAをはじめとする関節疾患は、介護保険における要支援や軽度要介護者になる原因として注目されております。日常の診療でよく目にする疾患ではありますが、膝の痛みが起こる原因を正しく患者さんに伝えていることができていますか?理学療法士として、アプローチ対象となることが多い関節疾患だからこそ、もう一度きちんと病態を整理しておきましょう。

 

膝OAの発生要因

膝OAの簡単な疫学として、膝関節の変性が進行する原因を特定できない1次性のものがほとんどで、男女比は1:4で女性に多く、内側型(膝内反変形:O脚)が90%と大半を占めています。この1次性膝OAの発生要因としては、まず年齢(50歳以上)、性別(女性)、遺伝的要素、肥満などの生物的素因があります。これに加えて、膝関節の損傷につながる力学的負荷を生み出す、バイオメカニクスの問題が加わり、原因をより複雑化させています。そのためはっきりとした発生の原因が特定できないのです。

 

Kellgren-Lawrence分類(KL分類)について

膝OAの診断の1つに、レントゲン画像から判別するKellgren-Lawrence分類(以下「KL分類)があります。変性の進行度によってGrade0~Ⅳまであり、日常的によく使われる分類ではありますが、臨床症状との相関は低いです。レントゲン上では明らかに変形が進んでいるからといって、その患者さんが必ずしも膝の痛みを訴えているとは限りません。またその逆で、変形は進行していないが膝に強い痛みがあるケースもあります。つまりKL分類だけでは痛みの原因を判断するには情報量が足らず、問診やストレステストなどを組み合わせて推論していく必要があります。

 

痛みが発生するメカニズム

患者さんに対して「膝が痛いのは軟骨がすり減って骨と骨がぶつかって痛い」と説明していませんか?勘違いしやすいですが、その説明は間違いです。膝関節の解剖学書を参考にして頂ければわかりますが、関節面には強い痛みを引き起こす骨膜はなく、力学的負荷がたとえ骨まで達したとしても、痛みを伝える神経細胞は存在しないので骨と骨がぶつかって痛いということはありません。
痛みが発生する一番の原因は、滑膜の炎症だと言われています。関節軟骨に対する力学的負荷が軟骨の変性と分解を促す酵素を産生し、軟骨代謝の異常を引き起こします。この代謝異常の過程で、滑膜の炎症を引き起こし痛みの原因となります。また破壊された関節軟骨が遊離し、滑膜を刺激する事でも強い痛みが生じることがあります。
そして炎症を繰り返していく事によって、関節軟骨と関節包内側を覆う滑膜の変性が相まって、半月板や靭帯・筋を含む関節構成体すべての退行性変化が進みます。そうなると関節由来だけではなく、表在の組織が痛みを複雑化していきます。

 

膝内反モーメントと軟骨変性

痛みが発生するトリガーとなるのは、関節軟骨への過度な力学的負荷だということはご紹介しました。加えて日本では内側型膝OAが大半を占めるため、膝内反変形による内反モーメントが問題となります。この膝内反モーメントの大きさを決める因子は、床反力の大きさと膝関節・重心線間の距離になります。そのためアプローチの方向性としては、減量指導やアライメントの修正、膝内反モーメントから膝関節も守る筋力をつけることが挙げられます。

 

膝の痛みの鑑別

膝の痛みを訴えている患者さんを目の前にしたら、最初に何を行うべきなのでしょうか?それはリハビリ、すなわち運動療法を行ってよいのかどうかを判断することです。これから治療を展開していく前に必ず確認しなければ、治療どころか症状を悪化させてしまうことになりかねないので、重要な評価になります。
順を追って説明しますと、まず問診で炎症性の痛みなのか、力学的負荷が痛みの原因になっているのかを判断します。
具体的には①「寝ている時や座っている時に痛いですか?」
②「立ち上がりや階段の時に痛いですか?」
③「歩いている時痛いですか?」
①で「はい」ならば、炎症性の痛みが疑われます。鑑別診断としては膝蓋跳動テストを実施し、関節内に水腫の兆候がないか確認します。②で「はい」ならば、膝蓋大腿関節の痛みが疑われます。その部位の圧痛で鑑別できます。③で「はい」ならば、大腿脛骨関節の痛みが疑われます。やはりその部位の圧痛で鑑別できます。

 

まとめ

膝OAを起因とする膝関節の痛みについて解説してきました。患者さんが痛みに関する正しい情報を知ることは、アドヒアランス(患者さんが提示された治療法を理解し、主体的にその治療法に取り組んでいくこと)の観点から、リハビリを進める上で非常に重要です。その膝の痛みはどういうものなのかを患者さんに説明し、納得してもらうことが最良のリハビリの第一歩となるはずです。

『すぐ役立つ、失語症の方と話す、コツ!』

脳卒中や事故などの脳の損傷のよる後遺症のために、言葉をつかさどる脳の部分がうまく働かなくなったために、言葉を操る能力に障害が残った状態を失語症といいます。コミュニケーションの道具である言葉を思うように使えなくなるために、日常の何気ない会話も不自由になることもあります。
しかし!失語症であっても失われない能力やよくなる面もあるのです。会話する相手が、①失語症のことを知っておく ②やりとりのコツを知りマスターしておく ことで、失語症の方の力を引き出し、うまくやりとりすることも十分にできるのです。

注意)言葉の不自由な人すべてが失語症というわけではありません。何によって言葉が使いにくくなっているのか、原因を知ることが重要です。<例>失語症、構音障害、失声、認知症、意識障害など・・・

 

失語症の基本知識

以下の問いに○か×をつけてみましょう。
* 失語症は時間をかけて訓練すれば完治する。
 ×:長期間かけての改善は見込めますが、完治は難しいといわれています。

* 失語症の人は声は聞こえていても話の内容が理解できないことがある。
 ○:聴力の問題ではなく、意味の理解が出来ていないことがあります。

* 失語症で話すことが難しい場合には「はい・いいえ」で答えられる質問をするとよい。
○:具体的な答えを言うことが難しくても、yes-noが確実にできることが
多いです。

* 不自然でも一音ずつはっきり区切って「お・げ・ん・き・で・す・か」のように話しかけるほうがよい。
 ×:意味がわかりにくくなるために、かえって伝わりにくくなります。

* 身振りよりもできるだけ言葉を使うよう促す。
 ×:コミュニケーション方法で、使える手段は何でも使うべきです。並行して使うことで伝わりやすさがグンと上がります。

* 失語症の人も手話は理解できている。
 ×:もともと手話を使っていた方でなければ、手話はまったく有効ではありません。

* 言葉が出ないときは50音表の文字盤を指してもらう。
 ×:ほとんどの場合、まったく役にたちません。逆にストレスを与えることになりかねません。

* 言い間違ったときはその場で訂正してあげる。
 ×:時には聞き流し、聞く側が推測することも必要です。

* 説明は、できるだけ詳しくたくさんしてあげる。
 ×:長い話や説明は理解しづらいです。短く端的に、への配慮が必要です。

* こちらの言うことが伝わったかどうか確認することが必要である
 ○:間違って理解していることもあります。

 

失語症の特徴

会話がしにくいというと、話すことが難しくなったのだと思われがちですが、言葉の4種の側面「聞く」「読む」「話す」「書く」に問題があるために、ということがほとんどです。
●「聞く」
耳は聞こえているのに、聞いた言葉の意味がわからないというのが症状です。聴力の問題ではありません!
程度の差こそありますが、失語症のほとんどの方に聞く力の低下がみられます。特に大勢の人が集まっているところで集中して会話を聞き取ることや、よく知らない相手との会話だったりすると、難しさが目立ちます。

●「読む」
目は見えているのに、見た文字や文の意味が理解できなくなるというのが症状です。視力の問題ではありません。
こちらも「聞く」と同様、程度の差がありますが、一般的には仮名文字に比べ、漢字のほうが理解しやすい傾向にあります。漢字は表意文字といって、字を見ただけで大まかな意味をとれることができるのです。

●「話す」
多かれ少なかれ必ず話すことに障害が起こります。
* 言いたい言葉が浮かんでこない
* 思ったことと違う言葉を言う
* 回りくどい言い方をする
* 文章で話すことが難しくなる
* 同じ言葉でも言えたり言えなかったりする
* 前に言った言葉が続いて出てくる
* 口や喉には異常がないのに、発音がたどたどしくなる
* 50音表や手話は使えないことが多い

●「書く」
文字が思い出せなくなります。
「読む」と同様に、仮名よりも漢字のほうが書きやすい傾向があります。自分の名前を書くことから難しい方もいれば、文章まで書くことが出来ても濁点や拗音が抜けたり、助詞を間違えたりする方もいます。

 

失語症の方と話すコツ 

失語症についておおまかに理解できたら、次はそれをもとにコツをつかみましょう!
* 短い文でゆっくりはっきり話す
「り・ん・ご」と区切るのではなく、「りんご・食べよう」等短い文で!
* 表情や身振り、実物や文字を添えて話す
いつもよりやや大げさに!
* 使い慣れた言葉を使う
方言や言い回しなど、慣れ親しんだものがわかりやすい!
* 本人に興味のある話題を選ぶ
もともとの知識が役に立ちます!
* 理解できないときは言い回しを変えて繰り返す
難しい言い方になっていないかチェック!
* 一つの話題が理解されたことを確認してから次の話題に移る
そのほうが会話の流れがスムーズ!
* 話せないときは「はい・いいえ」で答えられる質問をする。
確実な答えを引き出せる!
* 本人の話は辛抱強く聞く
ゆったりした雰囲気のほうが落ち着いて話しやすい!
* 話すことを強いない、誤りを訂正しない
言い間違いは聞き手側が推測する!
無理やり正しく言わせようとしなくて良い!
* うまく反応できたときは一緒に喜ぶ
良い反応が心に残って強化される!
* 子ども扱いしない
大人としての丁寧な対応が大切!

 

まとめ

言葉が話せない、理解できないと、認知症や精神疾患等の他の病気と間違われることもあります。周囲の人が失語症への理解を深めて、会話しやすい環境・雰囲気づくりをすることが大切です。

【参考文献】
失語症の理解とケア  遠藤尚志著  雲母書房 2011

侮れない!ふくらはぎのストレッチが全身を健康に

はじめに

最近、ふくらはぎの健康が全身の健康や長寿のために重要であるということが言われています。

健康なふくらはぎとは筋肉がしっかりと伸び縮みをするしなやかな状態ですが、比較的大きな筋肉でありながら身体の末端にあるふくらはぎの筋肉が、なぜ全身の健康のために重要なのでしょうか。

今回は、柔軟なふくらはぎになるために必要なストレッチのやり方と効果についてご説明します。

 

ふくらはぎの筋肉とその働き

まず、ふくらはぎについている筋肉についてご説明します。

 

■下腿三頭筋

ふくらはぎの筋肉の中で最も大きい代表的な筋肉で、腓腹筋とヒラメ筋の総称です。

腓腹筋は太ももの骨である大腿骨の下端から始まり、ふくらはぎの膨隆を形成し、アキレス腱となって踵の骨につきます。

腓腹筋の深層にあるヒラメ筋はすねの骨である脛骨と腓骨の後面から始まり、腓腹筋とともにアキレス腱に移行し、踵の骨につきます。

下腿三頭筋はその収縮によって足首を伸ばす(底屈)方向に作用し、歩行やジャンプで地面を強く蹴る際に大きな力を発揮する筋肉です。

腓腹筋とヒラメ筋の最大の違いとして、腓腹筋は膝関節と足関節をまたいでおり膝を曲げることにも作用していますが、ヒラメ筋は足関節にのみ作用する筋肉であることがあげられます。

 

■長母趾屈筋、長趾屈筋、後脛骨筋

ふくらはぎには下腿三頭筋の深層に長母趾屈筋、長趾屈筋、後脛骨筋といった筋があります。

これらの筋はその名前の通り、長母趾屈筋は母趾を屈曲させる(曲げる)、長趾屈筋は第2~5趾を屈曲させる、そして後脛骨筋は足関節を底屈、内反させる筋肉です。

いずれも脛骨の後面から始まって下降していく細長い筋肉なので、一般の方が皮膚の上から触るのは難しいかもしれません。

これらの筋肉は、発揮する筋力は下腿三頭筋と比べると小さいですが、歩行の際に足の裏のアーチ(土踏まず)を形成したり、バランス機能に関わる重要な役割があります。

 

ふくらはぎのストレッチのやり方

■ストレッチとは?

ストレッチは日本語に訳すと「伸張する」という言葉になります。

つまり、筋肉を伸張するのがストレッチということになります。

ストレッチのやり方は大きく関節を動かして筋肉の伸び縮みを繰り返すものや、筋肉を伸張した肢位で静止するものなどいろいろな種類がありますが、健康を目的として柔軟性を高めるために行うストレッチであれば、後者の静的ストレッチがおすすめです。

 

■腓腹筋のストレッチ

ふくらはぎのストレッチの基本となる腓腹筋のストレッチの方法をご紹介します。

1. 壁など体重を支えられるような場所に両手をついて立ち、どちらかの足を一歩後ろに引きます。

2. 後ろに引いた足はつま先が進行方向を向くようにまっすぐ置き、膝を伸ばした状態で踵が浮いてしまわないぎりぎりのところまで前に身体を倒します。

3. その状態で、壁についた手に体重をかけて20~30秒静止します。

4. ふくらはぎの筋肉の伸張感があれば、ストレッチされている証拠です。

 

■ヒラメ筋のストレッチ

下腿三頭筋の中で膝関節をまたいでいる腓腹筋に対し、ヒラメ筋は膝関節には関与せず足関節のみをまたぐ筋肉になります。

その違いを利用して、ヒラメ筋単独のストレッチを行うことができますのでご紹介します。

1. しゃがんだ状態から片足のみ一歩足を前に出して膝を立てた状態にします。

2. 立てた方の足先は進行方向を向くようにまっすぐ置き、そちらの足関節を曲げるようにゆっくりと体重を前に移動させ、踵が浮いてしまう直前の状態で20~30秒静止します。

3. ふくらはぎの下のほうに伸張感を感じれば、ヒラメ筋が伸張されている証拠です。

 

■ストレッチの注意点

ストレッチを行うにあたって注意していただきたい点をご紹介します。

 

1. 筋肉の伸ばしすぎに注意する

ストレッチをした際に、伸張される心地よさや痛気持ちいい感覚があれば問題ありません。しかし、強い痛みがあるのに我慢して続けてしまうと筋肉を損傷してしまうこともあります。

筋肉の柔軟性は日々のストレッチの積み重ねで徐々に獲得できるもので、一朝一夕では得られませんので、早く柔軟になろうと我慢しすぎないように注意してください。

 

2. 反動をつけないようにする

ふくらはぎのストレッチというと反動をつけながら足関節を繰り返し動かすような動きをされる方が多いです。

筋肉をしっかりと伸張させるためには伸張した肢位で一定の時間静止しておかなければいけませんので、反動をつけて動かないように気をつけましょう。

 

3. 関節のつまりに注意する

足関節の変形があったり筋肉やその他の皮下組織が硬くなっていると、ストレッチの肢位をとった際に筋肉の伸張感でなく足関節前方のつまる感じをもたれる方がおられます。

その場合は、ストレッチは適していませんので無理に継続しないようにしてください。
ふくらはぎをマッサージすることに変更したり、整形外科やリハビリ科のある病院を受診して専門家に指導してもらうようにしましょう。

 

ふくらはぎストレッチの効果

それではふくらはぎのストレッチが全身にもたらす効果をご紹介します。

 

■歩行の耐久性向上、疲労軽減

ふくらはぎの筋肉が柔らかくなると足関節の可動域が大きくなります。

そうすることで歩行時に効率よく足関節を動かすことができ、推進力を得やすくなるので疲労を感じにくくなったり連続して歩ける距離や時間が長くなります。

 

■膝、股関節痛の改善

足関節は、ジャンプ着地やランニングの際に最も地面から近いところで衝撃を吸収しています。

足関節の可動域が大きくなるとより衝撃を吸収しやすくなるため、膝関節や股関節への負担が減り、膝関節や股関節痛の予防・改善につながります。

 

■冷え、むくみの改善

ふくらはぎは「第二の心臓」とも言われており、心臓から末梢へ送り出された血液をふくらはぎの筋肉ポンプで末梢から心臓へ戻しています。

ふくらはぎの筋肉が柔軟になり動きがよくなると、ポンプの動きもよくなるので全身の循環がよくなります。

結果として、冷えやむくみの改善につながります。

 

■エコノミークラス症候群の予防

「エコノミークラス症候群」とは、長時間動かない状態が続くことで血の塊である血栓ができやすくなり、血管を詰まらせてしまう状態です。

名前を聞くと、飛行機のロングフライトのみが関係するのかと思われがちですが、長時間のデスクワークや高齢者などが日中に長時間不動でいることもこの原因となります。

定期的にふくらはぎのストレッチやマッサージを行うことで、循環を改善し、エコノミークラス症候群の予防につながります。

 

■美脚効果

多くの女性が憧れるのが、すらっと引き締まったまっすぐな脚ではないでしょうか。

筋肉が凝り固まって柔軟性の低い状態では、ふくらはぎがぽっこりと盛り上がったししゃも足になってしまいますが、しっかりと柔軟性のある状態では引き締まっていながら緩やかな曲線のまっすぐな脚になります。

健康的な美脚を目指すためにもストレッチは重要です。

 

おわりに

今回はふくらはぎのストレッチのやり方と効果についてご説明しました。

一日のうち数分だけ身体のケアに費やすことで全身に対してメリットのあるとても効果的なストレッチです。

三日坊主では効果をなかなか感じられませんので、是非とも継続して行っていただきたいと思います。

睡眠をとりやすくする方法

はじめに 

皆さんはどのくらいの時間睡眠をとっていますか?普通の人はもちろん筋トレをしている人にとって睡眠の質は非常に重要なものになります。

 

しかしいざ睡眠を意識しても適切なルールや睡眠を深くする方法は初めからわからないモノです。

 

今回はそんな疑問に答える為に、筋トレと睡眠の関係性の基礎的な部分に触れたうえで眠りを深くする為の5つの工夫についてご紹介していきます。

 

知っておきたい睡眠のメカニズムと筋トレを効果的にするためのルール

睡眠のメカニズム

まずは睡眠のメカニズムについて簡単なところだけ理解していきましょう。

 

▪️浅い眠り(レム睡眠)と深い眠り(ノンレム睡眠)

正しい睡眠を考えた時、人間は睡眠の時、深い眠りと浅い眠りを繰り返します。その周期は個人差はあるものの、おおよそ90分で1セットのサイクルであるといわれています。

 

理論上このセットが終わったところで起きると最もすっきりと起きることができますので睡眠時間を考える際は90分を1サイクルとして計画をたてていきましょう。

 

▪️ゴールデンタイムは就寝後3時間

筋肉を回復する成長ホルモンが最も分泌される時間は就寝後3時間と言われています。ですので筋トレの効果を上げるためには就寝後3時間の質を高める必要があります。

 

▪️就寝時の体温変化

質の良い睡眠と体温の関係性は切っても切り離せません。人間は入眠に備えて深部体温を徐々に下げていきます。体温を下げる為に大切なメカニズムが熱の放散です。最も熱を放散させる部位は手足の末端部分です。

小さなお子様の手足が寝る前に暖かくなる現象を経験した方もいるとは思いますがこの現象がまさにこの放散に由来するといわれているんですね。

 

▪️メラトニンと睡眠時間

深夜3時ごろから「メラトニン」という睡眠ホルモンが活発になります。メラトニンは体温を上げ、朝に向け体を起こす準備をするためのホルモンです。

 

筋トレの効率を上げるためのルール

上記の睡眠のメカニズムを理解した上で筋トレを行う上で最も基本的なルールを把握しておきましょう。これは筋トレした筋肉の回復を促す成長ホルモンの分泌、後日に疲れを残さず日常生活を送る為の大前提のルールです。

 

▪️入眠は10時~0時のタイミングで

 

寝るタイミングは重要です。

 

上記の説明のように覚醒するためのホルモンのメラトニンが活発になるのが深夜3時ごろからと言われていますのでこの時間にゴールデンタイムの就寝後3時間が被ると疲労回復の効率は悪くなります。

 

ですので遅くとも0時には睡眠の状態に入っておく必要があります。

10時から2時までがゴールデンタイムという話がありますが大事なのはこの時間の中で入眠することではなく、この時間には『すでに眠りについている』ということなんですね。

 

▪️少なくとも6時間以上は就寝する

最も理想的な就寝時間は6~9時間と言われ、それぞれの疲労具合で寝る時間を調整する必要があります。

 

就寝は90分サイクルで訪れますので、理論上、筋トレをしている人はしていない人よりも長く眠ることが疲労を回復する上で必要なはずです。

 

6時間よりも少し長めの7時間半から始めてみてはいかがでしょうか。

 

▪️就寝直前には筋トレを行わない

適度な時間の筋トレは睡眠を深くするという研究がありますが、筋トレを就寝直前(30分前など)に行ってしまうと交感神経(目が覚める神経)が刺激され寝付けなくなってしまいます。寝る時間を前提としたトレーニングスケジュールを組みましょう。

 

▪️毎日規則的に行う

寝るタイミング、寝る長さを意識してもそれが毎日バラバラでは意味がありません。

 

毎日同じ習慣で行うことで生活リズムが安定します。夜更かしや過度な早起きがないように普段から寝る時間を前提としたスケジュール調整を行うように仕事や家事のスケジュール調整も必要になってきますね。

 

まずは4つのルールを普段から取り組めているかを確認しましょう。これからご紹介するような睡眠の取り組みを行っても上記のルールでできていなければ効果は上がりませんよ!

 

睡眠の質を上げる為に取り組みたい5つのこと

睡眠の質を上げる為には入眠時3時間をぐっすり寝られることと深い睡眠ができることが重要になります。下記の5つの取り組みは『寝つきをよくすること』『ぐっすり眠ること』為に効果的な方法と言われています。

 

①体温の上昇、スムーズな熱放散を促す為に運動をする

就寝前の運動については適度な疲労感の運動であれば問題ないとする理論もありますが、筋力を増やすような本格的なトレーニングは就寝前は避けるべきです。

 

よい睡眠をとるためには就寝前の時間は避けましょう。生活サイクルがあるのでこの時間と限局することは難しいですが、筋トレに最適な時間は16:00~18:00の夕方の時間帯が最も適切と言われています。

 

しかし普段仕事などをしていてこの時間にトレーニングできない人がほとんどでしょうから、食事と就寝の兼ね合いを考えたトレーニングの時間設定が重要となります。

 

一般的に食後すぐ~2時間程度は筋トレを行う時間には向きません。ですので食後2時間後程度から筋トレをはじめて遅くても就寝の2時間前には終了しているぐらいの時間帯が適しているといえます。

 

この間に入浴やリラックス効果のある取組身をしてさらに入眠への質を高めましょう。良質な睡眠だけを狙うのであれば筋トレよりもジョギングやウォーキングなどの有酸素運動を取り入れることでさらに睡眠の質を高めることができるといわれています。

 

②熱すぎるお風呂は深い睡眠の妨げに

お風呂に入った後なんとなくさっぱりするという理由で極端に熱いお湯につかっていませんか?

 

入浴の方法と睡眠の質は大きくかかわっており、最も睡眠の質を上げる為に適した温度は度から40度程度の熱すぎないお湯に分ほどの入浴がいいといわれています。

 

睡眠に関する書籍として有名な『スタンフォード式最高の睡眠』の著者である西野教授によると入浴する時間は睡眠前の体温上昇から睡眠直前の体温低下に向けてのメカニズムから、最も適切なのは就寝90分前とのこと。

 

寝る直前にお風呂に入る方もいますが、質の高い睡眠を手に入れるためにはお風呂に入っている時間だけでなく入るタイミングも意識する必要があるということですね。

 

③ 寝具で睡眠の質は大きく変わる

睡眠をとる環境は大きく影響します。温度の管理は夏場なら冷やしすぎず、冬場は熱すぎず設定することが重要です。夏は26℃以下、冬場は16℃から19℃が適切です。

 

また寝具も重要で、良質のマットレスや布団は睡眠の質を向上するための科学が詰まっています。全ての人に適応するわけではなく価格もそれなりにするものが多いですが眠りは人生の3分の1を占める作業です。

 

自己投資だと思ってショールームなどで試してみて自分に合ったものがないかを見つけて見てもいいですね。

 

④眠りの直前にカフェインは摂取しない

眠りにつく直前はできるだけ神経がリラックスしている状態になっている必要があります。

そのため睡眠前に覚せい作用のあるコーヒーやエナジードリンクなどを飲むことは避けましょう。コーラなどのソフトドリンクやチョコレート等にもカフェインが含まれているので注意です。

 

どうしても寝る前に何か飲みたいというかたは緑茶は少量にする(ストレス緩和作用もある為)、牛乳やハーブティーなどはリラックス効果があるとされているのでOKです。

 

さらに食材にもこだわりたい場合はトリプトファンという食材がリラックス効果にいいとされています。トリプトファンはレバーや鶏むね肉、まぐろ、カツオなどの魚、大豆や乳製品、アーモンドなどに含まれていますので夕食の食材に取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

⑤その他

睡眠前にアロマや、音楽(川のせせらぎなどの自然の音、クラシック音楽など)でリラックス効果を高めることができます。

 

普通は静かな状況が望ましいですが、部屋の環境上どうしても近隣施設や道路の音が気になるという方はこのようなリラックス効果の高い音を使用して打ち消してみるのも手ですね。

 

さいごに

いかがでしょうか。筋トレと睡眠の関係性と睡眠のメカニズムを知ることによって以外に簡単な方法でみなさんの睡眠の質が改善できる可能性があることがお分かりいただけたと思います。

 

一生懸命取り組んでいる筋トレが少しでも身を結ぶように今日から睡眠改善の工夫を実践してみてはいかがでしょうか。

これってなんの痛み?膝の外側の痛みと対処法

はじめに

膝の痛みは運動中のアクシデントや特にきっかけなく発症したものなど発生の仕方は様々です。

また、膝と言っても痛みのある部位は内側や外側、表側や裏側など様々です。

今回は膝の痛みの中でも外側の痛みについて痛みの原因や対処法についてご説明します。

 

膝関節の構成

まずは、膝関節を構成する組織について説明します。

■骨

膝関節は大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)と膝蓋骨(お皿の骨)から構成されています。

一般的に膝と言われるのが大腿骨と脛骨で作られる関節で『大腿脛骨関節』と言います。

大腿骨の下端は二つの大きく隆起した部分が内外側にあり、脛骨の上を滑りながら動くことで蝶番のような屈伸運動となります。

また、膝の屈伸に伴い大腿骨の前側では膝蓋骨が上下に滑るように動いており、ここで形成される関節を『大腿膝蓋関節』と言います。

脛骨の外側には腓骨という細い棒状の骨が脛骨と平行に並んでおり、脛骨と関節を形成していますが、動きはほとんどなく、一般に言われる膝関節の動きには関与していません。ただし、膝や足首に関わる靭帯は一部付着しています。

 

■靭帯

靭帯は骨と骨をつなぐ筋肉よりも硬く伸張性のない組織で、関節がグラグラしないように守っています。

関節捻挫などで、靭帯を断裂すると関節がグラグラして不安定性がでたり、脱臼したりしてしまいます。

膝関節には4つの大きな靭帯があります。大腿脛骨関節の内側にある「内側側副靭帯」、外側にある「外側側副靭帯」に加え、大腿脛骨関節の中で二つの骨をつないでいる「前十字靭帯」と「後十字靭帯」があります。

 

■半月板

膝関節は歩行やジャンプなどで常に膝から上の全体重を支え、大きな衝撃を吸収しなければなりません。

そこで、大腿脛骨関節の間には「半月板」という水分を多く含む組織があり、クッションの役割をして関節を守っています。

大腿骨下端の形状の特徴である二つの隆起に合うように、脛骨上端の関節面の内側には「内側半月板」、外側には「外側半月板」があります。

 

膝の外側の痛みの原因

それでは、膝関節の外側の痛みの原因について代表的なものをご紹介します。

 

■変形性膝関節症

加齢やスポーツでの膝の使いすぎにより膝関節の軟骨がすり減ったり、大腿骨や脛骨自体の形状が変形することを「変形性膝関節症」と言います。

膝の内側に痛みがでることが最も多いですが、外側に痛みがでる場合もあります。

外側に痛みがでる場合の特徴としては、X脚であることがあげられます。

股関節周囲の筋力不足や外反母趾などの足部の問題からX脚になってしまうと、膝の内外側の荷重バランスが崩れ、外側の荷重が強くなってしまいます。

そのような状態で長年歩行を続けていると、外側の軟骨ばかりがすり減ってしまい、大腿骨や脛骨の外側の変形が強くなり、痛みが生じます。

膝の屈伸や歩行で痛みがでることが多く、炎症が強いと安静時痛を伴うこともあります。

 

■外側半月板損傷

膝関節は大腿骨と脛骨が蝶番のように動き、屈伸運動をするようになっています。

股関節や肩関節のように様々な方向に動かせる関節でないので、捻られる動きに弱く、体重がかかった状態で膝を捻るような動きをすると大腿骨と脛骨の間にありクッションの役割をしている半月板をすりつぶすようになってしまいます。

運動中の捻挫などで半月板を傷めてしまうこともありますが、X脚で荷重を続けることで徐々に外側半月板を傷めてしまうこともあります。

半月板損傷の特徴として、荷重痛や膝の屈伸時にある角度で急に膝が動かなくなってしまうロッキング現象などがあります。

 

■外側側副靭帯損傷

外側側副靭帯は運動中の関節捻挫や歩きすぎ、走りすぎなどのオーバーワークで傷めることがあります。

ランニングやジャンプの着地などでバランスを崩し、膝の外側に体重がかかりすぎたときに膝の外側が引きのばされるような状態になり、大腿骨と脛骨の外側を繋いでいる外側側副靭帯が損傷したり、断裂したりしてしまいます。

膝の屈伸や荷重時の痛みもありますが、断裂の程度が強いと、膝の外側に体重がかかったときにガクンと抜けるような感覚があるのが特徴です。

 

■腸脛靭帯炎

股関節の外側に「大腿筋膜張筋」という筋肉があります。

大腿筋膜張筋は大腿の外側で腸脛靭帯という靭帯組織に移行しており、腸脛靭帯は脛骨の上端に付着しています。

腸脛靭帯は外側側副靭帯とともに膝の外側を守り、膝関節を安定させることに役立っています。

股関節周囲の筋力が弱く歩行やランニングで膝が外側に抜けるような、O脚になるようなフォームになっていたり、片脚に体重を寄せた状態で長時間立ちっぱなしでいるようなことがあると腸脛靭帯に伸張ストレスがかかります。

その結果腸脛靭帯が炎症を起こし、痛みを伴うことがあります。

 

■膝蓋骨周囲炎

膝蓋骨(お皿)の周りには膝蓋骨の動きを制動するための靭帯や、クッション材としての脂肪組織があります。

膝の内側の筋力が弱くなってしまうと膝蓋骨が相対的に外側に引っ張られることになり、正常な位置から外れてしまいます。

そのような状態で歩行や屈伸を続けると膝蓋骨の外側に圧がかかりすぎてしまい、膝蓋大腿関節や膝蓋骨外側の脂肪組織が炎症を起こしてしまいます。

 

膝の外側の痛みに対する対処法

膝の外側に痛みを感じたとき、ご自分の膝の状態が少しでも理解できていれば痛みを和らげるために気を付けたり対処できることがあるかと思います。

早めに自分で対処することができれば、悪化することなく治ってくる場合もあります。

ここでは、膝の外側に痛みがある場合にご自身でできる対処や日常生活での注意点をご紹介します。

 

■消炎処置を行う(安静、アイシング、湿布)

膝の外側に痛みがあるとき、何かしらの組織に炎症が起こっていることを考えます。

痛みのほかに「腫れ」、「熱感」、「発赤」が見られるときは強い炎症がある証拠なので、炎症を落ち着かせることで痛みが改善する可能性が大いにあります。

炎症を落ち着かせるためには運動はもちろん、必要以上に歩いたり膝の屈伸をせず、なるべく安静にすることが第一です。

また、氷嚢で患部を冷やしたり、湿布を貼るなどの処置も炎症を落ち着かせるのに効果的なので積極的に行ってみてください。

 

■膝を捻らないように気を付ける

正常な膝関節の運動は屈伸運動のみなので、捻りの動きが苦手です。
膝関節が捻られると膝の外側では外側側副靭帯、外側半月板をはじめとした組織が損傷されてしまいます。

具体的に捻る動作とは、足を地面につけたまま振り返ったり向きを変える動作、ジャンプの着地でバランスを崩して膝がO脚やX脚になるような動作などです。

膝に痛みを感じているときは、膝を捻らないようにするためにつま先と膝が常に同じ方向を向くように意識してゆっくり動くようにしましょう。

 

■痛みのでる動作を避ける

痛みを感じ始めてからしばらく経つと、痛みがひどくなる動作と痛みなく行える動作が分かってくるかと思います。

傷めている組織によって異なりますが、体重をかけること、捻ること、しゃがむこと、伸ばすことなど動作によって痛みが増悪する動作は控えるようにしましょう。

 

おわりに

今回は膝の外側の痛みがある場合に考えられる原因や対処法をご説明しました。

この知識を参考に、ご自分の膝の痛みが何によるものなのか、原因はなんなのかを考えていただき、できる範囲で対処をしてみていただきたいと思います。

1週間前後セルフケアで様子を見ても改善しない場合、自分なりの対処をしているにもかかわらず悪化していくような場合は、専門家の診断を仰いだ方がよいかと思いますので、整形外科を受診し適切な検査や処置を受けるようにしてください。

『いつでもできる!食べにくさを感じたらチェックすること』

食べにくさ、飲み込みにくさ等の摂食・嚥下(えんげ)障害とは、加齢や病気に伴って起こる症状です。

食事は毎日のこと。食べにくさは、いつ何時誰にでも起こりうること、なのです。

 

摂食・嚥下障害ってなに?

摂食嚥下とは、食べ物を認識してから、口を通って胃の中へ送り込む、この一連の動作のことです。

このどこかに問題が起き、食べにくさ・飲み込みにくさを感じている状態を、摂食・嚥下障害といいます。

 

摂食・嚥下障害を疑う症状

食べにくさ・飲み込みにくさを感じた場合、以下の項目をチェックしてみましょう。

 

● むせの有無:

頻度やタイミングに注意が必要です。

 

● 咳(食事中や寝るとき):

いつ・どんな咳をしていますか?

 

● 痰の増減:

最近増えましたか?色が変わっていますか?

 

● 口やのどに食べ物が残る:

どこに残っていますか?どこに残っている感じがありますか?

 

● 食前後で声の変化がある:

ガラガラ声になるなど、いつもとちがう声になっていませんか?

 

● 食欲が落ちている:

嚥下障害が原因のこともあります。1週間ほどを通して、食事の量が少なくありませんか?

 

● 食べやすいものだけを選んでいる:

無意識に、飲み込みやすいものだけ選んで食べていませんか?

 

● 食事時間が延びすぎている:

口の中にいつまでも食べ物を溜め込んでいたり、なかなか飲み込まないことが増えていませんか?

 

● 食べ方が変わった:

口からこぼれたり、上を向いて食べていたりしませんか?

 

● 食事中・後に疲れている:

食べ物を飲み込むときは自然と息を止め、飲み込む動作を繰り返しています。飲み込みにくさを感じている状態では、飲み込むこと自体で疲れてくることがあります。

 

● 口の中の汚れがひどい:

ひどい歯垢や口臭、食べ物の残りカスなど、嚥下障害が原因のこともあります。

 

● 体重の減りが激しい:

食事がすすまないと低栄養になることがあります。

 

● 発熱が続いている:

嚥下障害が原因の肺炎を起こしていることもあります。

 

これらの症状はセルフチェックのほかに、まわりの人の“気付き”によって見つけることもできます。本人に自覚のない場合でも、周囲の人によって、食事の困りごとが発見され、専門家への相談、早めの対応につなげていくことができます。

 

摂食・嚥下障害によって起こるかもしれないこと

● 誤嚥性肺炎:

誤嚥とは、食べ物が気道(胃につながっている食道とはちがう通り道)に入ってしまうこと。それが原因で肺炎を起こしてしまうことを言います。最近では、有名人の死因のひとつとして、ニュースなどで耳にすることも増えたかもしれません。

 

● 脱水:

進行すると、意識が遠のいたり、体に力が入らなかったり、脈拍が増えたり、血圧が下がったり・・・命に関わる問題です!

 

● 栄養不良:

低栄養のため、他の病気や症状が出てくることがあります。

 

● 体重減少:
1週間で2%以上、1か月で5%以上、3か月で7.5%以上の減少が、極端な体重減少です。

 

摂食・嚥下障害はどうして起こるの?

冒頭にも記したように、いつ誰にでも起こるものです。原因とされているもので、代表的なものを紹介します。

● 加齢

● 脳卒中

● パーキンソン病などの神経難病

● 活動性の低下

● 薬の副作用

● 認知症

● 心理的要因によるもの(うつ病や拒食症など)

 

摂食・嚥下障害の対応

すぐできる対応として、

① 飲み込みに意識を集中する

(テレビを見ながら、新聞を読みながら、等の“ながら”食事をやめる)

 

② やや顎を引き気味に飲み込んでみる

(案外、顎が上がり気味の姿勢で食事をしていることが多い)

 

③ 水分にはとろみをつけてみる

(最近ではとろみ剤も、近隣のスーパーやドラッグストアで容易に購入できる)

 

④ 食事の形に気配りしてみる

(やわらかさ・形状・なめらかさなど。パサパサしたものやくっつくものなどは避けることも考える)

 

④ リクライニングできるような背もたれにもたれて食べてみる

(頭まで支えてくれるようなものが、リラックスできて良い)

 

等、様々なものがあります。自分に合う方法なのかどうかの判断、他の対応等は、専門機関への相談によって指導してもらうこともできます。

 

まとめ

食べにくさ・飲み込みにくさを感じたとき、セルフチェックや観察をしてみましょう。

摂食・嚥下障害の可能性があっても、すぐできる対応で解決できることもあります。また、身近な医療・福祉スタッフに相談してみるのもよいでしょう。

誰にも起こり得る食べにくさ・飲み込みにくさですが、症状や対応、相談相手を知っていることが大きな支えになります。食事が、いつまでもおいしい・楽しいものとして有るように、知っておきましょう。

 

【参考文献】

高齢者の摂食嚥下サポート 若林秀隆著 2017 新興医学出版社

これって大丈夫?膝の内側の痛みの種類と対処法

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はじめに

変形性膝関節症や靭帯損傷など膝の痛みを伴う原因は様々です。

運動中に明らかな原因があって膝が痛くなり始める方もおられれば、年齢を重ねるとともに特にきっかけなく膝の痛みを覚えて不安になる方もおられるかと思います。

そこで、今回は膝の痛みの中でも多い内側の痛みを伴う場合の原因や対処法についてご紹介いたします。

 

膝関節とは?

まずは、正常な膝関節を構成する組織について説明します。

 

■骨

膝関節は、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)と膝蓋骨(お皿の骨)から成ります。

大腿骨と脛骨で形成される関節を『大腿脛骨関節』と言い、大腿骨の下端内外側にある大きく隆起した部分が脛骨の上を滑りながら蝶番のように動くことで膝の屈伸となります。

また、膝の屈伸に伴い大腿骨の前側で膝蓋骨が上下に滑るように動いており、ここで形成される関節を『大腿膝蓋関節』と言います。

脛骨の外側には腓骨という細い棒状の骨が脛骨と平行に並んでいますが、一般に言われる膝関節には関与していません。

 

■靭帯

靭帯とは骨と骨をつなぐ筋肉よりも硬く伸張性のない組織で、関節が脱臼しないように関節を保護しています。

膝関節には4つの大きな靭帯があり、大腿脛骨関節の内側にある「内側側副靭帯」、外側にある「外側側副靭帯」、大腿脛骨関節の中に「前十字靭帯」と「後十字靭帯」があります。

 

■半月板

大腿脛骨関節の間には「半月板」という水分を多く含む組織があります。

膝関節は体重を支え、走ったり跳んだりする度に関節にかかる大きな衝撃を吸収しています。

そこで、関節の間にある「半月板」がクッションの役割をして衝撃吸収を助けることで関節を守っています。

大腿脛骨関節の形状に沿って、内側には「内側半月板」、外側には「外側半月板」があります。

 

膝の内側の痛みの原因

それでは、膝関節の内側の痛みの原因について代表的なものをご紹介します。

 

■変形性膝関節症

膝関節の軟骨がすり減ったり、大腿骨や脛骨自体の形状が変形することを「変形性膝関節症」と言います。

変形性膝関節症になる原因の一つは、加齢に伴う股関節や膝関節周囲の筋力低下です。

筋力が不足している状態で歩行を続けると股関節や膝関節がまっすぐに支えられなくなり、O脚になってしまいます。O脚になると膝関節の中でも内側ばかりに圧が強くかかってしまい、内側の軟骨ばかりすり減ってしまいます。

そのようなアンバランスな荷重を続けた結果、膝の内側に痛みがでてくる方が多くおられます。

歩行時痛はもちろん、朝起きたての痛みや歩き始めの痛み、夜寝ているときの夜間時痛なども変形性関節症の特徴です。

 

■内側半月板損傷

膝関節は大腿骨と脛骨が蝶番のように動き、屈伸運動をするようになっています。

ですから膝関節は捻られる動きに弱く、体重がかかった状態で捻るような動きをすると大腿骨と脛骨の間にありクッションの役割をしている半月板をすりつぶすような動きになってしまいます。

運動中に膝を捻挫して半月板を傷めてしまうこともありますが、筋力の弱い女性特有の動作で膝が内側に入るような動きを繰り返してしまうと内側半月板を徐々に傷めてしまうこともあります。

荷重痛や膝の屈伸時にある角度で急に膝が動かなくなってしまうロッキング現象などが特徴です。

 

■内側側副靭帯損傷

膝関節の捻挫で傷めたり、歩いたり走ったりしている中で徐々に傷めることが多い靭帯です。

歩行やジャンプの着地などで膝が内側に入ってしまい、膝の内側が引きのばされるような状態になった際に大腿骨と脛骨の内側を繋いでいる内側側副靭帯が引き伸ばされて損傷したり、断裂したりしてしまいます。

断裂の程度が強いと、膝が内側に入ったときにガクンと抜けるような感覚があるのも特徴です。

 

■鵞足炎

脛骨の内側、内側側副靭帯が付着している部位に近いところに「鵞足」と呼ばれる部位があります。

鵞足は、縫工筋、薄筋、半腱様筋という3つの筋肉が集まって付着している部分です。

鵞足炎はランニングなどの運動を行う方に多いケガで、練習のやりすぎで筋肉を使いすぎているとき、下半身の十分な柔軟性がないまま運動を行っているときに上記の3つの筋肉の伸び縮みがうまくいかず付着部に負担がかかって起こります。

また、ジャンプの着地で膝の内側が引きのばされるようになったときに内側側副靭帯とともに損傷することもあります。

 

■膝蓋骨周囲炎

膝蓋骨(お皿)の周りには膝蓋骨の動きを制動するための靭帯や、クッション材としての脂肪組織があります。

膝が内側に入るなど、膝蓋骨の内側が引き伸ばされたり圧がかかるなどの負荷がかかると膝蓋骨の内側の靭帯や脂肪組織が炎症を起こしてしまいます。

 

膝の内側の痛みに対する対処法

膝の内側に痛みを感じてもすぐ治るかもしれないからと様子をみる方は多いかと思います。

そんなとき、ご自身でうまく痛みに対する対処ができるかどうかで経過が変わってきます。

ここでは、膝の内側に痛みがある場合にご自身でできる対処法や気を付けることをご紹介します。

 

■アイシング、湿布

膝の内側に痛みがあるとき、まずはどの程度の炎症があるのかをご自分で確認してみてください。

炎症の所見としては、痛みのほかに「腫れ」、「熱感」、「発赤」があります。

膝全体、もしくは痛みのある部位に上記のような所見があるときは炎症がある証拠なので、炎症を落ち着かせることで痛みが改善する可能性があります。

氷嚢で患部を冷やしたり、湿布を貼るなどの処置を行ってみてください。

 

■膝を捻らないように気を付ける

膝関節は蝶番のような動きをする関節ですので、捻りの動きが苦手です。

内側側副靭帯、内側半月板をはじめ膝関節が捻られることで損傷する組織が多々あります。

具体的に捻る動作とは、足を地面につけたまま振り返ったり向きを変える動作をしていないか、階段を昇るときにつま先の向きに対して膝が内側に入るような踏み込みをしていないかといったことなどです。

気が付かないうちに膝を捻っていることはたくさんありますので、膝の痛みがあるときは特に気を付けるようにしましょう。

 

■痛みのある動作を避ける

痛みを感じてからしばらくすると、だんだんどのような動きをすると痛いのかということが分かってくるかと思います。

体重をかけた時、捻った時、しゃがんだとき、伸ばしたときなどです。

痛みのある動作は痛めた組織に負荷をかけている証拠ですので、なるべく行わないようにして経過をみてみましょう。

 

おわりに

今回は膝の内側の痛みについて考えられる原因と対処法をご説明しました。

一時的になにかしらの負荷がかかって出現した痛みであれば、今回ご紹介したような対応で落ち着いてくるかと思いますが、不可逆的または強い組織の損傷がある場合にはご自身の対処では間に合わない場合もあります。

強い炎症所見が数日以上続く場合や、ここでご紹介した対処法を行ってみても改善しない痛みがある場合には整形外科を受診し、適切な診断や処置を行ってもらうようにしてください。

『女性必見!簡単「腕立て伏せ」で二の腕を引き締める方法』

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はじめに

多くの女性はすっきりと引き締まった健康的な二の腕に憧れるのではないでしょうか。

「二の腕を引き締める」ためのエクササイズと言えば「腕立て伏せ」が有名ですが、運動習慣のない女性にとっていきなり腕立て伏せを始めるのはかなり負荷が強く、腕立て伏せが1回もできないという女性はたくさんいます。

そこで今回は、筋力の弱い女性でも始めやすい様々なバリエーションの腕立て伏せを含め、腕立て伏せの正しいやり方をご紹介していきます。

 

二の腕に関与する筋肉とは?

二の腕を構成する筋肉は大きく分けて2つ

「二の腕」というのは、世間一般に使用されている言葉ですが、専門用語では「上腕」と言い、肩から肘までの部分を指します。

「上腕」には、主に肘を曲げる筋肉である「上腕二頭筋」と伸ばす筋肉である「上腕三頭筋」が付いています。

「上腕二頭筋」は上腕の前面についており、力こぶを作ったときにもっこりと隆起する筋肉のことです。

「上腕三頭筋」は上腕の後面についており、女性が手を振った時に「振袖」と言って嫌われる脂肪の深部にあります。

この「上腕三頭筋」がしっかりと鍛えられていれば、「振袖」という名の脂肪も付きにくく、引き締まった健康的な二の腕が手に入るのです。

 

女性は上半身の筋肉がつきにくい!

一般的にあまり知られていないことですが、女性は男性に比べて上半身の筋肉がつきにくいとされています。

それは男女のホルモンが関与しており、筋肉を発達させるための男性ホルモンを受け取るたんぱく質の量が男性の上半身に多いからなのです。

一方の女性はというと乳房を中心に脂肪を蓄え、丸みをおびた女性らしい身体になるように作られているのです。

ですから、下半身に比べて上半身の方が男女の筋力差が大きく、女性は男性以上に積極的に上半身のトレーニングをしなければ上半身の筋肉が発達しにくいのです。

 

使われにくい「上腕三頭筋」

二の腕に関与する筋肉として「上腕二頭筋」と「上腕三頭筋」をご紹介しましたが、同じように二の腕の前と後ろについている筋肉でも、使われる頻度が圧倒的に違います。

「上腕二頭筋」は肘を曲げるときに力を発揮しますので、物を持ち上げたり、自分のほうに引き付けたり、腕や手に荷物をかけているときなど使われる機会は数知れません。

一方「上腕三頭筋」は肘を伸ばすときに力を発揮するので、物を押したり、倒れないように身体を支えたり…となかなかそのシチュエーションを思い出すのも一苦労なのです。

ですから、筋肉の上の脂肪である「振袖」が上腕二頭筋の側についている方はあまりおられないと思いますが、上腕三頭筋の側には油断するとすぐに立派な「振袖」ができあがってしまうのです。

 

女性にも優しい腕立て伏せのやり方

それでは、二の腕を引き締めるために有効な腕立て伏せの正しいやり方を説明していきます。

 

基本的な腕立て伏せのやり方

まずは、基本的な腕立て伏せの方法をご説明します。

1. 肩のラインの真下で、肩幅よりも拳二つ分ほど広げた幅で両手を床につきます。

2. 足は腰幅とし、つま先だけが床につくような形で膝を伸ばして足をつきます。

3. 腰が反ったり曲がったりせず、横から見たシルエットが肩から足先までが一直線になるようにします。

4. 3までのポジションがとれたら、ゆっくりと肘を曲げ、身体を下ろしていきます。

5. 身体が床につく手前まできたら、ゆっくりと肘を伸ばし、身体を上げて元のポジションに戻ります。

 


腕立て伏せのやりかた workout exercises at home to lose weight

 

腕立て伏せができないときはここから!

上で説明した基本的な腕立て伏せをやろうとしても、筋力が足らずきれいなフォームでできなかったり、身体を下したところから上がれなかったりすることがあると思います。

そんなときは、次の順番に試していき、自分にちょうどいいところから始めてください。

日々そのトレーニングを続けていき、次のステップができそうだと感じたらステップアップし、最終的に基本の腕立て伏せができればとても達成感があると思います。

 

1. 斜め腕立て伏せ

床での腕立て伏せがきつい方は、まずキッチンの調理台や安定した机などを使った「斜め腕立て伏せ」から始めるのがおすすめです。

肘を伸ばして台の端に両手をつき、足を後ろに下げて斜めによりかかった状態にします。

あとの要領は基本の腕立て伏せと同じですが、足を大きく下げるほど角度が基本の腕立て伏せに近づくので、負荷は大きくなります。できる角度から始めてみてください。

また、「斜め腕立て伏せ」でも曲げ伸ばしが難しい場合は、肘を伸ばした状態で体重を支える練習をするだけでも筋肉を使うことができるので、あきらめずにそこからチャレンジしてください。


囚人筋トレ式 「プッシュアップ」 STEP 2 斜め腕立て伏せのやり方

 

2. プランク

肘を90°に曲げ、左右の腕が平行になるように肩幅に開き、肘から先を床につけます。
足は腕立て伏せと同じようにつま先だけが床につくようにして後ろに下げます。

肘で床を押すように力を入れ、その状態を10~60秒保持します。

このとき、肘を押す力が入っていないと首がすくんで肩甲骨が背中から浮き出てしまうのでしっかりと押しましょう。

また、このときも肩から足が一直線になるようにします。

このトレーニングは上腕の筋肉も使いますが、主に上腕の筋肉の土台となる肩甲骨を安定させるトレーニングになり、肩こりの改善にも効果的です。


1回でも効果のある正しいプランクのやり方 ワークアウト エクササイズ workout exercises 美コア 山口絵里加

 

 

3. 膝立て腕立て伏せ

ここまできたら、腕立て伏せまであと一歩です。

基本の腕立て伏せはつま先だけ床につきますが、膝でつくようにし、膝から下が床につかないように90°くらいに曲げて浮かしておきます。

あとの動きは腕立て伏せと同じですが、肩から足先でなく、肩から膝が一直線になるようにします。

 


ダイエット女子の腕立て初心者編~10回を目指す~

 

腕立て伏せを行う際の注意点

腕立て伏せを行うにあたって押さえていただきたい注意点をお伝えします。

 

1. 正しいフォームで行う

目的とする筋肉をつけ、引き締まった二の腕を手に入れるためには正しいフォームの腕立て伏せもしくはご紹介した前段階のトレーニングを行うことが重要です。

例えば、肘の屈伸を行っているようでそれと同時に脇が開き、首をすくめるような動作が大きく入ってしまうと二の腕の筋肉よりも僧帽筋という肩こりの原因にもなる首から肩にかけての筋肉などをメインで使ってしまうことになります。

腕立て伏せを行う際には、あまり脇が開かないように注意し、肘を曲げるとともに肩甲骨を内側に寄せ、肘を伸ばすとともに肩甲骨を外側に押し出すような動きを意識しましょう。

また、肩から足先までが一直線というフォームが保持できず、腰が反ったり曲がったりしてしまうと二の腕の筋肉を使わないだけでなく、腰を痛めてしまう恐れがありますので、注意しましょう。

正しいフォームを維持できないときには、前でご紹介した前段階のトレーニングに戻り、しっかりとできるようになってから次のステップに進んでみてください。

 

2. 1セット10~20回を目安にする

腕立て伏せを行うにあたり、1日何回やるのがよいのかということについてですが、目標は1セット10~20回として1日2~3セットかと思います。

ぎりぎり1回行うのがやっとのトレーニングではなかなか効果がみられないので、例えば腕立て伏せはできるけど3回しかできないというときは、斜め腕立て伏せや膝立て腕立て伏せに変えて10~20回続けてできるほうが効果的です。

それでも、難しい方はそれぞれの開始肢位を10~60秒維持する練習から始めて、それに肘の屈伸の練習を1回から加えていくとよいかもしれません。

 

3. 毎日でなくても続けることが大事

トレーニングは毎日やろうと思って始めても3日坊主になってしまったり、1日できなかった日があるともうやめたと諦めてしまう方も多いのではないでしょうか。

しかし、実際本格的な筋トレはいじめた筋肉を修復させるのに数日かかるという点から、筋トレは2~3日に1回行うのがよいとされています。

慣れてくると腕立て伏せ自体は毎日行っても問題ありませんが、無理に毎日やろうと意気込んで続かなくなってしまうよりは、2~3日に1回でよいと少し余裕を持たせ、その上で長く続けることがとても大事です。

 

まとめ

今回は、引き締まった二の腕になるための腕立て伏せについて正しいやり方や注意点、またトレーニングに慣れていない女性でも始めやすい方法についてご紹介しました。

腕立て伏せは自宅でいつでもどこでもできるトレーニングですが、女性にとっては負荷の厳しいトレーニングであり、慣れるまではフォームも不安になるかもしれません。

そんなときは是非一度、トレーニング指導のできる方にみてもらい、自信を持ってトレーニングできるようにしましょう。

短期間ですぐに効果は見られないかもしれませんが、行った努力は決して嘘をつきません!

負荷設定の仕方

はじめに

最近カラダ作りの為に筋トレを始めた、またははじめようと思っている方は多いと思います。

そんななかで迷うのが特にウェイトトレーニングの負荷設定ではないでしょうか。

ジムなどに行ける人はインストラクターに聞いたりすることもあるかと思いますが自宅でトレーニングする人によっては自分で考えて負荷を決める必要がありますよね。

今回はそんな筋力トレーニングの負荷設定について詳しくわかりやすく解説していきます。

 

負荷設定の重要性

筋力トレーニングにおいて『最適な負荷量を決める』ということは非常に重要でこれができていないと毎日のように取り組んでいても思うような効果は得られません。

まずはなぜ負荷設定が重要なのかを解説していきます。

 

トレーニング効果アップの為

負荷設定にこだわる最も大きな理由は『トレーニング効果がアップする』からです。

筋肉はトレーニングを経て傷つき、回復過程でさらに強くなるという『超回復』と言われる仕組みで成長していきます。

その為、まずは『筋繊維を傷つける』という過程が必要になってくるのです。トレーニングの原則には過負荷の原則というものがあります。

それは『普段より少し辛い負荷』をかけることで筋力がつくという法則です。

筋肥大(太くする)ことを目標にするのであれば低すぎる負荷で行っても理論上効果は生まれません。しっかりと筋肉を追い込める負荷に設定しましょう。

 

トレーニングの停滞予防

「一度負荷を決めてしまえばそれでよいのか?」

答えはNoです。

これは筋力トレーニングの原則の1つ、漸進性の原則というものに当てはまります。

漸進性の原則とは簡単に言うと「負荷を徐々に上げましょう」ということです。筋肉は負荷に応じて適応してくるため、一定の重さに到達するとそれ以上の筋肥大を狙うためには負荷を上げていく必要があります。

また可逆性の原則というものもあり、トレーニングを一旦行わなくなってしまうと毎日の活動量に応じて元の状態に戻っていく性質があります。

これらの性質から負荷設定はさらなる筋力アップを狙うためにはこまめに負荷の設定を行っていく必要があるんですね。

 

パフォーマンスアップ

ひとえに『負荷』というのは重りの重さだけを指しません。トレーニングの頻度、回数を増減することやさらに難易度の上がった動きに挑戦することも『負荷』という言葉の意味に含まれます。特にパフォーマンスアップを狙うのであれば同じような目的の運動でもより実践に近いような難しい動きにも挑戦していきましょう。

 

怪我の予防

『負荷設定』と聞くとどうしても負荷を上げる方のイメージがありますが、負荷が高すぎる場合もあります。

負荷が高すぎると思わぬ怪我や痛みなどにつながる可能性があります。

マシンなど運動の方向が決まっているようなトレーニングでは可能性は低くなりますが、ダンベル・バーベル等を使ったフリーウェイトトレーニングではダンベルを落とすなど危険があります。

またマシンなどでも重すぎる負荷を無理やりすると、目的としている筋肉が過剰に働き代表的な部分でいえば腰痛や首痛などの原因になります。

フォームなどを修正してもこれらの部分に痛みが出る等問題があれば負荷が重すぎる可能性があります。

 

負荷の設定方法

それでは実際に負荷設定をすすめていく際にはどのようなポイントに注意して設定していったらいいのかについて解説していきます。

今回はダンベルを使ったトレーニングなど重りを上げたり押したりするいわゆるレジスタンストレーニングと言われるものの基礎的な負荷設定についてご説明していきます。

中級者~上級者になってくると様々な理論から負荷の設定の考え方が異なる場合もあります。

ただ少なくともこれからトレーニングを始める、あるいは始めたばかりの初心者の方であれば下記の方法を理解しておけば十分かと思います。

 

まずはフォームの確認!

正しい負荷を選ぶ前提条件、それは正しい方法で実施できていることです。

怪我の予防の項目で説明した腰痛や首痛は正しいフォームでできていない場合でも発生します。本当はフォームが原因で出ている痛みにも関わらず負荷をいたずらに下げてしまうと非常にもったいないですよね。

筋トレの注意点や正しい動きについては、トレーニング別に細かくされたものが世の中にたくさんあります。そのような情報を参考にしながら、特に初めてのトレーニングの場合は極端に軽い負荷から始めてまずはフォームを正しくできるように意識しましょう。

 

回数、重さの目安

・理想の重さ、回数とは?

一般的な筋肥大(筋肉を大きくする)の為の負荷については諸説ありますが最大筋力の70~80%程度の負荷で2~3セットトレーニングを行うことができれば効果的であるといわれています。

通常トレーニングの際に人間はすべての筋力を発揮することはありません。そのため全体的に筋肉をまんべんなく使いトレーニングを行うためには複数セットを行う必要があるんですね。

皆さんもしんどい運動をした後、休憩をはさむとまた同じ運動ができるようになった。

という経験があるかと思います。これは人間が1回の運動ですべての筋力を使わないからこそできる芸当なんです。休憩時間は1分~2分程度にしてあまり長くなりすぎないように注意しましょう。

・具体的な負荷設定の方法

ここまで、基準とされている負荷や回数について触れてきました。しかし『最大筋力の70%~80%』と言われてもいまいちピンと来ないと思います。そこで筋トレでは回数と疲労度の関係で適切な負荷をはかる指標があります。

簡単にその方法をまとめると、『8~12回程度の回数で限界が来る重さ』と考えてください。

8~12回の運動→インターバル(1~3分)→8~12回の運動→インターバル→8~12回までの運動→もう限界

というサイクルで行えれば初心者の方の負荷設定としては理想的と言えます。

 

難しければ低負荷でもOK

とはいえ初めからぴったりとこの回数に当てはまるようにはなりません。

「このぐらいかな?」と思った負荷でも20回ぐらいできてしまったり、逆に言えば2セット目や3セット目に重すぎてまったく運動ができなくなったりなどの問題も出てくるでしょう。

しかし、低負荷であろうが限界まで運動することでがあるといわれています。

低負荷高頻度の運動になってしまっても限界まで運動をして次回から重量を少し上げてみるようにしましょう。

また高負荷すぎる場合も2セット目、3セット目と負荷を落として実施して、限界まで行うことで効果があります。(実際そういった負荷設定の理論もあります。)重要なのは「限界まで行うこと」というのを意識して初心者のうちは行っていきましょう。

この作業を繰り返していけばおのずと理想の負荷が分かりますし、負荷設定の更新も細かい頻度で行うことができます。

まずは『始める』『継続する』ということが重要です!

 

動きで負荷を変える

前述にもありましたが運動負荷を調節する為には何も重さを変えるだけではありません。(重さは数値的な指標なので一番わかりやすいですが・・・)

代表的なところでいうと『運動のスピード』です。

例えば腕立て伏せを例にすると、普通のスピードで腕立てをするのと肘を曲げて降ろしていく際にゆっくりとおろすことを意識したものとでは明らかに負担が変わります。(試してみてください)

少し難しい表現ですがこの時の筋肉の状態は遠心性収縮という状態になっています。この遠心性収縮、腕立て伏せでいえば重力に負けないように運動を行っている状態は筋肉への負荷が高い状態です。

筋力トレーニングではこのように戻す時にゆっくりとする。というのが重要です。いつまでたっても負荷設定がしっくりこない場合は自分なりに運動のペースも統一して行えば負荷設定も行いやすくなっていきますよ。

 

さいごに

いかがだったでしょうか。筋力トレーニングで最も重要で難しいことは『継続する』ことだと思います。

苦しいトレーニングを経るからこそ、トレーニングは効果的に行いたいですよね。

負荷設定はその効率の部分を占める最も重要な要素です。せっかくの努力を無駄にしないように負荷設定にはしっかりとこだわってトレーニングを行っていきましょうね!

肩関節脱臼のリハビリテーション

はじめに

肩関節脱臼は、整形を担当しているセラピストであれば、しばしば経験する事があると思います。

再発率も高く、リハビリを進めていく上で、指導やケアは重要で難しい部分が多いかと思います。

今回は、肩関節脱臼の基礎と基本的なリハビリテーションについてお話していきたいと思います。

  

概要

肩関節は、人体の関節の中で、最も関節可動域が広く、その構造上不安定にあります。

そのため、靱帯や筋肉などによって補強されています。

 

肩関節脱臼とは

肩関節は、上腕骨頭が肩甲骨にある関節窩の上に乗っているような構造をしています。

脱臼は、関節窩の上から上腕骨頭が外れてしまった事を指します。

また、脱臼には亜脱臼と脱臼があり関節面の一部に接触がある場合を亜脱臼。

完全に接触がないものを脱臼としています。

 

受傷機転と症状

主な受傷機転は、ラグビーやアメリカンフットボール、柔道やハンドボールなどのコンタクトスポーツやスキーやスノボーなどの転倒で多く発生します。

また、肩を挙上した状態で、後方に力が加わったときや、後ろから手を引っ張られたり、後方に手をついて転倒した場合にも脱臼する可能性があります。

症状としては、疼痛・腫脹、肩関節の挙上困難や変形があります。

合併症として、血行障害や神経麻痺(腕や指のしびれ)がみられることもあります。

 

診断

・視診:肩関節の丸みが消失して扁平化し、肩峰の突出が目立つ。

・触診:脱臼した骨頭を肩関節前下方に触れる事ができる。

・X線画像:X線画像にて確定診断を行います。AP画像よりも、Scapula Y viewの方が望ましいです。多くの場合、上腕骨頭後外側の骨軟骨欠損を伴います。

 

肩関節脱臼の型と重症度・予後

外傷性肩関節脱臼は、前方脱臼と後方脱臼に大きく分けられ、前方脱臼が90%を占めます。

また、10-20歳代の初回肩関節脱臼の50%以上が再脱臼を生じて、反復性脱臼へと移行します。

脱臼を放置すると、骨損傷・軟部組織損傷の拡大、神経麻痺などを起こす可能性があります。

また、経過するほど徒手整復が難しくなるため、早期に脱臼を整復する必要があります。

●重症度

・Ⅰ型(捻挫):肩関節の部分的な痛みだけで、烏口鎖骨靱帯・三角筋、僧帽筋は正常で、X線では異常ありません。

 

・Ⅱ型(亜脱臼):肩鎖靱帯が断裂し、烏口鎖骨靱帯は部分的に痛んでいますが、三角筋、僧帽筋は正常です。X線では、関節の裂間が拡大し鎖骨の端がやや上にずれています。

 

・Ⅲ型(脱臼):肩鎖靱帯・烏口鎖骨靱帯共に断裂しており、三角筋・僧帽筋は鎖骨の端から外れていることが多いです。X線では、鎖骨が完全に上にずれています。

 

・Ⅳ型(後方脱臼):肩鎖靱帯・烏口鎖骨靱帯共に断裂しており、三角筋・僧帽筋は鎖骨の端から外れています。鎖骨の端が後方へずれている脱臼です。

 

・Ⅴ型(高度脱臼):肩鎖靱帯・烏口靱帯共に断裂しており、三角筋・僧帽筋は鎖骨の外側1/3より完全に外れています。

 

治療

治療方法は、保存療法と手術療法があります。

脱臼の型や重症度、血行障害や神経症状などによって保存か手術かに分かれます。

 

Ⅰ型は、三角巾で手を吊り、始めの2-3日は患部を冷やし、その後は患部を暖め運動練習を行っていきます。

 

Ⅱ型は三角巾やテーピングなどで、2-3週間の固定を行います。

 

Ⅲ型では、中高齢者はⅠ型Ⅱ型同様保存療法が多く、若者やスポーツ、仕事で肩をよく使う人は、手術療法が多いです。

 

Ⅳ型・Ⅴ型は手術による整復を行います。

 

リハビリテーション

保存療法・手術療法共にリハビリの介入は行います。

 

保存療法

初回脱臼の場合は保存療法が選択される場合が多いです。

必ず、装具などを使用し、固定を行います。

固定期間は3週間程度行っている場合が多いですが、1週間以下と3週間以上では再脱臼率に差はありません。

そのため、主治医の指示に従いましょう。

また、内旋固定よりも外旋固定の方が再脱臼率を軽減させるために有効です。

受傷後からのリハビリテーションの流れとしては以下にまとめます。

 

・受傷-3週目

リハビリの目的としては炎症・疼痛コントロールにあります。

積極的にアイシングを実施していきましょう。

訓練内容としては、肩関節の直接的な運動は困難であるため、肩甲骨や肘関節といった肩関節周囲のストレッチ等実施し、拘縮予防に努めます。

 

・4-6週目

リハビリの目的としては、肩関節の可動域拡大と疼痛・炎症コントロールにあります。

この時期から肩関節の自動介助運動を行っていきます。

そのため、炎症や疼痛増悪を引き起こす可能性があるため、訓練後はアイシングを実施するなどして、ケアを十分に行っていきましょう。

訓練内容としては、肩関節の自動運動や肩関節周囲のストレッチや可動域訓練などを行い拘縮予防と可動域拡大を行います。

 

・7-8週目

リハビリの目的としては、肩関節の可動域拡大と筋力強化にあります。

この時期から肩関節運動に関わる筋肉のトレーニングを行っていきます。

また、自動運動での肩関節運動を行い、積極的に可動域拡大を図っていきます。

訓練内容としては、肩関節・肩甲骨の可動域訓練、等尺性での肩関節周囲筋の筋力増強訓練を行います。

 

・9-12週目

リハビリの目的としては、肩関節周りの筋力強化と可動域拡大にあります。

この時期から、回旋筋の積極的な筋力強化を実施していきます。

訓練内容としては、回旋筋腱板レジスタンスエクササイズ、肩甲骨のスタビリティエクササイズ、重錘を使用し、重力下での筋力強化を行います。

 

・12-17週目

リハビリの目的としては、全身の筋力強化とスポーツ復帰に向けての指導です。

この時期では、スポーツ・仕事などの特性にあった訓練を行っていきます。

 

・17週目以降

リハビリの目的としては、スポーツ復帰やオーバーヘッドスポーツへの復帰など最終的なゴール期間にあります。

 

手術療法

手術療法では、手術後次の日から介入を行います。

保存とは異なり、固定期間はありますがわずかながら自動運動が開始できます。

固定期間に関しては、保存療法と同様です。

手術療法時のリハビリテーションの流れとしては以下にまとめます。

 

・術後-3週目

リハビリの目的としては、炎症・疼痛コントロールと拘縮予防にあります。

術後終日で、下垂位での外旋20°までの運動が許可されるため、疼痛に留意しつつ行っていきます。

リハビリの内容としては、アイシング・他動、自動運動での可動域訓練・等尺性収縮での三角筋・回旋腱板筋の筋力増強訓練を行います。

訓練後は、炎症や疼痛増悪の可能性があるため、積極的にアイシングを行いましょう。

 

・4-6週目

リハビリの目的としては、可動域拡大と筋力強化にあります。

この時期から固定期間が終わり、装具を外してリハビリを行っていきます。

筋の硬結やそれに伴う拘縮が出現してくるため、積極的に可動域訓練やストレッチを実施していきます。

内容としては、自動運動での可動域訓練・回旋筋腱板の筋力増強訓練が主です。

 

・7-8週目

リハビリの目的としては、可動域拡大とADL指導にあります。

この時期から、下垂位外旋45°までの運動や90°以上の挙上が許可される場合が多く、積極的な可動域訓練を行っていきます。

また、ADLでは、外旋が強制されないよう指導を行う必要があります。

 

・9-12週目

リハビリの目的としては、積極的な筋力強化にあります。

この時期より、重錘を使用しての筋力強化を行っていきます。

訓練内容としては、最終可動域でのストレッチや回旋筋腱板レジスタンスエクササイズ、積極的な肩甲骨のスタビリティエクササイズを行います。

 

・12-25週目

リハビリの目的としては、スポーツ復帰に向けての指導にあります。

この時期より、非コンタクト系のスポーツの許可される事が多く、全身的な持久力訓練等を行っていきます。

 

・25週目以降

この時期では、スポーツ復帰に向け、そのスポーツの特性にあったトレーニングを行っていきます。

 

・10-12ヶ月

オーバーヘッドスポーツでは、基本的に10-12ヶ月を目標にスポーツ復帰を行っていきます。

 

手術療法では、重症度が高い場合が多く、その分リハビリ期間やスポーツ復帰までの期間が長く掛かります。

 

最後に

若い方ですと再脱臼率が高く、スポーツ選手である場合、選手生命の危機にもなります。

指導は難しいですが、少しでも支援できるよう、日々の勉学に励んでいきましょう。

 

・参考文献

 分担 解剖学

 日本骨折治癒学会

 ビジュアル実践リハ 整形外科リハビリテーション

 リハビリテーションビジュアルブック